第312回(4月16日)安保政策見直し②武器輸出3原則改定 与党合意
 自民党は総裁直属機関「安全保障法制整備推進本部」(本部長・石破茂幹事長)の会合や各派閥の会合を頻繁に開き、集団的自衛権の憲法解釈見直しを巡る党内論議を活発に進めている。3月31日の初会合では高村正彦副総裁が砂川事件を例に挙げ、「国の存立を全うするために必要最小限の集団的自衛権行使はあり得る」と限定容認論を説明したのに対し、出席者の衆参両議員約150人から明確な反対はなく、支持する声が相次いだ。そこで自公両党は3日、自民党の高村、石破両氏と中谷元・元防衛長官が、公明党の山口那津男代表、北側一雄副代表、井上義久幹事長と都内ホテルで会談。自民党が限定容認論を伝えたのに対し、山口氏は「砂川事件は集団的自衛権を視野に入れていない」と反論した上、「個別的自衛権や警察権の行使で対応できる」と指摘したという。高村氏はこれに先立ち、野田毅税制調査会長同席のもとで慎重派の古賀誠元幹事長と会い、限定的容認で一致している。

米国は解釈見直し歓迎し中国非難
 来日したヘーゲル米国防長官は5日、安倍首相との会談で集団的自衛権の憲法解釈見直しに支持を表明、6日の日米防衛相会談でも、「小さな島であれ、欧州の大きな国であれ国境線を勝手に書き換えたり、力で主権を脅かすことは容認できない」と述べ、年内にまとめる新日米防衛協力の指針(ガイドライン)に解釈見直しを反映させる意向を示した。またヘーゲル氏は、北朝鮮の弾道ミサイルに対処するため、2017年までに最新鋭の弾道ミサイル防衛システムを備えたイージス艦2隻を日本に追加配備する計画を明らかにした。その後に訪中した同長官は常万全国防相に対し、中国が沖縄県尖閣諸島の領空を含めた東シナ海に防空識別圏を設定したことを非難、「日米安保条約(第5条)で定めた対日防衛義務を完全に果たす」と中国を強く牽制した。共産圏の中露両国は、西側の民主主義が培った世界共通の価値観を拒絶し、中国は東シナ海、ロシアはウクライナで地域覇権の野望を募らせている。平和政党を標榜する公明党が解釈見直しに慎重なのは分かるが、10年間に軍事費を4倍に増強し海洋進出を目論む中国が「盗まれた釣魚島を取り返す」と公船を漁船に偽装、漁民に扮装した人民軍が尖閣諸島に急襲上陸したら、果たして米国は日米安保条約の防衛義務で尖閣奪回に協力出来るのか。解釈改憲の字句や地球の裏表など地理的な集団自衛の範囲にこだわらず、離党防衛と抑止力のあり方を真剣に考えねばならない時である。

武器を装備、輸出を移転に換える
 安倍政権が集団的自衛権の行使と並び、安全保障政策で取り組むもう1つの課題は「武器輸出3原則」の見直し。政府は3月11日の国家安全保障会議(日本版NSC)四閣僚会合で、武器輸出3原則に代わる「防衛装備移転3原則」と輸出の可否を審査する手続きを定めた運用指針案をまとめた。しかし、これも山口公明党代表が「平和国家の理念を堅持しながら無制限な輸出拡大にならないように」と主張していたため、3月12日から始まった自公両党の与党プロジェクトチーム協議では、「平和国家としての基本理念を維持する」との文言を盛り込み、同25日に運用指針案を了承した。これを受けて政府は4月1日、新3原則を閣議決定した。閣議後の国家安全保障会議(日本版NSC)九 閣僚会議では、審査手続きや情報公開のあり方を定めた初の運用指針も決めた。新原則は①移転(輸出)を禁止する場合を明確化②移転を認める場合を限定し、厳しく審査して情報公開をはかる③目的外使用や第三国移転は適正に管理される場合に限る――が柱。武器を「防衛装備」、輸出を「移転」に置き換え厳しい審査を前提に防衛装備を通じた国際連携強化を目指している。

