第328回(12月16日) 切れ目ない安保法制⑤ 約20本の安保法制整備
 14日の総選挙は首相が「アベノミクス解散」と銘打ったため、経済の好循環・雇用対策などが争点となり、安全保障・外交問題の影が薄れた。しかし、政府は1月の通常国会に集団的自衛権の行使を限定的に容認する新たな安全保障法制を一括して提案する。具体的には自衛隊法や周辺事態法、武力攻撃事態法など約20本の既存法律を改正するが、12年の衆院選公約で掲げた「国家安全保障基本法」の制定は見送る方針だ。中国が軍備増強と海洋進出を加速させ、北朝鮮が核や弾道ミサイルの性能を高め、国際テロの脅威も拡散するなど日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している。政府は7月「国民の権利が根底から覆る明白な危険がある場合」に限って必要最小限の武力を可能にする新たな政府見解を閣議決定した。新見解を基に自民党は「平時から切れ目のない(シームレスの)対応を可能にする安全保障法制を速やかに整備する」と政権公約(マニフェスト)に掲げた。公明党は支持母体の創価学会婦人部に慎重論が多いが、 「国民の命と平和な暮らしを守る法制の検討を進める」と公約に掲げ、足並みを揃えた。 今回は法整備を取り上げる。

暴走にブレーキをかけると民主
 首相は総選挙中、「来年、切れ目のない(安全保障)法制備をちゃんと行う」と演説し、石原慎太郎元都知事が最高顧問の次世代の党も「自主憲法」の制定を公約に掲げ、個別的・集団的自衛権行使の要件を明確化する基本法制の整備を主張した。だが、民主党の海江田万里代表は「集団的自衛権(の行使容認)で、自衛隊を地球の裏側へ持って行こうとしている。安倍政権の暴走にブレーキをかけるのが我が党」と強調、公約で政府の憲法解釈の変更を「立憲主義に反する」と批判。共産、社民両党は行使そのものに強く反対、「9条を守る」立場を鮮明にし閣議決定の撤回を求めた。維新の党は「現行憲法下で可能な『自衛権』行使のあり方を具体化し、必要な整備を実施する」と公約した。これは行使容認に前向きだった日本維新の会(橋下徹代表)と慎重派の結いの党(江田憲司代表)が合流したためで、曖昧な表現になった。いずれにせよ国会では激しい与野党論戦が展開されそうだ。

両院閉会中審査は手続き論応酬
 先のHPで詳報したように、7月中旬に開かれた衆参両院予算委の閉会中審査は、海江田氏が「国会の論議をせず、憲法解釈を180度変える。国民の声を無視して(閣議決定で)決めてよいのか」ともっぱら手続き論で追及したが、首相は有識者会議の議論や11回の与党協議に加え国会の集中審議などで70議員の質疑があったとし、「閣議決定が拙速だとの指摘は当たらない」と反論。国民が蒙る犠牲の深刻性重大性などを判断し手順を踏んで法整備を進め、次期通常国会に関連法案を一括提出する姿勢を示した。他野党も「解釈改憲か」、「徴兵制になる危惧はないか」、「自衛隊員にリスクの高い仕事をさせることになる」などと追及。防衛当局は「自衛隊員は祖国防衛の誓紙を書いて入隊、装備・訓練も万全」と答弁。当時のみんなの党、日本維新の会は基本的に賛成し野党追及は迫力に欠けた。

憲法解釈の限定変更は40年ぶり
 民主党は憲法解釈の変更を「立憲主義に反する」というが、元々解釈変更は、内閣の公権的解釈権に基づき行うもので、過去の政府見解との整合性を維持しており、国会は関連法案を十分審議できるし、司法も違憲立法審査が可能で、まさに憲法の三権分立を体現したものである。先号のHPで触れたが、閉会中審査では1972年の田中内閣政府見解と新政府見解が比較された。憲法9条で戦争を放棄し戦力保持を禁止されたが、前文で「平和に生存する権利」を、13条で「生命・幸福追求の権利」と定めている。自らの存立を全うし、平和に生存することまで放棄していないことは明らか。そのために必要な自衛措置を禁じているとは到底解されない。しかし、自衛措置を無制限に認めているとも解されない。国民の「生命・幸福追求の権利」が根底から覆される「急迫、不正の事態」に対処する止むを得ない措置として容認される。その措置は「必要最小限にとどめるべき」と表現した。 (以下次号)