第327回(11月29日)切れ目ない安保法制④ 離島防衛強化で法制化
 首相が11月21日、抜き打ち的に衆院を解散したため、自民党が準備した「特定国境離島法案」は年明けの通常国会に提出されることになった。だが、防衛省は中国の軍事力膨張を念頭に、  「離島防衛」を強化し、沖縄県尖閣諸島周辺グレーゾーン事態への対応能力を高めるため、前々号のHPで述べた通り、我が長崎県佐世保基地の陸自西部方面普通科連隊を中核に、18年度末までに3千人規模の離島防衛専門部隊「水陸機動団」を設置する。これは、米海兵隊をモデルに上陸部隊や水陸両用車の運用部隊などで構成、隊員輸送は輸送機「MVオスプレイ」が担う。また、自衛隊・海保・警察が連携する「離島防衛要綱」を策定、年内に運用開始する。自民党「領土特命委員会」(額賀福志郎委員長)が準備した議員立法の「特定国境離島法案」は「特定国境離島」の保全や振興に集中的に取り組むため、国境に近く人が住んでいる10前後の離島を特定国境離島に指定し、離島の保全や振興に集中的に取り組むよう、政府に対し自衛隊施設の整備や財政支援の強化などを求めるものだ。

対馬などを特定国境離島に指定
 警察庁も沖縄県警の警察官を数十人増やし不法上陸に対処する。日本の離島は6847島あり、9割以上が無人島で有人島は418しかない。福岡県博多より韓国の釜山に近い長崎県対馬は韓国資本による土地や空き家の買収が海上自衛隊基地にまで迫り、韓国経営者のホテルや民宿が建ち並び、免税店や焼肉屋に集まる韓国観光客がここ数年で3倍以上に増えている。韓国議会では、不法占拠している島根県の竹島と同様の「対馬も韓国の領土」という趣旨の決議案が付託されている。そこで、対馬や竹島に近い隠岐諸島(島根県)、中国公船が領海侵入を繰り返している沖縄県尖閣諸島から約150キロ南の与那国島、新潟県佐渡島、ロシアに近い北海道の礼文・利尻・奥尻の3島など、中国の海洋進出や外国資本の土地買収、中国漁船による「宝石サンゴ」などの密漁が頻発している排他的経済水域(EEZ)周辺の離島を特定国境離島に指定する方針。尖閣諸島は無人島のため、対象には含まれていない。政府は離島振興策として、離島振興法や沖縄振興特別措置法などで、これまでにもインフラ(社会資本)整備の補助率かさ上げなど優遇措置を採っているが、産業基盤や生活環境で本土との格差が増大しているため、議員立法を前向きに捉えている。

自衛隊出動可否の判断を首相一任
 首相は集団的自衛権行使の限定容認についての閣議決定を踏まえ、「幅広い法整備の全体像を国民に示したい」と強調、安保関連法案を一括して来年の通常国会に提出する方針だが、離島防衛は喫緊の課題であるとして優先的な法整備を検討している。先の閣議決定でも、グレーゾーン事態に対処し、海保や警察の手に負えず自衛隊の出動が必要な場合、速やかに駆けつけるよう運用を改善する趣旨を盛り込んだ。この閣議決定により、首相が素早く判断できる対応要領を内閣官房と防衛、国交両省、警察庁で協議。中国が領有権を主張する尖閣諸島周辺を見据えた離島防衛のほか、公海上での海賊などによる不法行為に自衛隊が遭遇した場合の自衛隊出動の可否判断を首相に一任する案を検討している。 (以下次号)