第314回(5月16日)公選法改正①衆院議長下に有識・第三者機関設置
 一昨年末、「違憲」、「違憲状態」の判決が続出した衆院選挙制度の改革が、ようやく動き出した。共産、社民両党を除く与野党8党は4月4日、幹事長らが国会内で会談し、定員削減や「1票の格差」是正策を検討する有識者の第三者機関を衆院議長の下に設置することで合意し、8日に与野党の幹事長が伊吹文明議長に申し入れた。選挙制度改革はこれまで、首相の諮問機関である選挙制度審議会で議論されてきたが、衆院議長の下に設置されるのは初めて。第三者機関に諮る課題は①次期衆院選で実施する定数削減と「1票の格差」是正②将来的な選挙制度の抜本改革――となる見通しで、定数削減と格差是正は3ヶ月程度(今国会会期中)で結論を出すよう求めている。8党が一致したのは、4月の消費増税で、政治家も「身を切る改革」を急ぐべきだとの認識が強まったからだ。だが、与党が小選挙区の定数は削減せず、比例議席の30削減を提案したのに対し、野党は小選挙区の定数を「5増30減」か「3増18減」とする案を示しており、開きが大きい。今後は第三者機関の人選や、同機関の提言にどの程度の拘束力を持たせるかなどが焦点になる。選挙制度改革は政党の消長に直結する。私は政調副会長の1人として選挙制度改革の徹底審議に参画している。

10党が設置を求め共・社は反対
 第三者機関の設置は、首相が昨年6月に記者会見で提案したものの、民主党の岡田克也政治・国会改革推進本部長が「政治家で一定の方向を出すべきだ」と主張し宙に浮いていた。特に定数削減に否定的な共・社両党は最後まで反対した。しかし、自公両党が「全党の同意を得なければならない」と主張したため、3月5日と26日に共産・社民両党を含む9党の実務者協議を開催。民主党などが「第三者機関は議長が委嘱した有識者で構成する」などの案を提示、この「議長委嘱」が与野党の素案とされた。これに「改革の党」を加えた10党の幹部が伊吹衆院議長に設置を申し入れた。共・社両党はこれに同席したが、設置には反対を表明したため、伊吹議長は4月14日、両党から意見を聴取した。選挙制度改革は、鳩山一郎政権の「ハトマンダー」、田中角栄政権の「カクマンダー」などと称された改革案が「党利党略に過ぎる」として野党に潰されてきた歴史がある。首相の諮問機関として初めて1961~62年に設置された選挙制度審議会は、第6次審(69~70)が「都道府県単位の選挙区は定数是正が必要」との参院選挙制度改革を、有識者だけの第8次審(89~91)が「衆院選に小選挙区比例代表並立制を導入」の現行衆院選挙制度を答申しただけ。

0増5減不十分、身を切る改革を
 1~7次審は与野党議員が参加したため、政党の圧力に押されて結論が出ず空回り。こうした中、1昨年12月の衆院選を巡り、全国の高裁・支部で審理された16件の「1票の格差」訴訟のうち、13件は「違憲」、2件は「違憲状態」の判決が出た。最大2・43倍だった1票の格差が、法の下での平等を保障した憲法に違反するか、違憲状態にあるというもの。判決を受け、安倍政権は昨年の通常国会で伊吹衆院議長が示した「法案の付則に選挙制度の抜本改革と定数削減を盛り込む」との斡旋案を付けて、「0増5減」の区割り改定法と、インターネットを使った選挙運動を解禁する改正公職選挙法を成立させた。民主党など野党は「0増5減だけでは不十分。国民に消費増税を求める以上、政治家にも身を切る改革が必要だ」と抜本改革の攻勢を強めた。自民党は細田博之幹事長代行が本部長の選挙制度改革問題統括本部で検討を重ね、公明党にも理解を求め、ようやく改革案を煮詰めた。

各党の利害離れた人物選べるか
 同案は小選挙区の削減には触れず、比例選の定数を30減の150議席とし、そのうち60は得票数が2位以下の政党に配分する優遇枠とするなど小数党に配慮した。改革から小選挙区を除外したのは、最高裁が1票の格差を生む主因とした「1人別枠方式」を廃止すれば、都道府県の人口に単純比例して議席を配分すると「21増21減」が必要になり、地方区の調整が困難になるため現状存続とした。優遇枠については「1票の価値の平等」という観点から憲法違反の恐れがあると指摘されているほか、共産・社民両党が小選挙区の改革を強く求め、第三者機関の設置では「大政党に有利なメンバーが選任される」と警戒した。民主党など他の野党は小選挙区の定数を「5増30減」か「3増18減」の2案を提案している。
民主党など野党5党が提示し、与野党9党が3月26日に合意した改革素案は、衆院議長の下に設置する第三者機関の衆議院選挙制度調査会(仮称)について、「議長が委嘱した有識者で構成する」とし、①定数削減について3ヶ月間で1次答申②中期的に抜本改革を検討して2次答申――と明記、2段階に分けて検討・答申する内容。有識者の人選は各党推薦の形をとる見通しだが、各党の利害から離れた人物を選べるかどうかが最大ポイントになる。
(以下次号)