第302回(11月16日)観光立国(2)五輪のお台場にカジノ設置構想
 五輪に便乗し、カジノ構想も各地で活発化してきた。1999年に都知事に就任した石原慎太郎氏が「お台場でカジノをやりたい」と財政再建策の1つに打ち上げたのが一番手。千葉の成田と幕張、北海道・小樽、愛知・常滑、大阪、長崎・ハウステンボス、沖縄などでも誘致の動きが強まっている。隣国では台湾が中国の富裕層を当て込んで、中国福健省から10数キロの馬祖列島(かつての紛争国境地)にカジノリゾート建設を計画したが、反腐敗を掲げる相手の習近平中国政権が協力しないため頓挫している。先進8カ国でカジノが無いのは日本だけ。石原氏の構想を受け継ぐ猪瀬直樹都知事は「日本は最後の未開拓地帯。お台場に大型豪華客船も入港させカジノだけでなくホテル・レストラン、ショッピングモールなど成熟型の社交空間を作りたい」と意欲的。マスメディアが「世界の首都にカジノ賭場は無いのでは」と問いかけても、「総合型リゾートランドを作り、地方の自主財源を増やしていきたい」と大張り切り。朝長則男佐世保市長も「西九州日本総合型リゾート」事務局が推進するハウステンボス(佐世保市)の都市型カジノを支援しており、サンズなど世界のカジノ運営会社は「最後のフロンティア」とばかり、日本参入の攻勢をかけている。

IR議連、カジノ法案成立へ
「東京五輪開催に間に合うよう、今から法整備を始めよう」と「カジノ議連」こと「国際観光産業振興議連=IR議連」(会長=細田博之自民党幹事長代行)は、経済振興のため、次期通常国会でカジノ法案「特定複合観光施設区域整備推進法案」の成立を目指している。IR議連には、共産、社民両党を除く約150人が参加。最高顧問に安倍首相、麻生太郎副総理、小沢一郎・生活の党代表、石原日本維新の会共同代表ら政界大物が名を連ねる。法案は「創意工夫と民間活力を生かし国際競争力の高い潜在型観光で地域経済振興」を目指し、民間事業者による建設・運営を基本とするが、①設置場所は自治体の申請に基づき国が指定②内閣府の「カジノ管理委員会」が運営を許可、免許取り消しの権限を持つ③同委の下に逮捕権を持つ「査察官」を置き、立ち入り検査や財務状況の閲覧、一時停止命令など不正・違法行為を摘発する――など暴力団の資金源化や犯罪を抑止する厳しい内容。首相は3月の衆院予算委で「シンガポールやマカオが、カジノで世界から沢山の人たちを呼び込むことに成功している。メリットは十分にあると思う」と述べ開設に前向きだ。日本は競馬960万人、競艇210万人、競輪110万人のファンがいるなど、公営ギャンブルが人気を集めているほか、好・不況期に関わらずパチンコ客は1110万人で20兆円ビジネスと言われるほど繁盛しているギャンブル大国。ギャンブル依存症は世界保健機関(WHO)も認める病気。依存症から抜けきれず貧困の借金地獄に陥り、犯罪に手を染める人が後を絶たない。

依存症防ぎ都市型健全カジノを
 多重債務者の救済活動に取り組む法律家や市民団体幹部らはカジノ解禁法案に猛反対だ。
厚生労働省が2008年に依存症のアンケートを実施した結果、4123人から回答があり、推定有病率は男性9・6%、女性1・6%。国内では500万以上がギャンブル依存症の計算になると東京新聞は報じている。韓国には公認のカジノ施設は各地にあるが、国民が利用できるのは江原道の江原ランドに限られている。マカオではカジノ利用客向けの女性のサービス業が盛んと言う。カジノ解禁の場合はこうした風紀面や治安の悪化、依存症による家族崩壊をどう防ぐかの対応策も必要だ。カジノで雇用と観光客の増大が見込まれるが、パチンコ業界には警察官OBが天下っているように、カジノを所管する公務員の天下り先になったり、暴力団の資金源やマネーロンダリング(資金洗浄)の温床にもなりかねない。青少年に悪影響を与えかねない施設を五輪競技場近くに建設することにも反対意見がある。
 カジノ法案制定では、これらの懸念を払拭する良案をまとめ、国民の理解を十分に得た上で、モナコやラスベガスのように健全な都市型カジノ施設を設置しなければならない。

九州、東北でグルメ寝台豪華列車
 7年後の東京五輪に向けて観光事業も活発に動き出した。JR九州は九州周遊の「ななつ星in九州」の運転を開始した。いずれも福岡の博多駅発着で、豪華客船をまねて宮崎、鹿児島など九州を広域に巡る3泊4日(2人1室利用で35~55万円)と、長崎、阿蘇などを巡る「走るホテル」の1泊2日(同30~44万円)の2コースある。日程のうち1泊は下車して湯布院の温泉旅館に泊る手もある。車内の洗面台は人間国宝14代陶工・酒井田柿右衛門の有田焼で作り、障子入りの窓枠など日本の古美術品を散りばめ、ビュッヘも地元特産「あか牛」のグリル料理を出すなど贅沢そのもの。料金が高いのに、好評で来年6月まで予約は満席という。阿蘇駅にはレストラン「火星」を出店、乗客以外にも同じメニューをサービスしている。JR東日本も負けずに八戸から久慈まで「東北エモーション」の運転を開始した。土日・休日用の連休臨時列車(3両)で、こちらもウニ、カキ、ホタテなど三陸名産の海産物をふんだんに提供する「全席レストラン」を1両つないでいる。スピードよりも景色とグルメを楽しむゆとりの旅が売り物。三陸鉄道もお座敷列車を開始した。

和食や海女も無形文化遺産登録
 ユネスコが2006年に発効した無形文化遺産保護条約に基づき、世界の祭礼や芸能、慣習などを登録して保護する制度が生まれた。これまで「フランスの美食術」、「トルコのケシケキ(麦がゆ)の伝統」、「メキシコの伝統料理」、スペイン、ギリシャなど地中海沿岸4カ国が申請した「地中海料理」の4件が登録され、世界全体で257件、日本では歌舞伎や能など21件が登録されている。韓国の「キムチとその漬け込み文化」が登録される見通しとなったため、政府は12年に「和食 日本人の伝統的な食文化」の登録を提案。ユネスコの補助機関による審査で事実上の登録が10月に決まった。「日本は地域ごとに特産品があり、季節感あふれる食材に恵まれている。和食のよさを世界に発信するいい機会だ」と食文化の研究者が言うように既に世界中で和食ブームが起きている。同月26、27日に石川県輪島市で開かれた「海女サミットin わじま」では「日本食文化の一翼を担ってきた」として海女さんの登録を決議した。ところが、老舗のホテル、百貨店でメニューとは異なる食材の虚偽表示が相次ぎ、日本食品の信頼と国民の期待を裏切った。真に遺憾だ。私は文科担当の党政調副会長として長崎の教会群文化遺産の登録を必ず勝ち取り、健全カジノ、豪華列車など観光資源を開発、観光立国の施策を一層充実させるよう政府に働きかけたいと考えている。                                (完)