第317回(7月1日)農水業改革の課題(2)水産物輸出・諫早で質す
 5月は天皇陛下が皇居の水田に田植えし、皇后陛下が蚕に桑の葉を与え、両陛下が国民植樹祭に出席された。「五穀豊穣」を祈り、「豊葦原の瑞穂の国」(古事記)の伝統を守る稲作・養蚕・植樹の儀式だ。先進国の中でも日本はフランスと並ぶ農本国。今年は世界無形文化遺産に日本の食文化が選ばれ、京都などの優れた和食のブランド品が世界に出回りブームを呼んでいる。特に日本の総人口1億人ほどに富裕層が増えた中国は、無農薬や水耕栽培の穀物、果樹、野菜など衛生的な日本の農産物に需要が増大している。水産物も輸出拡大のチャンスだ。政府は新成長戦略の中で「来年度から牛肉・茶・水産物など品目別の輸出団体を設立する」とし、農水産物の輸出拡大を打ち出した。それなのに、EU(欧州)向け輸出に必要なHACCP(輸出水産食品の取り扱い要領)の認定を受けている水産加工施設は29施設しかない。輸出戦略も曖昧だ。これでは農水業の6次産業化を目指しても絵に描いた餅。私は6月11日の衆院農林水産委のトップで質問に立ち、水産物の輸出拡大策を質すとともに、国営諫早湾干拓事業の開門調査問題で、翌日から「間接強制」による制裁金支払い義務が国に生じることについて、当時の菅直人首相ら民主党前政権の責任を追及した。
――衆議院農林水産委員会での主な質疑応答は次の通り――

北村  我が国の水産物は、輸出を大きく拡大する余地があると認識している。特にEUに対する輸出には、HACCPの認定が必要だ。現在、我が国で認定している水産加工施設は29施設しかない。昨年度の認定件数も2件にとどまっている。盛んにHACCPと言う割には実現が遅れている。先日の産業競争力会議で林農水大臣から、国産水産物の輸出拡大に向けた取り組みとして、EU向けHACCP施設の認定体制を強化するため、所管の厚生労働省に加え、水産庁もその認定の主体となるということが発表された。水産庁による認定は業界にとって長年の悲願であり、水産庁が認定の主体となったことを高く評価する。水産庁は認定の加速化をどう進めるのか。

有望市場EUへの輸出増が不可欠
小里泰弘農水大臣政務官  昨年8月に公表した水産物の輸出戦略では、水産物輸出額を2012年の1700億円から3500億円に倍増することを目指している。目標達成には特に有望な市場であるEUへの輸出を増やすことが不可欠。御指摘通り、EU向けのHACCPの取得状況は累計でも29件。ちなみに、米国の累計認定件数が1029件、中国でも634件と桁外れだ。このため昨年来、厚労省と調整をしながら体制の強化に努めてきた。まず、本来の認定機関である厚労省の保健所の機能を強化する。あわせて、水産庁の議事速報は、正規の会議録が発行されるまでの間、審議の参考に供するための未定稿版で、一般への公開用ではない。後刻速記録を調査して処置することとされた発言、理事会で協議することとされた発言等は原発言のまま掲載している。今後、訂正、削除が行われる場合があるので、審議の際の引用に当たっては正規の会議録と受け取られないようお願いする。自らが認定主体となり、大日本水産会等を活用して体制を組んでいくことになった。その結果、昨年の年間件数2件に対し、今後は年間20件を当分目指し水産物の輸出拡大を強力に後押ししたい。

産地市場の体制が極めて脆弱だ
北村 私も生産・出荷県の長崎出身なので関心が深い。産地市場のEU・HACCP登録は、我が国内ではゼロと聞く。和食が世界遺産となったが、世界中に人気がある日本食を、広めて行く取り組みの中で、和食、日本食の食材のメーンを占める魚、魚介類について、EU向けのHACCP対応、登録が済んでいる産地市場は国内に一件もないということでは、天然魚の水揚げが行われる産地市場等、体制が極めて脆弱であると言わざるを得ない。輸出を振興していくために、産地市場の登録についても積極的に取り組まねばならないと思うが、どうか。

登録基準を検討中、水産物輸出加速化
小里大臣政務官  例えば養殖魚の場合は、直接、水産加工施設に行く。ところが漁船でとれた魚は産地市場を経由していくわけで、産地市場で水揚げされる水産物をEUに輸出するには、その産地市場のHACCPの登録が必要ということになる。しかし、現在の産地市場のEU向けHACCP登録基準は、基本的には水産加工施設と同様の基準が適用されていて、登録された産地市場はないという状況だ。したがって漁船で捕れた水産物がEU向けに行くものはゼロであるという状況。競りなどの水産物の取り扱い、特に競り場というのはEUにはほとんどないから、これをどう取り扱うか。競り場におけるEU向けの区画をつくるとか、そうした我が国の産地市場の特徴を踏まえた産地市場の登録基準を作る必要があり、現在、検討を進めているところだ。現在、我が国のEU向けに輸出される水産物はほぼ養殖物だが、産地市場で水揚げされる水産物も輸出の可能性は大いにあると考えている。従って、産地市場の登録を促進し、水産物の輸出拡大を加速化してまいりたい。

有明海の漁業・水産振興はどうなるか
北村  EU向けのHACCPの登録が数多く実現することによって、米国あるいはアジア諸国に対する輸出の牽引力になると思うから、人材、財政の体制を整えて、積極的に取り組んで頂きたい。
次に、有明海の再生の取り組みについて聞く。今朝もニュースで報じられたけれども、もともと、有明海の水産振興については、御存じの通り、平成16年に、当時の亀井善之農林水産大臣が、平成14年の諫早湾干拓事業に係る短期開門調査、また平成15年に行われた中長期開門調査の検討を踏まえ、中長期開門調査を実施しないと判断する一方、議員立法で成立した有明海特措法に基づき、有明海等の再生対策を進めるとの方針を示したものだ。このことから、対策が具体的に進められるものと信じてきた漁業関係者は、漁業が置かれている環境が大変厳しいということが、今回、開門問題を引き起こした最大の原因ではないかと思う。それは、まず水産庁が主体的に取り組んでこなかったのではないかと私は考えている。もともと、この諫早湾防災干拓事業を推進するに当たっては、国、県は、陸のことが終わったら海の振興に積極的に取り組み、そして水産振興、漁業振興を図るという約束を有明海沿岸、国民に対してしていたものだから、水産庁が有明海の水産振興に主体的に取り組むべきというふうに考えているが、どうお考えか。

4県共同で水産基盤整備に取り組む
本川一善水産庁長官  大変厳しい御指摘を頂いた。水産庁として、有明海の漁業の振興について、これまで、覆砂あるいは海底耕うんなどの漁場改善策、さらには増養殖技術の開発を行ってきた。特に、非常に有望と考えているタイラギの垂下養殖技術については、昨年来、来られる皆さんにお勧めしたり、色々な積極的なPRも行いながら取り組んでいる。今年度からは、水産総合研究センターに委託をして、タイラギの種苗生産技術の開発も行いながら、漁業振興を図るすべを検討し、お勧めしているところだ。さらに、4月4日に4県の方々、漁協関係者が来庁されたときも、積極的な意見交換をし、各県がそれぞれバラバラに水産基盤整備事業を行っているような実態について漁業者の方は言っていたので、4県共同で水産基盤整備事業に取り組む仕組みができないかというようなことを、今、県とも相談しているところだ。今後とも、水産振興に主体的に取り組んでまいりたい。

(長文になるので、以下の衆院農水委の質疑応答は次号に掲載します)