北村の政治活動

 (平成14年5月1日) 有事法制で白熱論争 安保会合に積極参加

 後半国会の最大懸案である有事法制関連3法案の審議が4月26日から始まった。衆院に新設された武力攻撃事態対処特別委員会(瓦力委員長)は予算委と同じ50人規模の大委員会。3法案は戦後初の有事対応を示す法体系であり、60年安保以来の白熱した論争を呼ぶことが予想される。前半は「政治とカネ」「政治と官の癒着」など薄汚れた低次元の“疑惑国会”であったが、後半は「国家の独立と国民の生命・財産を守る」政治の根元に立ち返って、与野党が堂々の論陣を張る崇高な国会に突入したといえる。私も基地の町・佐世保出身の代議士として自民党の安保・外交調査会、内閣・国防部会などの討議に積極的に参加し、3法案の今国会成立を目指し、微力ながら大いに活躍したいと念じている。

 3法で首相の権限強化

 有事法制は、@外部からの武力攻撃事態(有事)に対処するための全体像を示す「武力攻撃事態法案」A自衛隊の行動を円滑化するための「自衛隊法改正案」B安全保障会議の機能強化を図る「安全保障会議設置法改正案」――の3本柱で、国の意志決定の枠組みや首相の権限強化などが盛り込まれている。包括的内容の武力攻撃事態法案では、有事の定義を「武力攻撃(武力攻撃のおそれのある場合を含む)が発生した事態」とするとともに、「武力攻撃が予測されるに至った事態」も含め、広く設定した。有事が発生した場合、政府は安全保障会議の答申を受けて「対処基本方針」を策定、内閣に対策本部(本部長・首相)を設置し、国の行政機関や地方自治体などが対処措置を実施する。

 方針は直ちに国会承認

 対処措置には、自衛隊の武力行使や部隊の展開、日米安保条約に基づいて自衛隊と共同行動する米軍への物品、施設、役務の提供が含まれる。対処基本方針は直ちに国会承認を求め、不承認の議決があれば、対処措置を終了させる。地方自治体は、国や行政機関と協力し、「必要な措置を実施する責務を有する」と明記された。首相は地方自治体の首長らと対処措置に関する総合調整が行える。しかし、「所要の措置が実施されないとき」は別に法律を定めたうえで「当該措置を実施すべきことを指示できる」とする指示権を設けている。また、首相に対しては「自らまたは当該措置に係る事務を所掌する大臣を指揮」し、地方自治体が実施する対処措置を代わりに執行できる、との権限を与えている。

 2年以内に関連法整備

 一方、テロや不審船対策については「必要な施策を講ずるものとする」との言及に止めている。警報の発令や避難の指示、被害の復旧など、国民の生命・財産を保護する法整備は、「2年以内を目標に実施」とし、先送りした。自衛隊関係では「防衛出動が予想される場合」に自衛隊が民間の土地に陣地を構築するなどの「防衛施設構築の措置」を防衛出動前にもとれるとし、その際の自衛官の武器使用も「合理的に必要と判断される限度」で容認した。以上が有事関連3法案の概要である。これに対し、共産党は「基本的人権や議会制民主主義を踏みにじる戦争国家法案だ」と反発、社民党も「有事に名を借りた戦時法制は憲法9条から逸脱し、米国の軍事行動までも対象となりかねない」と反対している。

 足並みそろわぬ野党

 同じ野党でも、自由党は「遅きに失した法制だが、冷戦後の安保環境を踏まえておらず、旧世紀の戦争概念で時代遅れのもの」と酷評、集団自衛権との関わりなどを明確にするよう迫っている。複雑なのは民主党の対応だ。昨年秋の臨時国会でテロ特措法を巡って党内の意見が割れたように、有事法制の必要性を認める保守系と護憲勢力の旧社会党系とが対立、政府案への対応が決まっていない。そこで「検討すべき課題が山積しているので最低でも100時間の審議時間が必要」(党幹部)とじっくり構えている。与党内も、支持母体の創価学会に慎重論が強い公明党は、党内手続きを重視して閣議決定を遅らせたが、時間をかけて法案を審議する姿勢だ。超党派の「新世紀の安全保障体制を確立する若手議員の会」(代表世話人武見敬三参院議員)は「テロや工作船対策、大規模災害なども含めたあらゆる緊急事態に対して必要な法整備を計画的に行うべきだ」との要望書を提出した。

 縦割り行政の悪弊も

 これは、小泉首相が昨年末、有事は戦争だけじゃない。テロも、不審船も、拉致問題も、自然災害もある」と語り、有事の概念を幅広くとらえていたのに、今回の有事法制の対象が自衛隊の出動する「戦争」にほぼ限定されたからだ。立案の過程では、有事の概念を拡大すれば法整備が遅れかねないと懸念した自民幹部、有事を出来るだけ狭めておかないと国民の不安を煽ると心配した公明幹部の思惑が一致したともいえる。それにもまして、戦争は自衛隊、テロや不審船は警察と海上保安庁、災害は警察、消防、自衛隊と対応する組織が異なり、縦割り行政の悪弊が出たことも政府部内の調整を長引かせる結果となった。

 集団的自衛権が問題に

 このため、自衛隊の本来業務である武力攻撃に対応する体系は整備されたものの、大規模テロや不審船などの対応は「迅速かつ的確に実施するために必要な施策を講ずる」と記されただけで、具体的な方針は先送りされた。今後は自衛権と警察権の空白を埋めるために「領域警備法」の制定や大規模テロ発生時の国民の避難誘導など、現実的な法整備が必要になろう。また、2年以内をめどに立法するとして後回しにされた個別法、つまり地方自治体の関わりや国民の生命・財産を保護する法整備にも本腰を入れて取り組まねばならないだろう。有事法制は純然たる個別自衛権の発動だが、「周辺事態」と「武力攻撃が予測される事態」が同時に発生する可能性もあり、有事法制と周辺事態法とがオーバーラップする部分も多い。その際には集団的自衛権を行使できるかどうかが問題になる。

 四半世紀ぶりの論議

 有事法制論議は68年当時、防衛庁内でひそかに検討されていた “三矢研究”が明るみに出たのが発端だ。福田内閣は、法治国家として「超法規措置」で有事に対応するのはは避けるべきだとして、77年から防衛庁を中心に有事法制の研究を公然と進めてきた。だが、冷戦時代は「検討すること自体、戦争を招きかねない」としてタブー視された歴史がある。それから四半世紀を経て、ようやく論議が国会の表舞台に登場した。後半国会は医療制度改革の健康保険法改正案や個人情報保護法案、郵政公社関連法案など重要法案が目白押し。小泉内閣は今国会での成立を目指し連休前に有事法制の審議入りを果たしたが、92年の国連平和維持活動協力法に約193時間、99年のガイドライン関連法に約160時間かけたことを思えば、6月19日の会期末まで連日審議しても足りないくらいで、国会会期延長論も高まっている。ことは重要な安保問題だ。私は文民統制の徹底を念頭に、国民がとことん納得するまで国会の論議を深めるべきだと考えている。