第306回(1月16日)諫早関門問題(2)菅元首相に参考人招致を求む
 冒頭に諫早干拓の歴史に触れておこう。干拓に深く関わったのは郷党の先輩、故・西岡武夫元参院議長である。同氏の父親で、長崎民友(現長崎新聞)のオーナーだった西岡竹次郎県知事が1952年(昭和27年)10月30日の同紙の朝刊に「有明海の干拓へ」という記事を載せたのが始まり。当日は第4次吉田内閣が発足した日。「堤防を築造、水田3万町歩を生み出す」との4段見出しで、総工費は当時としては巨額の約160億円をかけ、3万町歩(3万ヘクタール=東京ドーム約6千3百個分)を干拓すれば、①2万農家の新設が可能で農村の次男、三男対策にも役立つ②60万石の米収が見込まれ県内の食糧不足は完全に解消する③諫早湾は窪み三角形で波も割合少ないから難工事ではない――と報じた。西岡知事を中心に政府に働き掛け、国の直轄事業に採用された。しかし、コメ余りで70年代に減反政策が始まって構想は棚上げされ、高潮や洪水に対する防災や畑の造成が目的に追加され規模も大幅に縮小したが、86年に事業が動き出し、97年に全長7キロにわたり潮受け堤防の排水門が閉め切られた。父の衣鉢を次いで実現に努力したのが子の武夫氏である。

西岡参院議長「菅氏は滑稽」と酷評
 これで約670ヘクタールの干拓農地と農業用水を供給する調整池などを造成。堤防で高潮や洪水を防ぐ効果も期待された。約10年後の2008年3月に完成し約40の個人や法人が営農している。しかし、有明海では赤潮が増え、特産の養殖ノリも不作が続くと福岡、佐賀、熊本3県や漁業者が開門を訴え、福岡高裁は10年12月、潮受け堤防排水門の5年間常時開門を命じた。その後3県の漁業者と長崎県や営農者との対立は先鋭化し、長崎県と営農者が長崎地裁に開門差し止めの仮処分を訴え、仮処分を認める判決が下された。この間、農水省の開門調査対策工事は過去3回にわたり着工延期を余儀なくされている。このように諫早干拓は曲折をたどった。西岡武夫氏は河野洋平氏(後の衆院議長)らと新自由クラブを旗揚げして自民党を離脱、新進党、自由党を経て同党が旧民主党と合併した後は参院議長に推され就任、参院制度改革への信念を貫いた。福岡高裁判決の上告を断念した菅首相に対しては「リーダーシップを発揮したと思っている。非常に滑稽」と酷評した。

平成25 年12 月18 日 の衆院農林水産委員会での、北村の質疑応答(要旨)は次の通り。
 北村 畜産物価格は肉用子牛の価格が極めて良好。平均で1頭55万から60万を超す価格で、繁殖農家にとっては極めて望ましい状況だ。価格堅調の要因は、繁殖農家戸数が、悲しいが減少し、出荷頭数が減っていることが大きな原因。肉用牛の繁殖はもとより、地域農業にとって極めて大事な事柄。繁殖基盤の維持を図るための国の支援が大変重要であるが、肥育素牛、繁殖牛の基盤をどのように維持、拡大、充実、支援をしていくのか。

佐藤一雄生産局長 繁殖農家の戸数は現在、5万3千戸で、高齢化、後継者不足により年に3千戸程度のペースで減少し、飼養頭数も減少傾向にある。生産基盤の維持拡大が非常に重要であると認識している。肉用子牛生産者補給金制度といった繁殖農家に対する経営安定対策や、離農した農家の畜舎等の経営資源を引き継いで規模拡大を支援する経営資源有効活用対策事業のほか新規参入者への畜舎貸し付け、離島の子牛の集出荷促進等を支援する肉用牛経営安定対策補完事業を行っている。今後とも繁殖基盤の維持拡大を支援していく。