国際共同開発・生産が包括的可能
 3月の四閣僚会合でまとめた運用指針案は①国際的な平和、安全の維持を妨げることが明らかな場合は輸出しない②「平和貢献・国際協力の積極推進と日本の安全保障に繋がる」場合は輸出を認める③装備品の第三国移転は事前同意なしでは原則認めない――という内容。日本の安全保障に繋がる場合として、「国際共同開発・生産の実施」や「安全保障・防衛協力の強化」を挙げ、石油輸入ルートを守るためのシーレーン(海上交通路)沿岸国への輸出や米軍戦闘機の補修業務などを新たに認めた。装備品の第三国移転は事前同意なしには原則認めず、認める場合は理由などを公表、透明性を図ることも盛り込み、北朝鮮や中国などに輸出されないよう歯止めをかけた。これをもとに閣議決定の新原則では具体的に、国連安保理事会決議に違反する国や紛争当事国には禁輸とした上で、「平和貢献・国際協力」や「日本の安全保障」に繋がる場合に限って輸出を認める。これまでは官房長官談話を出すなど、21件の例外で対応してきたが、国連などの国際機関への輸出や、次期主力戦闘機F35 のような国際共同開発・生産への参画が包括的に可能になり、シーレーン沿岸国を念頭に、救難・輸送・警戒監視・掃海を目的とした装備品の輸出も認めることになる。

三木内閣の全面禁輸を抜本的改定
 運用指針では、輸出の可否に慎重な政治判断が求められるケースは、NSC四閣僚会合に経済産業相を加えて審議し、NSCで輸出を決めた案件は発表し、透明性を確保するため、年間実績をまとめた報告書も作成する。武器輸出3原則は「核は作らず、持たず、持ち込まず」の佐藤栄作政権が1967年、①共産圏諸国②国連安保理決議による禁止国③国際紛争当事国・その虞のある国――に武器輸出を禁止したのが始まり。これに輪をかけ三木内閣が76年、武器と関連技術の原則全面禁輸を国会で答弁し現行の3原則となった。その後83~2013年にかけ徐々に21件の例外措置を認めてきたが、それでも、特許料を米企業に支払い日本で製造する「ライセンス生産」の対戦車ヘリコプターなどは中東諸国から部品の発注があっても、3原則に抵触するとして断らざるを得なかった。また、日本企業がこれまで請け負ってきた在日米軍基地で使用する戦闘機の補修業務が、米国の都合で国外の基地で一括整備するようになったため、日本企業は入札できず、韓国企業が落札したケースなども目立っている。首相には日本の安全を確保しつつ、各国への防衛協力を通じて「積極的平和主義」を推し進める狙いがあり、新原則では「平和貢献・国際協力」や「日本の安全保障」につながる場合に限って武器輸出を認めた。三木内閣が武器と関連技術(防衛装備)の原則禁輸を決めた1976年以来、初めての抜本的見直しだ。

日豪でも防衛整備品を共同開発
 首相は早速7日、東京で開いたアボット豪首相との日豪首脳会談で、防衛装備品の共同開発などの安全保障協力で合意した。また、中国が東シナ海や南シナ海で領有権を主張したり、防空識別圏設定などの挑発を続けていることに対し、同盟関係の日米豪の枠組みで連携を強化する方針も確認した。具体的にはアジア太平洋地域で自衛隊と米豪両軍の共同訓練を拡充することなどを計画している。日豪両政府は第1次安倍内閣時代の2007年に「安全保障共同宣言」に署名、12年以来2年ぶりとなる日豪外務・防衛閣僚協議(2プラス2)を今年前半に東京で開くことでも一致した。防衛整備品の共同開発で、豪州側は海上自衛隊の潜水艦技術に強い関心を持っているという。防衛省は1日の「防衛装備移転3原則」の閣議決定を受けて、日本の防衛産業の維持・育成を目指す「防衛生産・技術促進戦略」の素案をまとめ、3日の自民党国防部会に提示した。5月にも正式に決定する。

防衛産業の育成・強化も成長戦略
 素案では、1970年の防衛次官通達が「防衛装備品の基本を国産」と定めたことの意義を考慮しつつ、「国際共同開発・生産へのさらなる参画により、防衛産業の技術力向上、国際競争力強化を図る」と明記した。具体的内容では、①米国や欧州との共同開発推進に加え、海洋安全保障や災害救助などで豪州や東南アジアとの協力の重要性を指摘②半導体やセンサーなどの日本企業の優れた分野での技術協力、防衛装備品の積極的な民間転用③防衛産業に参入する民間企業のリスクを減らすための契約方法の見直し④大学・企業の先進的な防衛装備品の基礎的研究への投資を検討――などを掲げた。このように安倍内閣は防衛産業の育成・強化も成長戦略の一環に取り込んでいる。      (安保② 完)