第324回(10月15日)切れ目ない安保法制①日米ガイドライン改定
 安倍首相は臨時国会の所信表明演説で、「景気の好循環維持のため、経済再生を最優先に取り組む」と述べ、「地方創生」と「女性活躍社会」の実現に強い決意を表明した。しかし、本音は集団的自衛権行使を限定的に容認した7月1日に閣議決定に基づき、切れ目ない(シームレス)安全保障法制を早急に整備することにある。関連法案は一括して来年1月の通常国会に提出されるが、本格的な論議は今国会から始まる。新しい日米防衛協力の指針(ガイドライン)の中間報告は8日に発表された。野党は「限定容認の閣議決定は与党協議が全くの密室で行われた。国民へ説明責任を果たすべきだ」(海江田万里民主党代表)と特別委員会設置を求めているが、当面は常任委の衆院安全保障委員会が与野党論戦の表舞台となる。責任は重いが、私は同委の委員長を拝命した。中国の軍備増強と海洋進出、北朝鮮の弾道ミサイル・核開発など東アジアの安全保障は不測の事態を招きかねない。自民党の党是は自主憲法の制定だが、当面は安保法制の整備を急がねばならない。政府は国境に近い有人離島を保全・振興する「特定国境離党法案」を、自民党は「特定国境離島」関連法案を今国会に議員立法で提案する。私は今国会と通常国会で東アジアの危機的状況を国民に分かりやすく丁寧に説明し、安保関連法制を一刻も早く成立させたいと念願している。安保・防衛問題を「北村の政治活動」にシリーズで取り上げるので、是非ご愛読下さい。

大切な国民の命と平和な暮らし守る
 「目的はただ1つ。大切な国民の命、平和な暮らしを守るために何をなすべきか。今までの憲法解釈のままでは、いざという時に十分に国民の命を守り切ることが出来ないと判断し、閣議決定を行った」――首相は8月5日、来春の統一地方選に向けて、党本部で開いた全国幹事長会議や都道府県連幹部への政策説明会で新政府見解の意義をこう説明した。7月1日に新見解を閣議決定した後、内閣支持率が大きく下がり、国民の反発が予想以上に大きかったことから、説明会では集団的自衛権について、「もう少し分かりやすく説明してほしい」などの意見が出され、首相は「憲法解釈の変更で日本が戦争に巻き込まれるという全く的外れな、批判のための批判も多くある」と野党に反論、支持者らへ誠心誠意、丁寧に説明する必要性を訴えた。2014年版防衛白書は、集団的自衛権行使を限定容認する新たな政府見解を「歴史的な重要な意義を持つ」と高く評価したが、首相は新政府見解への国民理解が広まっていないと考え、自民党の地方組織を挙げてPRし、10月の福島、11月の沖縄・両県知事選、来年春の統一地方選を勝利し、長期政権の礎を築こうとしている。

米艦防護、ミサイル防衛、機雷除去
 日米両政府は8日、局長級の日米防衛協力小委員会を防衛省で開き、年末までにまとめる日米ガイドラインの方向性を盛り込んだ中間報告を公表した。報告は、中国による沖縄県・尖閣諸島周辺での威圧的行為などを念頭に、武力攻撃が発生する前の段階から有事まで、日米の「切れ目ない対応」を強化し、日米の抑止力を高めることが柱。中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発を踏まえ、緊張状態が高まった「グレーゾーン」事態の段階から日米が協力する重要性を強調した。具体的な協力分野では、「海洋安全保障」や「防空・ミサイル防衛」、自衛隊と共同で警戒監視に当たる米艦などを防護する「アセット(装備品等)防護」などを列挙。アセット防護の対象は、①尖閣諸島周辺で中国による挑発行為に対処する米艦②北朝鮮の弾道ミサイルに対処する米艦――など有事の前のグレーゾーン事態で、自衛隊と連携して活動する米艦船や戦闘機などを自衛隊が守ることを想定した。

中国の海洋進出で安保環境急変
 また、7月1 日に閣議決定した新政府見解を踏まえ、「日本と密接な関係にある国が攻撃された場合」に日米が連携して対処するなどの表現で、集団的自衛権を限定的に行使する場合の日米協力を検討していく方針が盛り込まれた。1997年に改定された現行ガイドラインは「平時」「日本有事」「周辺事態」の3分野で、「日本に対する武力攻撃」が行われた場合に自衛隊と米軍が共同行動を取ることが定められている。だが、朝鮮半島有事などの「周辺事態」では、「各々の行う活動を効果的に調整する」とされているだけで、自衛隊の活動は、米軍に対する補給や輸送などに限られていた。しかも周辺事態認定のハードルは高く、北朝鮮の弾道ミサイル発射を、海上自衛隊とともに警戒中の米艦船にさえ給油出来ないといった問題点が多かった。その後、中国は国防費を約10倍に急増させ、尖閣諸島周辺を含む東アジアで防空識別圏を突如設定、「力による現状変更」で海洋進出を図るなど、安全保障環境は急変した。そこで、与党協議で議論された米艦防護を念頭に「アセット防護」やミサイル防衛、機雷除去などを盛り込んだわけだ。

グローバルな日米協力も進める
 政府が7月に閣議決定した安全保障の政府新見解では、緊迫時に米艦防護などを可能にする法整備を進めることが明記されている。緊迫時の防護の考え方は自衛隊法95条「武器等防護」の規定が参考になる。中間報告では後方支援など武力行使を伴わない日本の国際貢献を、「グローバルな日米協力」として初めて明確に位置づけた。岸田文雄外相は「国際協調主義に基づく『積極的平和主義』に対応するものだ」と強調している。これは昨年10月の日米外務・防衛担当閣僚による日米安保協議委(2プラス2)で合意したテロ・海賊対策、人道支援や災害救援などで協力する考えだ。集団的自衛権行使の限定容認は、グローバルな日米協力とは別扱いで、「日本と密接な関係にある国が攻撃された場合」の武力攻撃の対処を主体とすることとし、来年の通常国会で具体的な法制化を図る。 (以下次号)