第304回(12月16日)食品偽装表示続発(2)監視甘く抜け穴だらけ
 日本百貨店協会は11月26日、特別委員会を開き、全国デパートの6割で食品の虚偽表示が発覚した問題を協議した結果、百貨店のレストラン任せにしていた食品の確認作業の徹底や抜き打ち検査、従業員教育の強化など業界全体で再発防止を図ることを申し合わせた。協会加盟の85社を対象に行った調査では、6割の51社、店舗別では230店の約53%に当たる121店舗で虚偽表示が見つかった。消費者庁に提出した報告書には、本物の芝エビでなくても似たエビなら問題ないという感覚、肉を繋ぎ合わせた「加工肉」や霜降り風味を出すための「牛脂注入肉」も景品表示法に基づく正確な表示にしなければならないことを知らなかったと記述しているという。日本ホテル協会の小林哲也会長は同29日、衆院消費者問題特別委に参考人として出席し、加盟147ホテルのうち34%に当たる84カ所で虚偽表示があったとの調査結果を発表した。バナメイエビを芝エビなどエビに関する虚偽表示が59カ所と最多で多くは中華料理のメニュー。小林会長は国民への裏切りを謝罪した。政府が9日に開いた第2回関係省庁会議でも、百貨店やホテル、回転寿司など23業界の延べ307業者に虚偽表示が確認され、取り締まり強化に景品表示法を改正する方針を決めた。

日本ブランド信頼性を一気喪失
虚偽・偽装表示の規正法は3つあるが、日本農林規格(JAS)法は、加工品や生鮮食品の品種や産地名の記載が求められるものの、外食のメニューや店内調理室で調理される「デパ地下」の総菜の表示は規制法の枠外である。不正競争防止法は意図的に異なる表示であることを立証する必要があり、その基準について業界の理解は得がたい。消費者庁所管の景品表示法は実際より著しく優良だと誤解を与えるような表示を「優良誤認表示」として禁じているため、一連の虚偽表示を取り締まり易いとされていた。ところが、東京新聞によると、表示の基準はあいまいで、例えば大手ホテルなどで冷凍ジュースを「フレッシュジュース」と表示した問題でも、消費者庁は「フレッシュとは、その場で絞ったジュースを指すとは限らない」として、優良誤認表示に当たるかどうかは微妙とし、同法違反で刑事罰を適用された例はなく抑止力には程遠いという。監視体制が甘く、規正法は抜け穴だらけだ。予告通りユネスコは4日、「和食 日本人の伝統的な食文化」を無形文化遺産に決めたが、これでは、海外や外国人観光客から「安心・安全」と評価されている日本ブランドの信頼性は一気に失われる。食品業界全体が襟を正し消費者の信頼回復に努めるべきだ。

混入ツナ缶、虚偽クール宅急便
 虚偽表示とは別に、キューピーは10月3日、子会社「コープ食品」の九州工場(熊本)で製造したサラダなど3商品に金属片やゴム片が混入した可能性があるとして約48万個の回収を始めたと発表した。日本ハムグループの宝幸(東京)は10月26日、タイの委託先工場で生産されたツナ缶の「ツナフレークまぐろ」から社内基準値を超えるアレルギー物質「ヒスタミン」が検出されたとし、計約6万個を自主回収すると発表した。はごろもフーズも同月11日、缶詰の「シーチキン マイルド」から社内基準を超えてヒスタミンが検出されたとして、計約72万個の回収を発表している。おまけに低温輸送サービスが売り物のヤマト運輸「クール宅急便」と日本郵政「チルドゆうパック」が常温で仕分けや配達をしていたことが明るみに出、日本郵政社長が役員報酬を返納すると、佐川急便「飛脚クール便」も11 月17 日、「冷たくなかった」などの苦情が9月までの半年間に34件寄せられたと急ぎ発表した。第一三共ヘルスケアは5日、通信販売限定の化粧品「ダーマエナジー」について肌トラブルの苦情が相次いだため、販売を中止し返品・返金に応じると発表した。視力向上と称する「レーシック手術」が流行っているが、術後に不具合を訴える者が多い。

