第305回(1月元旦)諫早開門問題(1)長崎地裁が開門差し止め命令
 諫早開門は是か非か――。国営諫早干拓事業を巡り、長崎地裁が昨年11月12日、福岡高裁が国に開門を命じた確定判決と矛盾する「差し止め」命令を決定したことで、長崎、福岡、佐賀、熊本4県の地元では大変な混乱が起きている。農水省は開門調査着手の努力を重ねてきたが、林芳正農水相は開門期限の12月20日、「地元関係者の納得がない中で工事着工は出来ない」とし、地元の話し合い継続を求め、開門を断念した。諫早湾周辺では1997年のいわゆる「ギロチン」と呼ばれた排水門締め切り以降、タイラギなどの貝類やノリの不漁が続き佐賀、熊本などの漁業者は開門訴訟を起こし、福岡高裁は2010年12月、漁業者の訴えを認め、国に5年間の常時開門を命じた。以前から干拓事業を政官業癒着の象徴と批判していた当時の菅直人首相は「待ってました」とばかり上告を断念したため判決が確定した。一連の混乱は民主党の場当たり的対応が原因である。私は12月18日に開かれた衆院農水委の閉会中審査で相反する司法判断が招いた混乱の問題点を追及した。

諫早湾の漁業環境は改善しない
 長崎地裁は福岡高裁の確定判決に対し、開門に伴う農業被害の大きさを重視し、「開門で諫早湾と有明海の漁業環境が改善する可能性は低い」と指摘。開門すれば農業用水を供給する堤防内側の淡水調整池に海水が入るため、営農者らは生活基盤を失うとして、差し止め命令を求めた。この差し止め命令に対し、佐賀県など開門賛成派の漁業者側弁護団は11 月30日、国が年内に開門しない場合、制裁金を支払わせる「間接強制」を佐賀地裁に12月24日に申し立てる方針を明らかにした。これには、諫早市など反対派の営農者側弁護団も「国が開門方針の撤回を表面しない場合、請求異議の間接強制を申し立てる」と表明した。福岡高裁の確定判決が命じた開門の期限は同月20日。佐賀県の賛成派は20日までに開門しない場合、翌21日に抗議集会や海上デモを計画、弁護団長の馬奈木昭雄弁護士は「開門がすぐに実現されないなら制裁金の間接強制を申し立てる」と記者団に述べた。

抗争泥沼化解消に開門見直せ
 このように司法判断を巡る双方の抗争は泥沼化している。しかし、福岡高裁判決後の環境アセスメントは「開門しても潮流や水質に影響が及ぶのは諫早湾に留まる。開門が地元の防災、農業、漁業、環境に大きな被害が生じることは明白」とした。アセスを待たずに独善的な判断を下した菅元首相の責任は極めて重大だ。開門のアクセルを踏んだのが福岡高裁ならブレーキが長崎地裁。やっとニュートラルの状態で白紙の段階まで戻った。上告断念の責任は菅氏が取るべきだが、国は混乱を招いた当事者であり、自民党政権は誤りがあれば正さねばならない。開門の是非についてプラス、マイナスをきちんと比較考量し開門方針を見直すべきである。私は閉会中審査で、①国は長崎地裁の仮処分決定をどう評価・分析したか②潮受け堤防締切りと漁業被害の因果関係を示せ③福岡高裁判決は漁業補償契約に重大な事実誤認がある――などを厳しく追及した。質疑応答の詳細は次回に報告する。
  (以下次号)