北村 畜産経営には餌が極めて重要だ。できるだけ日本国内で自給する体制作りのために努力をしていると思うが、平成32年度で飼料の自給率を38%という目標を設定しているが、現状は26%止まりと聞いている。飼料の自給率向上には増産を図ることが大変大事だと思う。農地あるいは水田を活用し、フルに使用すること、そして食料残渣、食物残渣を有効に活用していくための法律等もある。自給飼料にどのように役立てる計画を持っているか。

小里泰弘農水政務官  畜産、酪農の規模拡大を初めとする足腰の強い高収益型の畜産経営、酪農経営を図る上で、飼料の安定供給、なかんずく自給飼料の供給体制をしっかり作っていくことは極めて大事な課題だ。そのため新たな米政策において飼料米を中心とする生産振興を図ることとした。出口対策でも、乾燥貯蔵、加工施設を初めとする整備を図っていく。畜産側の取り組みにおいても、例えば、自民党の10カ年戦略に示されておる飼料自給率1・5倍増計画を受けて、粉砕機の整備や優良品種の開発、コントラクターの育成、TMRセンターの整備、いわゆる飼料に係る作業の外部化。御指摘のエコフィード、食品残渣の利用拡大等に必要な予算を要求している。これらを推進し飼料自給率の向上を図りたい。

北村 続いて我々地元長崎の関心事、諫早湾干拓事業について尋ねる。今、畜産、酪農の飼料自給のことをお話し頂いたが、「干拓事業の成果として農地が造成された後、除塩の作業効率を上げるために、イネ科の植物を栽培させて周辺の酪農家の皆さんが自発的、研究開発の意味を持って自給飼料の栽培、草地の活用を」ということで、塩を抜く除塩活動、農地の整備活動で協力した。実績も上げ、酪農経営にこの草地が非常に有用で役に立っている。さらに、諫早湾干拓事業の開門問題では色々なことが報道されている。先週12日の新聞に、諫干開門延期、地元の同意めど立たずという見出しで、国が平成22年の福岡高裁判決の受け入れで負った開門期限である12月20日までの開門調査実施が先送りされる見通しとなったことが各紙に掲載された。今後、国としてはどういう方針で臨むのか。

相反2つの法的義務は難しい状況
 林芳正農水相  諫早干拓排水門は、確定した福岡高裁判決により国は本年12月20日までに開門すべき法的義務を負っているが、一方で、今年11月12日の長崎地裁の仮処分決定により、国は開門してはならない法的義務も負うことになった。二つの相反する法的義務が存在するという難しい状況の中にあって、解決の道を模索するには関係者による話し合い以外にはないと考え、長崎、佐賀等の関係者に対話を呼びかけてきた。昨17日、私と江藤拓副大臣で、長崎、佐賀の両県知事、関係者の皆様とそれぞれ面会したが、長崎側からは、開門を差しとめる仮処分決定が出たのだから、開門の方針を撤回し、白紙から見直すべきであるとの御意見が出された。一方、佐賀側からは、確定判決に基づき、開門方針を堅持すべきであるとの意見が強く申し入れられた。20日期限まで、3日間という状況で、極めて厳しい状況だが、ぎりぎりまで関係者による対話の努力を行ってまいりたい。
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 林農水相の答弁は以上の通りだが、相反する2つの法的義務を負った農水省は1月9日、「国としての立場や考え方を司法の場において申し述べるため、国としては①佐賀地裁に対し、関門原告団が申し立てた強制執行(開門まで1日1億円の制裁金の支払いを求める間接強制)に対して、確定判決の執行力の排除を求める[請求異議の訴え]と[強制執行停止の申し立て]②長崎地裁に対し昨年11月12日の仮処分決定への[異議]の申し出」――を行った。いずれも最高裁まで争えば司法判断が確定するまで数年かかる可能性がある。林農水相は記者団に対し、「今後は司法の場で国の立場を申し上げるが、問題解決のために話し合いが必要という考え方は変わらない。関係者に粘り強く話し合いを求めていきたい」と語った。
    (以下次号)