第336回(4月16日)切れ目ない安保法制⑬ 自衛隊の海外行動を拡大
  自公 両党は統一地方選の前半戦が 12 日に終了したのを待って 14日から与党協議を再開、 法制作業を進めて 5月15日に国会へ提出する方針だ。 前号で説明した通り、 新安保法制は中国の軍事増強や海上進出、 北朝鮮の核実験、 中露による中東 ・ クリミヤ半島 や 南シナ海 の領土的覇権など安全保障環境の急激な変化に対応し、 「平時」 から 「グレーゾーン事態」、「有事」 に至る “切れ目ない安保体制” (抑止力)を構築するもので、 国民の生命、 財産、 領土を守る自衛隊の海外行動を拡大 ・ 強化するのが狙い。 自公両党が 3月20日にまとめた、 安全保障法制の基本方針は ①昨年 7月に閣議決定した集団的自衛権行使の限定容認 ②危機が起きた際に自衛隊が米軍などに提供できる後方支援の幅を拡大 ③国連平和維持活動 (PKO )などへの貢献増大―― の3本柱。 最大の目玉は、 密接な関係にある他国が攻撃を受けた時に日本が反撃する集団的自衛権の行使を可能にした点だ。 首相は国会答弁で ①武力攻撃を受けた国から日本人を輸送する米軍艦船を防護する ②中東ホルムズ海峡で武力紛争が発生した際、 自衛隊が機雷を掃海する ―― の 2重点事項を強調した。 後方支援では米軍などを支援する周辺事態法の抜本改正などと、 それ以外のケースを対象とする恒久法の 2つを想定した。 しかし自衛隊派遣の可否を判断する基準と歯止めを巡り、 自公間で激しい綱引きをし玉虫色で合意した部分もある。 「武器使用」 と 「武力行使」 の解釈なども曖昧だ。

重要影響事態に改め派遣範囲広大
 これらの点は国会でも野党から厳しく追及されそうだ。 自公が合意した 「安保法制整備の具体的な方向性」 (基本方針) を点検してみよう。 基本方針は ①全般 ②グレーゾーン事態への対処 ③日本の平和と安全に資する活動を行う他国軍に対する支援活動 ④国際社会の平和と安全への一層の貢献 ⑤憲法 9条下で許容される自衛の措置 ⑥その他関連する法改正 ―― からなる。周辺事態法の改正では、 米軍以外の豪州など友軍の支援にも道を開き、 後方支援として 医療、輸送や捜索活動を行えるようにする。 治安維持業務 も認め、 弾薬の輸送・補給も可能にする。 朝鮮半島有事などを想定した 「日本周辺」 という地理的制約をなくし、「重要影響事態」(仮称)と改め、 自衛隊の派遣範囲を広げたのが特色。 PKO協力法の改正では、 PKOに限定せず、 国連が統括しない国際的な平和協力活動も可能とし、 PKOに派遣の自衛隊が離れた場所にいる邦人や他国部隊への攻撃に駆けつけて反撃する 「駆けつけ警護」 ができ 「任務遂行型の武器使用」 も行えるようにする。 政府は国連決議のほか、 赤十字など国際機関や欧州連合 (EU) など地域機関の要請などでも派遣を可能とする考えだ。

給油・輸送など後方支援の恒久法
 重要なのは自衛隊法の改正。武力攻撃には至らないが警察や海保では対応できない 「グレーゾーン事態」 で、 自衛隊と共同して弾道ミサイル発射などの警戒監視や共同訓練など、日本の防衛につながる活動を行う米軍艦船や他国軍を守れるようにする。 テロ集団の大使館占拠などでは領域国の受け入れ同意がある場合は武器使用を伴う邦人救出を可能にする。 恒久法はこれまで イラク 特措法や テロ対策特別措置法で行ってきた時限立法を改め、 国際社会の平和と安全のために活動する他国軍などへの給油や輸送の後方支援をいつでも可能とし、 自衛隊の迅速な派遣を行えるようにする。 さらに昨年 7月の閣議決定に従い、「後方地域」、「非戦闘地域」 という仕切りをやめ 「現に戦闘行為を行っている場所」 でなければ活動を認め武器提供は禁止するが、 弾薬の提供 ・ ヘリ輸送など後方支援の幅を広げる。

恒久法の名称は国際平和支援法
 政府は与党合意の基本方針に基づき、14日に再開された与党協議に、①恒久法は 「国際平和支援法」 の名称とし、 戦争の前線よりも後方で武力を使わず他国の軍隊に食料や燃料を補給する ②現行の 「周辺事態法」 は日本周辺という地理的な制約を取り払い、 地球規模で米軍などを支援するため 「重要影響事態安全確保法」 に名称を変え、 抜本改正する ③集団的自衛権の行使は昨年 7月の閣議決定で定めた 「武力行使の 3 条件」 に当てはまる事態を 「存立危機事態」と位置づけ、「武力攻撃事態法」 を改正する ―― など法整備の全体概要を説明した。 自衛隊法改正などのほかに船舶検査活動法など十数本の関連法の改正が想定される。 これに対し、 集団的自衛権行使の歯止め措置を強く求める公明党は、 自衛隊派遣を巡って 「例外なき事前の国会承認」 を求めて譲らず、 難色を示す自民党との協議は平行線をたどった。 公明党は、 昨年7月の閣議決定でも、 集団的自衛権は 「日本に対する武力攻撃に匹敵する場合でなければ認められない」 とし、「日本が直接攻撃された時に反撃する個別的自衛権を発動する場合と、ほぼ同じ状況でなければ行使できない」 と主張してきた。

公明は自衛隊派遣の歯止め措置要求
 このため、 基本方針には ①自衛隊の参加と活動が国際法上の正当性を有する(国連決議) ②国民の理解を得るよう国会の関与等の民主的統制が適切に確保される(国会承認) ③自衛隊の安全確保のための必要措置を定める ―― の 「歯止め3原則」 を要求。 14日の協議でも ②の国会関与にこだわり 「例外なく国会の承認を採る」 よう強く求め、 政府 ・ 自民党が衆院解散や国会閉会中で素早く承認できない場合を想定して 「国会の事前承認を基本とする」 として示した、 努力目標が前提の 「例外的な事後承認案」 に反対、 協議での自公の溝は埋まらなかった。 集団的自衛権ではこのほかにも、「武器使用」 と 「武力行使」 の違いを理解する必要がある。 「武器使用」は単に殺傷能力のある銃や装備を使うことを意味し、 警察が正当防衛で拳銃を発射するのがこれに当たる。 これに対し、 自衛隊のような 「物的・人的組織体」 が武力紛争の一環として戦闘行為を行えば 「武力行使」 となる。

曖昧点巡って与党調整が難航か
 政府が 「日本の平和と安全に重要な影響のある事態」 (重要影響事態) と判断すれば、 他国軍の戦闘支援ができ、「日本の存立が脅かされる事態」 と判断すれば、 集団的自衛権を行使して武力行使が出来る。 2つの事態の線引きは明確でなく、 政府の判断次第で グレーゾーン事態への対応から戦闘支援、 集団的自衛権 の行使へと、 なし崩し的に進む虞もあり、 公明党はさらに、 こうした曖昧な部分を巡っても懸念を表明しており、 法整備の段階で与党調整が難航することも予想される。 与党協議は今後週 2回ペースで開催して法案を整備、 5月15日をメドに閣議決定して国会に一括上程、 衆参両院が特別委員会を設置して審議することになろうが、 野党の追及も激しくなりそうだ。 (以下次号)