第315回(6月1日)公選法改正②衆院に第3者機関設置 参院も改革案
 衆院選挙制度改革を協議する有識者の第3者機関設置は、共産、社民両党が反対姿勢を変えないことから、伊吹文明衆院議長は5月15日、石破茂自民、大畠章宏民主両党幹事長ら8党代表と会談、国会の正式手続きである衆院議院運営委員会の議決を条件に、設置を認める考えを伝えた。8与野党の国対委員長は同20日、逢沢一郎衆院議運委員長に第3者機関の設置を申し入れ、逢沢氏は「スピード感を持って第3者機関を設置したい」と答え、22日の会期末までに衆院議長の下に設置することが決まった。有識者の人選は、各党が推薦する形となる見通しだ。一方、与野党の参院幹事長らで作る「選挙制度協議会」の脇雅史座長(自民党参院幹事長)は4月25日の協議会に、参院の「1票の格差」を最大1・83倍に縮小する座長案を提示、「各党の意見を5月30日までに集約してほしい」と要請した。参院でも「1票の格差」が広がり、「違憲状態」「違憲」とする司法判決が相次いでいるからだ。脇氏は同月8日、山崎正昭参院議長と会い、「今国会中に合区を行う選挙区を決め、8月末までに結論をまとめて秋の臨時国会に公選法改正案を提出する」との方針を確認した。最高裁が12年10月、最大5倍の格差になった2010年参院選について、「違憲状態」との判決を下したため、参院は選挙区定数を4増4減して格差是正を図ったが、格差は2013年参院選で最大4・77倍にしか縮まらなかった。各地の高裁では、同参院選についても「違憲状態」や「違憲」の判断を下している。そこで、脇氏は有権者の少ない20選挙区程度を統合する「合区」とし、1票の格差を2倍未満に抑える座長案を提示したものだ。

11選挙区に再編合区の脇座長案
座長案は、選挙区選と比例選を組み合わせた現行制度の骨格を維持しながら、格差を2倍未満に抑えるのが狙い。日本の人口を選挙区選の改選定数で割った175万人の3分の2以下を合区の対象とし、岩手・秋田、宮城・山形、新潟・富山、山梨・長野、石川・福井、大阪・和歌山、鳥取・島根、香川・愛媛、徳島・高知、福岡・佐賀、宮崎・鹿児島の22選挙区(府県)を11選挙区に再編する。改選定数は、合区対象の選挙区全体で計6減となり、代わりに北海道、埼玉、東京、神奈川、愛知、兵庫の6選挙区で1ずつ増やし、格差を縮める。比例選は、各党が候補の当選順位をつける「拘束名簿式」を選択できるようにし、同一順位に並べることも可能。得票順に当選が決まる現在の「非拘束名簿式」の名簿提出も認める。これで合区による候補者調整で出馬できなくなった候補を名簿の上位に処遇できるようになる。脇氏は記者会見で、「一昨年の(参院選1票の格差に関する)最高裁の判決を素直に読めば、2倍以内にしろと(求めていると)理解した。苦渋の選択だ」と語った。

野党に多い「比例選に1本化」案
しかし、自民党が12日から始めた当選回数別の意見聴取では、「合区では候補者調整が難しくなり、人口の少ない県から国政に代表を出せなくなる」、「繰り返し都道府県の単位を尊重してほしいと言ってきた。県境をまたぐことは許されない」など反発する意見が相次いだ。各党にも異論が多い。各党の改革案を列挙すると、①自民党は2016年参院選に間に合うよう選挙制度を改革②公明党は全国を11程度のブロックに分ける大選挙区制③民主党は定数を40程度削減④日本維新の会は衆参合併の1院制⑤みんなの党は定数を100に削減し「完全1人1票」の比例選に1本化⑥結いの党は議員定数を3割削減し1票の格差是正⑦共産党は選挙区制を廃止し全国9ブロックの比例選に1本化し定数242は維持⑧生活の党は「1票の格差」を是正⑨社民党は選挙区を全国11ブロックに変更し現行の全国比例は維持⑩新党改革は議員定数半減――など「比例選に1本化」案が多い。選挙制度の周知には2年程度が必要なため、秋の臨時国会で成立させなければならないが、このように与野党双方がバラバラな主張をしているため、各党の意見調整は難航しそうだ。