消費者庁設置はBSE症が契機
 国民生活の安定向上に寄与するため昭和45年10月に国民生活の情報提供、調査研究する特殊法人の「国民生活センター」が設立された。消費生活の不信・不安は、牛海綿状脳症(BSE)が社会問題となる中で発生した平成13年(2001年)の雪印食品による牛肉偽装事件などで高まり、同センターは同15年10月、独立行政法人に移行されたが、さらに同21年9月には消費者庁と消費者行政全般に監視機能を持つ第3者機関の消費者委員会が設置された。今年度予算は92・5億円、定員は僅かの289人。26年度予算概算要求では107・6億円を要求した。同庁は虚偽表示が相次ぐ背景には業者の知識不足もあると見て、景品表示法違反の具体例や判断基準の手引書を示し、適正表示の取り組み状況を1ヶ月後に報告するようホテルと百貨店の業界団体に求めた。全国市町村の9割以上が相談窓口となる消費者生活センターを設置し、消費生活相談員は全国3391人を数えているが、相談員不在の市町村が4割近くもあり、同センターの存在すら国民には余り知られていない。

消費者安全調査委は機能せず
 同24年8月の消費者安全法の改正により、独立・公正な事故調査機関として、生命・身体分野の消費者事故について原因究明と再発防止策を提言する「消費者安全調査委員会」が設置された。同調査委は平成17年のパロマガス湯沸かし器一酸化炭素中毒事故、同18年のシンドラー社製エレベーター事故、同21年の商業施設内設置のエスカレーター事故などに加え、同25年5月の機械式立体駐車場事故について原因を調査している。しかし、調査委は発足後1年を経過しても調査は遅々として進んでいない。パロマガス湯沸かし器の事故は過去に28件起き、一酸化炭素中毒で同17年当時18歳の青年が死亡しているのに、昨年10月に家族から調査申請が出されながら、現場調査が行われたのは今年11月21日だった。シンドラーエレベーター社製の事故2件はともに調査を継続中で最終報告は1件も出ていない。消費者事故調の委員は7人で、いずれも兼職の非常勤。事務局スタッフも22人で組織が小さく、事故の解明は国交省など関係省庁の縦割り行政の隙間に陥りがちだ。

集団的消費者被害回復法も遅れる
 一方、事業者が多くの消費者に被害を与えた際の救済をスムーズに行う集団的消費者被害の回復制度関連法案は11月1日、一部修正されて衆院を通過、12月4日に参議院で可決成立した。集団的消費者被害の1つは悪質な保証人紹介ビジネス。アパートに入居したり借金する際の保証人を必ず紹介するかのようにHPで宣伝して会費を徴収しながら実際には保証人が紹介されなかった場合など。こうした金銭的被害に遭った時、消費者が個々に裁判に持ち込むことは大変だから、新制度では第1段階で国に認められた消費者団体(特定適格消費者団体)が消費者の代わりにトラブルを起こした事業者と裁判で争い、勝訴したら裁判所の決定を受けて、個々の消費者に被害回復のための金銭が支払われる仕組みだ。これには、「消費者団体が権限を乱用して次々に訴訟を起こされ、巨額の支払いを迫られる」と財界が警戒したため、修正では消費者団体の活動を制約した。

まず高級志向に付け込む業者退治
 このように際限もなく拡大する食品の虚偽表示、いかさま化粧品、危険なガス・電気機器や乗降施設、集団的な消費者被害など規制する消費者行政の間口は広い。消費者問題担当の森雅子内閣府特命担当相が特定秘密保護法案の審議に連日狩り出されたため、衆院消費者問題特別委の審議は秘密保護法案の通過を待って同29日から開始された。日本食ブームに乗って来日した英国人が日本中のあらゆる和食を食べ歩き、「日本を食べる」と題した本を出版した。円安の影響でタイ、台湾、中東からの観光客が急増、新宿ゴールデン街までが賑わっている。私は同特別委の筆頭理事として、まず高級ブランド志向に付け込み荒稼ぎする食品業界に反省を促すため、景品表示法の改正に鋭意取り組みたいと考えている。
                              (完)