第311回(4月1日)安保政策見直し①集団的自衛権 慎重な公明党説得
 14年度予算成立後の後半国会は、教育委員会制度見直しの「地方教育行政法改正案」、派遣労働者の無期限派遣を認める「労働者派遣法改正案」、食品偽装表示の監視・指導体制強化の「景品表示法改正案」など重要法案の審議と、対トルコ・アラブ首長国連邦との両原子力協定批准の与野党攻防に移った。法案以外では、集団的自衛権の憲法解釈見直し、原発再稼動、法人税実効税率の引き下げ、成長戦略の6月改定など、会期中に道筋を付ける懸案が多くあり、公明党の慎重論をどう抑えられるか。与党内調整も厳しさを増している。国際関係では、ロシアが武力を背景にウクライナから独立する住民投票を終えたクリミア自治共和国の露編入を決め、中国の李克強首相も先の全人代の政府活動報告で「国境、領海、領空防衛の管理を強化する」と尖閣諸島周辺の海洋支配に意欲を示した。政府は離島防衛を担う我が選挙区・長崎県佐世保市の西部方面普通科連隊(約700人)に、米海兵隊の機能を持つ3千人規模の専門部隊「水陸両用団」(仮称)を創設する方針だ。首相は22日の防衛大卒業式で、「日本近海でミサイル防衛の米イージス艦が攻撃を受ける時に日本は何も出来ないで良いのか」と集団的自衛権行使の必要性を強調した。同感だ。私は文科行政担当の政調副会長として教育制度改革法案、消費者特別委の筆頭理事として食品偽装表示監視法案の成立に努めているが、集団的自衛権問題、成長戦略の改定にも尽力している。

慎重審議で自公合同のPT設置へ
 集団的自衛権行使容認の憲法解釈見直しは、4月中に有識者会議「安全保障の法的基盤再構築懇談会(安保法制懇)」の報告書を受けて内閣法制局を中心に見直し作業に入り、与党協議を経て夏ごろに閣議決定、秋の臨時国会に国家安全保障基本法、改正自衛隊法など関連法案を提出する段取り。12年ぶりに年末に改定する日米防衛協力の指針(ガイドライン)に解釈変更を反映させるには夏の閣議決定がリミットだが、公明党の支持母体・創価学会には解釈見直しに慎重論が多い。山口那津男代表は「内閣法制局が解釈を積み重ね整合性を保った考え方が確立されている」と述べ、自民党の大島理森副総裁と親しい漆原良夫国対委員長も「国民の声を聞くべきだ」とブログに書き閣議決定前の国会審議を求めている。見直しが遅れると来春の統一地方選への影響を嫌う同党との調整が困難になるとの事情もある。政府・自民党は石破茂幹事長を本部長とする党総裁直属の「安全保障法制整備推進本部」を発足させ、31日に初会合を開いて本格的な党内調整に入った。自公両党はプロジェクトチーム(PT)を設置、いずれ合同PTも設けるが、両党の責任者は弁護士出身同士の高村正彦自民党副総裁と北側一雄公明党副代表に決定。高村氏は26日の講演で「砂川事件の最高裁判決は現行憲法下での自衛権行使を認めている。集団的自衛権行使がすべて認められないと内閣法制局が言い切ったのは行き過ぎだ」と指摘、限定的な行使は可能と主張した。59年の砂川判決は「『自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置』は合憲だとされた基準に基づき憲法上認められる行使もある」とした。

報告書提出や閣議決定先送りか
 自民党は3月17日、2005年の郵政民営化を巡る議論以来となる総務懇談会を開き徹底討議したほか、政務調査会で全議員を対象にした勉強会も開いた。総務懇談会での討論は党議拘束に繋がる決定事項ではないため、慎重論や見直し反対論など活発な意見が噴出した。「責任野党」を称するみんなの党や日本維新の会は見直しに賛成だが、民主党は「憲法9条(平和条項)に違反するという内閣の解釈を正面から否定するもので、立憲主義に反する」と反発。国会で徹底的にオープンな議論をするよう求めている。

安全に大影響が出る場合に限定
 こうした状況から首相は4月27日投票の衆院鹿児島2区補選に悪影響を及ぼさないよう安保法制懇の報告書提出や閣議決定を先送りする考えで、内閣法制局を中心に十分検討した上で結論を出す。安保法制懇座長代理の北岡伸一国際大学長は2月21日、日本記者クラブの会見で、①密接な国にある国が攻撃を受けた場合②放置すれば日本の安全に大きな影響が出る場合③当該国から明確な要請があった場合④第3国の領空・領海の通過には許可を得る⑤首相が総合的に判断し国会承認を受ける――の5つを集団的自衛権行使の憲法解釈見直し要件に挙げたが、②の「放置すれば日本の安全に重要な影響が出る場合」に限定して報告書に盛り込む案が有力視される。これにより、①や③,④のように外国領土での戦争や地球の裏側での紛争に加わるという典型的な集団的自衛権は容認対象から除外される。この表現は、適用範囲を限定し米軍の後方支援など自衛隊の活動内容を定めた周辺事態法(99年成立)と同じ内容で公明党を含む与党内慎重派の理解も得易いからだ。次回は集団的自衛権の行使と並ぶ安全保障政策の大きな課題、武器輸出3原則の見直しを取り上げる。