第335回(4月1日)切れ目ない安保法制⑫ 文官統制全廃し内幕対等
 先号で述べた通り、政府は防衛省設置法改正案を国会に提出した。 改正案には外局として 「防衛装備庁」 を10月に新設するほか、 背広組の内局 (文官) が制服組の幕僚より優位を保つと解釈される同設置法12条の改正が含まれている。 これは自衛隊の部隊運用 (作戦) を制服組主体に改める 「運用一体化」 で、 背広組が制服組をコントロールする 「文官統制」 の規定を全廃、「内幕対等」 が明確化されることになった。 現行設置法12条は、 内局の官房長や局長が防衛相を補佐するとした上で、防衛相は陸海空自衛隊と統幕に対し ①指示 ②承認 ③一般的監督――を行うと規定している。 改正案では官房長、 局長らは各幕僚長らと対等な立場で防衛相を補佐すると改められる。 改正で文民統制 (シビリアンコントロール) が低下し、 万が一、 制服組が暴走しようとした際に阻止する機能があるか ―― などの懸念があるが、 中谷元 ・ 防衛相は 「政策的見地の背広組と軍事的見地の制服組の双方から意見を聞いて判断していくので、 より文民統制が強化される」 と記者会見で語っている。

PKO や災害で制服組の発言強化
  文民統制は政治が軍事に優越するという民主主義国家の基本原則。 本来は国民から選挙で選ばれた政治家による統制を意味する。 旧憲法下で軍部か暴走し、 第2次世界大戦の惨禍をもたらした反省から、 首相や閣僚は文民でなければならないと憲法で規定し、 首相が自衛隊に対し最高指揮権を持つ。 文民統制は様々なレベルで行われることが必要とされ、 1954年の防衛庁、 自衛隊発足時に、 防衛相を支える背広組を制服組自衛官 (統合、 陸上、 海上、 航空 の4幕僚監部) より優位とする 「文官統制」 が設けられた。 文官統制の要は、 内局の局長らが所掌を超えて大臣を直接補佐する参事官を兼ねる制度だった。 他に ①防衛出動の承認など国会による統制 ②首相や防衛相による政府内の統制――がある。 しかし、 国連平和維持活動 (PKO) や災害派遣の実績を重ねた自衛隊への信頼が増して制服組の発言力は強化された。 その半面、 組織間の風通しの悪さが意思決定の面から問題視され、 制服組や制服OBの国会議員 (中谷氏も防衛大出身者) らから文官統制の廃止を求める声が強まり、 「参事官制度」 は09年に廃止された。 防衛省は2013年、 背広組と制服組の垣根を取り払うため、 内局に自衛官ポストを設けて人事交流を活発化させることを決めている。

文官は幕僚長と対等で大臣を補佐
  文官統制の規定により、 局長らが自衛隊に 「指示」 「監督」 を行うとの誤解を招いてきたが、 防衛省設置法12条の改正で官房長、 局長らは各幕僚長と対等の立場で大臣を補佐することになる。 また、 内閣と統幕の役割に重複があった部隊運用の権限を統幕 (統合幕僚監部) に一元化し、 「隊の行動の基本」 を所掌してきた内局の運用企画局を廃止した。 これまでは統幕長が防衛相に報告する際、 運用企画局長との 連絡 ・ 調整が必要だったが、 主要国の趨勢に倣って、 運用計画を作成して大臣決済を求める内局の権限が統幕に移行され、 運用を一元化する。 これでミサイルへの対応や大規模災害の危機対応の際に、 背広組を通さず時間的なロスを避けて部隊から直接、 防衛相に連絡が上がるほか、 防衛相から各幕僚長を通じて舞台に直接指示が出されることになるなど、 制服組の権限が強まることになる。 しかし、 「文官統制」 は戦前の旧日本軍の暴走を教訓に政治を優先させた文民統制の一環であるだけに、 国会審議で文民たる政治家がどれだけチェック機能を発揮できるか注目の的。

制服組暴走に抑止力あるか論議も
 公明党は安全保障法制の与党協議が進む中で、 文民統制が後退した状態で自衛隊の海外派遣が進むことを懸念し、 当初は 「文官統制」 廃止に難色を示し、 防衛省設置法改正案の閣議決定を先送りさせてきた。 民主党の枝野幸男幹事長も 「(法案は) すぐに通す性質でなく、 時間をかけて審議したい」 と慎重姿勢だ。 首相は3月6日の衆院予算委で、 「文民統制は、 基本的には、国民から選ばれた首相が最高指揮官ということで完結している」 と明言。 菅義偉官房長官も改正案を閣議決定した日の記者会見で 「文官と自衛官の一体感を高めながら、 政策的見地と軍事専門的な見地から大臣を補佐する趣旨を明確にする」 などと説明、 文民統制が弱まる懸念を払拭した。 中谷防衛相も同日の衆院予算委で文民統制の政府統一見解として、 「文民統制は民主主義国家における軍事に対する政治の優先を意味するもので、 国会 ・ 内閣による統制とともに防衛省の統制がある。(防衛省)内局の文官の役割は防衛相を補佐することであり、 文官が (自衛隊)部隊に対し指揮命令するという関係はない」 と表明、 「文官統制」 が文民統制の構成要素ではないと説明した。 だが、いずれにしても、 文官の役割を 「防衛相を補佐する」 存在に留めたことは、制服組の暴走に対する抑止力を弱める虞があるとして、  改正案の審議では活発な論議を呼びそうだ。  (以下次号)