第303回(12月1日)食品偽装表示続発(1)モラル欠落し信頼喪失
 牛脂注入の加工肉を「牛ステーキ」と偽り、ブラックタイガーを「車エビ」と騙す――。
10月以来、全国の老舗ホテル、デパートで相次いで発覚した食材の偽装は、世界で日本食の信頼を失い、7年後の「おもてなし」が売り物の東京五輪開催に不安を与えた。だが、経営陣は「客を誤解させる意図は無かった」「故意でなく誤表示だ」と弁明し責任逃れに終始した。国民の不信も募り、おせち料理の予約が減るなど年末商戦に響いている。政府は11月11日、「食品表示等問題関係府省庁会議」を開き、消費者庁や農水・国交省など関係省庁が連携して、①景品表示法の不当表示、メニュー表示の違反事例を業者に周知徹底①偽装・誤表示状況の徹底調査②不当表示の速やかな是正③新ガイドラインの設定――などの対応策を取りまとめた。関係省庁は同月末までに取り組み状況などをまとめたが、消費者庁は阪急阪神ホテル、「ザ・リッツ・カールトン大阪」、近鉄系の「奈良万葉若草の宿三笠」の3社に景品表示法違反(優良誤認)を認定し、再発防止を求める措置命令を出した。私は衆院消費者問題特別委の筆頭理事として、懸命に消費者の安全策と取り組んでいる。

景品表示法改正案を通常国会提出
菅義偉官房長官は同22日の記者会見で、外食メニューの偽装表示に関し、業者に改善を命じる権限を都道府県にも与える景品表示法の改正案を次期通常国会に提案すると語った。改正では、小売店の表示を監視する農水省の「食品表示Gメン」が、百貨店や飲食店に立ち入り検査し、覆面調査ができることも検討している。これは、自民党の船田元・消費者問題調査会長から、「メニュー表示のガイドラインを作成してルールを明確化し、都道府県にも改善を命じる権限を与えてほしい」など7項目の提言を受けたからだ。消費者庁は「消費者行政の司令塔」として発足したが、未だ4年と日が浅く、虚偽表示を規制する法律は、所管別に不正競争防止法(経産)、日本農林規格法=JAS法(農水)、食品衛生法(厚労、消費者庁)、景品表示法(消費者庁)と別れていて十分機能していない。他にもコメの産地偽装、カネボウ美白化粧品の「白斑被害」、異常ツナ缶など消費者の安全を脅かす被害が続発している。「和食 日本人の伝統的な食文化」は、12月中に国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の世界無形文化遺産として正式に登録される見通しだが、偽装表示は深刻な汚点を残した。世界の和食店は今年5万5000店に倍増、来日観光客は866万人に達した。首相は外遊の度に和食のトップセールスを行い、農水省の外食産業室が8日に東京で「和食ワールドチャレンジ」大会を開くなど、「和食フェスティバル」の世界戦略を展開している。

全国老舗ホテル・百貨店が釈明
それなのに10月下旬、阪急阪神ホテルの虚偽表示表明を皮切りに「ザ・リッツ・カールトン大阪」、「奈良万葉若草の宿三笠」など関西の老舗ホテルから、関東の「帝国ホテル東京」、小田急電鉄系・箱根「山のホテル」、千葉京成ホテルに飛び火。さらに高島屋6店舗、三越伊勢丹、大丸松坂屋など著名デパートや不二家、日本郵政の「かんぽの宿」までがメニューの虚偽・不適切な表示があったと一斉に名乗り上げた。「みんなで渡れば怖くない」式に背信表示は底なしの様相を深めている。虚偽表示の実態は深刻度合いがさまざまだが、安い生肉や脂身(牛脂)を人工的にくっつけた成型肉を、1枚の肉で焼いた「ビーフステーキ」と偽り、豪州産牛肉を「和牛」と呼んだり、おせち用「からすみ」がサメとタラの卵で作った模造品だったり、冷凍魚を「鮮魚のムニエル」と称したり、普通の白ネギが京野菜に化け、ブラックタイガーやバナメイエビを車エビ、芝エビと表記するなど、出鱈目だらけ。酒や菓子の原料の加工米を主食用に、中国産輸入米を国産に偽装した業者も現れた。

偽装認めず「誤表示」言い張る
こうした偽装が常態化し、ホテルオークラは過去6年間に38万6千食、8億円以上を売り上げた、と東京新聞は伝えている。「奈良万葉若草の宿三笠」が和牛ステーキとして提供していた成型肉にはアレルギー症状を引き起こす乳成分、大豆、小麦が含まれていたことも分かっている。食物アレルギーは最悪の場合、死に至る。言語道断だ。いずれの経営陣も「多大なご迷惑をお掛けしお詫びする」と謝罪するが、「認識が甘かった。原材料のチェックまでしていなかった」と釈明し、「偽装」を認めず「誤表示」と言い張る。高島屋の鈴木弘治社長ら役員は虚偽表示の責任を取って報酬の5~10%を3カ月間返上したが、引責辞任を表明したのは「奈良万葉若草の宿三笠」を運営する北田宣之・近鉄旅館システムズ社長の唯1人。業界のモラルは著しく欠落している。          (以下次号)