第333回(3月1日)切れ目ない安保法制⑩ 難題多い周辺事態法改正
 昨年7月の閣議決定以来中断していた安全保障法制の与党協議は7ヶ月ぶりに2月13日に再開、週1回のペースで協議を重ねて3月下旬を目標に基本方針を決める。 自民党の高村正彦副総裁が引き続き与党協議の座長を務め、 ①グレーゾーン事態への対処②自衛隊の後方支援③集団的自衛権の行使を巡る「存立事態」(仮称)――を論議、 5月中旬をメドに安保関連法案を国会に提出する方針。 5月連休中に訪米する首相は日米首脳会談で与党の合意内容を報告、 日米防衛協力の新指針(ガイドライン)の骨格を共同声明に盛り込む考えだ。 政府・自民党は当初、周辺事態法を廃止し、 自衛隊の他国軍などへの後方支援を常に可能とする「恒久法」に一本化して活動範囲を地球規模に広げる構えだった。 これに対し、4月の統一地方選を控え「平和の党」を標榜する公明党は、 自衛隊の行動に歯止めをかけようと恒久法に難色を示した。このため周辺事態法を存続させる方向に傾いたが、 政府が示した同法改正案には肝心の「周辺」の概念が消えており、公明党が強く反発している。

地理的制約撤廃し国連決議も不要
 初日の会合で高村座長が「国民の命と暮らしを守るための法整備を、 現行憲法の範囲内であらゆる事態に切れ目なく対応できるよう整備したい」――と挨拶したのに対し、 公明党の北側一雄副代表は「法整備に向けて個別の項目ではなく パッケージとして合意を目指したい」と述べ、13日は、 日本への武力攻撃とは認められないが警察や海上保安庁では対応できないグレーゾーン事態から協議に入った。 ところが、 1週間後の20日、政府が与党協議に示した案は、 自衛隊の海外協力について現行の周辺事態法と国連平和維持活動(PKO)協力法を抜本改正し、 新たな恒久法(一般法)を制定するというもの。 しかも、 周辺事態法では「周辺」の地理的制約を撤廃し、恒久法は国連安保理事会の決議がなくとも後方支援を可能としたもの。 公明党内では「閣議決定の拡大解釈だ」と不満を強めた。

共同軍事訓練行う他国軍とも連携
 昨年10月の日米両政府が発表した新しいガイドラインの中間報告では、 日米防衛協力の枠組みについて平時・有事(戦争事態)・周辺事態――という3分類を廃止して「周辺事態」の概念をなくしたが、 これには補給や輸送といった米軍への後方支援について事実上、 日本周辺に限っていた地理的な制約を外し、 さらに共同で軍事作戦や訓練を行う米軍以外の他国軍と自衛隊の連携強化も謳っている。 政府側は13日の初回会合でも、武器や艦船などの防護対策について、自衛隊が自らの武器を守る自衛隊法95条の「米軍部隊の武器等防護」の武器使用の規定を改正し、 「米軍“等”部隊の武器等防護」に改め、 米軍のほかに豪州など他国軍も防護対象とする方針を説明した。 これは日本周辺の海域などで自衛隊と共同演習を行っている豪州軍を念頭に置いたものだ。 また、 国籍不明の武装集団が尖閣諸島など離島周辺で船舶を攻撃した場合、自衛隊の出動を素早く決めるため、 電話で関係閣僚の了解を取る案なども説明した。 これらは時限立法ではなく恒久法制定を念頭においている。

3要件適えば集団的自衛権を行使
 集団的自衛権は、 密接な関係にある他国を守るため、 自国への攻撃がなくても戦う権利。 歴代内閣は、 憲法9条の下では権利を行使できないとしてきた。 周辺事態法では国連決議を必要としている。 これを安倍政権は昨年7月、 従来の憲法解釈を変え、 集団的自衛権の行使容認を含む閣議決定をした。 他国に対する攻撃でも「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」など新しい3要件があれば集団的自衛権を行使できるよう限定的に容認。自衛隊とともに行動する「米軍部隊の武器等」を防護できる考えを盛り込み、 「非戦闘地域」という考え方を廃止し、 自衛隊が派遣された場所で戦闘が行われていなければ、 他国軍への後方支援が出来るように自衛隊の活動範囲や内容を広げることを認めた。 そこで政府・自民党は閣議決定に基づき、 後方支援に制約がある周辺事態法などを改廃し、 自衛隊の海外派遣を随時可能にする「恒久法」への一本化を目指してきた。

公明は歯止めかける時限立法存続
 先号までのHPで紹介したように公明党は4月の統一地方選を控え、 「平和の党」として自衛隊の活動拡大には極力反対して「恒久法」に難色を示し、 自衛隊の活動の範囲に制約がある時限立法の周辺事態法を存続するよう求めている。 同法は日米ガイドラインをもとに日本周辺の有事を想定して制定されており、 地球の裏側などは想定外だ。公明党はその周辺事態法の理念をもと に、 米軍の支援は日本周辺に限定し、 それ以外の豪州など他国軍への後方支援は、 テロ対策特措法やイラク復興支援特措法のように国連決議と国会の事前承認を前提にするなど自衛隊の活動に一定の歯止めをかける姿勢を崩していない。 このため、 与党協議で自民党は公明党に配慮し、 周辺事態法を残し、 並行して恒久法の制定を検討することにした。 しかし、 政府が矢継ぎ早に出した提案は、 周辺事態法の名称まで変え、 自衛隊の支援活動を米軍以外に拡大、地理的制約を外し、 これまで認めなかった武器・弾薬の提供や発進準備中の航空機への給油までも想定している。 小渕政権は周辺事態について「中東やインド洋で発生することは、 現実の問題としては基本的に想定されない」と国会答弁しており、 これとの整合性はどうなるか。 朝日は21日の社説で「政府の拡大志向は止まらない。 ブレーキのない乗り物を作る勢いだ」と厳しく批判した。 自衛隊活動に歯止めをかけたい公明党は極めて慎重だが、 野党は協議の推移を見守っており、 法制化までには一山ありそうだ。  (以下次号)