徳島県知事が「地方の府」へ改革案
参院制度の改革では、飯泉嘉門徳島県知事が改憲案をまとめ、その中で参議院を地方の代表で構成する「地方の府」に改める案を提起したことが注目を集めた。この改憲草案には、参院を自治体代表で構成し、地方行政に関する優先決議権を持たせる国会改革を盛り込んでいる。自治省出身で全国知事会副会長でもある飯泉知事は、4月29日の読売朝刊インタビューで、徳島県の改憲案について、「参議院は衆議院のカーボンコピーと、不要論が言われる。1票の格差の問題から徳島・高知両県を統合する合区の話も出ているが、歴史の点でも県民感情でも難しい。米国の上院は人口の多い州も少ない州も議員は2人。都道府県の代表なら知事や都道府県議会の議長がいる。(参院を)地方に関わる制度や法律を作る『地方の府』にしたい」と語った。憲法改正が必要な理由として、飯泉氏は「憲法で地方自治を定める第8章はたった4条しかない。しかも、92条の『地方自治の本旨』などは漠然としている。『地方の時代』の言葉が踊っていた頃から様変わりしたが、全ての権限を国が持ち、我々地方は国にお伺いを立てる形が拭えない。本当の意味で地方自治が出来る理念やシステムを憲法に規定する必要がある」と述べ、国と地方の役割分担を唱えている。

西岡元議長が地域ブロック分割案
参院選挙区選は地域的なまとまりを重視して選挙区を都道府県単位とし、3年毎の半数改選であるため、最小の選挙区でも定数2を配分せざるを得ない一方、全議席数が242と衆院選より少ないことから最大の定数でも東京選挙区が10とされてきた。それが高度成長に伴う地方の過疎化と都市集中で「1票の格差」は毎回選挙の度に拡大、04年の最高裁判決で「漫然と現状が維持されれば違憲判断の余地がある」との意見が付き、5倍が違憲基準の相場とされた。これを受けて、05年に当時の扇千景参院議長の下に置かれた参院改革協議会の専門委員会が、①4増4減~14増14減の定数是正②人口の少ない鳥取選挙区と隣接県をまとめる「合区」③全国を10程度の選挙区とするブロック制――などの案を提起。10年10月には西岡武夫議長(当時)が、全国を地域ブロックに分割した上で、選挙区選をなくして比例選だけとする私案を各会派代表者による選挙制度改革検討会に提示したが、同議長が死去したため、各党の合意には至らなかった。このうち4増4減案は先の法改正で実現したが、今回の脇座長案は、両議長当時に示された両案をミックスしたものである。

16年の衆参ダブル選視野に改革
いずれにせよ、来春は統一地方選、秋には自民党総裁選と民主党代表選があり、その後は16年6月の参院選と、衆院議員の任期が満了する同年12月までは残り1年半足らず。衆参ダブル選挙も囁かれている。今国会か秋の臨時国会を逃すと、政党や議員個人も目前の選挙勝利に眼を奪われ、落ち着いた議論は出来なくなる。現行の衆院選小選挙区比例代表並立制は20年前の1994年に根拠法が成立したが、金権選挙や派閥抗争にブレーキがかかった半面、党執行部の権限が強化されるなど功罪相半ばする結果が目立ってきた。昨年4月に政界を引退した加藤絋一元自民党幹事長は1月の読売インタビューで、「衆院小選挙区制で勝つため51%の得票を取ろうとするから、極端な主張はしにくく、政策論争にはなりにくい。一方、比例選の導入で小党が乱立した」と述べ、中選挙区制復活を唱えた。参院でも獲得議席のネジレ現象で法案審議が遅れるなどの欠陥がある。衆院議長の下に設置する第三者機関と、参院の選挙制度協議会の双方で、徳島県の改憲案も参照にしつつ、多角的な議論を展開、大至急、公選法改正案を煮詰めなければならないだろう。      (完)