第300回(10月16日)集団的自衛権に積極平和主義 日米防衛指針改定
 日本政府が尖閣諸島を国有化してから、9月11日で丸1年が経過した。中国は1年間に合計63回、216隻が領海を侵犯し「海洋強国化」を加速、対日圧力を強めている。安倍首相は同月12日、外交・安保政策の包括的指針となる中長期的「国家安全保障戦略」を議論する有識者会議「安全保障・防衛力懇談会」(座長・北岡伸一国際大学長)の初会合、同17日には7か月ぶりに「安全保障の法的基盤再構築懇談会」(座長・柳井俊二元駐米大使)を再開した。日米両政府は10月3日、東京で外務・防衛閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)を開き、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)を2014年末までに再改定することで合意、共同文書では中国を名指しして地域の安定に努めるよう牽制した。政府は来年度にも尖閣諸島など離島の防衛を担う米海兵隊の機能を持った3千人規模の専門部隊「水陸両用団」(仮称)を陸上自衛隊に創設する方針を固め、現在離島防衛を担っている我が選挙区・長崎県佐世保市の西部方面普通科連隊の約700人を組み入れる方針だ。海兵隊的機能を持つための訓練は厳しいが、極力バックアップしていきたいと思っている。

両懇談会に多い解釈見直し論者
 安保・防衛力懇談会は秋の臨時国会で成立を目指す「国家安全保障会議(日本版NSC)法」と連動して戦略を協議するが、政府が年内に見直す「防衛計画の大綱」についても議論する。首相は安保・防衛力懇の挨拶で「どの国も1国で自らの平和と安全を維持することは出来ない。国際協調主義に基づく『積極的平和主義』の立場から、世界の平和と安定、繁栄の確保に関与していく」との決意を述べ、「国益を長期的視点から見定め、国家安全保障政策を戦略的で体系的なものとする」と強調した。「積極的平和主義」は憲法9条2の平和条項を改正する自民党の憲法改正案を意識し、集団的自衛権の行使容認についても一歩踏み込んだ答申を期待した発言だ。尖閣諸島の国有化以来、中国は1月末に危機一髪のレーダー照射事件を起こし、最近は諸島周辺に国産の無人偵察機を飛ばし、9月10日にも中国海警局の公船8隻が領海に進入した。同懇談会は年末の答申で、中国の軍事力増強や北朝鮮によるミサイル攻撃への脅威に対処し、アジア太平洋地域の平和のため、同盟国との防衛協力や多国籍軍への参加を進める、解釈改憲の意義を強調する見通しだ。

公明の反発に首相慎重姿勢へ
  一方の安保・法的基盤懇談会は集団的自衛権の憲法解釈の見直しを検討するが、全員が解釈改憲論者といってよい。安保・危機管理担当の高見沢将林内閣官房副長官補は自民党の安保問題合同会議で「日本の安全を考える時、自衛隊が地球の反対側に行かないとは言えない」と述べ、自衛隊の海外派遣に地理的制限は設けるべきではないとの考えを示したが、党内では性急に解釈改憲の議論を進める官邸を懸念する声が上がった。平和政党を名乗ってきた公明党も強く反発している。かつて「集団的自衛権に断固反対」を唱えた同党の山口那津男代表は同月13日、首相の積極的平和主義について「中身がよくわからない」と不快感を示し、同19日のBS番組で「とんとん拍子で議論が進むことに戸惑いと恐れを感じる。議論は丁寧に進めるべきだ」と慎重論を繰り返した。こうした与党内の懸念に配慮し首相も慎重姿勢に転じ、両懇談会答申を待って長期的に結論を出す方針に切り替えた。

2プラス2はガイドライン再改定
 日米安保協議委の2プラス2は3日に東京で開かれ、有事の際の自衛隊と米軍の役割を定めた日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の再改定について2014年末までに合意するとの共同文書を発表した。文書には①安倍政権による集団的自衛権の憲法解釈見直しや国家安全保障会議(日本版NSC)創設の取り組みについて、米側が日米同盟の強化に繋がると歓迎することを明記②急速な軍拡を続ける中国に国際的な行動規範の遵守を要求③日米が宇宙・サイバー攻撃に連携して対処④沖縄の米軍基地負担軽減に向け、新型輸送機MV22オスプレイの訓練の県外移転を着実に進める⑤在沖縄米海兵隊のグアム移転を20年代前半に始める――を盛り込んだ。このように、中国が大国に相応しい役割を果たし、地域の不安定要因にならないよう求めて牽制したが、日本が主張したミサイル攻撃を受ける前に敵基地を攻撃する「敵基地攻撃能力」の明記は見送った。指針は日米安保条約に基づき、平時や有事、周辺事態での自衛隊と米軍の役割を定めた文書で、米ソ冷戦下の1978年に旧ソ連の日本侵略に備えて取り決められたが、冷戦崩壊の97年に改定され、朝鮮半島などの有事の際に自衛隊が米軍を後方支援する枠組みを作った。今回は17年ぶりの再改定で、自衛隊の海外支援を、米軍への医療、武器・弾薬の提供などへの拡大を検討する見通しだ。

オスプレイ20機を陸自に導入
 防衛省は2014年度予算の概算要求に、新型輸送機MV22オスプレイの調査費1億円を計上した。15年度予算に取得費を盛り込み、数年かけて計20機前後を陸自に導入する方針。これを円滑に導入するため、10月16日に滋賀県高鳥市の陸自饗庭野演習場で、同25日に高知県沖で国内では初めて米軍のオスプレイを使った日米共同防災訓練を実施する。滋賀県では空中停止の機体から隊員がロープを伝って降りる戦時想定の訓練、高知県では南海トラフ巨大地震を想定し、海上での被災者捜索や山口県の米軍岩国基地から高知県の土佐清水分屯基地と空母型護衛艦への物資輸送の訓練に取り組む。オスプレイはヘリコプターの垂直離着陸機能と固定翼機の高速飛行の長所を併せ持ち、離島防衛にも威力を発揮する。最大速力は時速520キロで輸送ヘリCH46 の約2倍、貨物積載量は9・1トンで約4倍、航続距離も3900キロで5倍以上、空中給油が可能で尖閣諸島などのより遠方まで飛べる。

佐世保普通科連隊に海兵隊機能
 政府は来年度にも尖閣諸島など離島の防衛を担う米海兵隊の機能を持った3千人規模の専門部隊「水陸両用団」(仮称)を陸上自衛隊に創設する方針を固めている。初年度は30人程度の「水陸両用準備隊」を設置、オスプレイを使うと2時間程度で南西諸島へ飛べることから、主として現在離島防衛を担っている長崎県佐世保市の西部方面普通科連隊の約700人を組み入れる方針だ。また、防衛省は8月末、背広組と呼ばれる文官の内局と、制服組と呼ばれる自衛官の統合幕僚幹部(統幕)に跨る自衛隊の部隊運用業務を、統幕に一元化する改革案をまとめた。有事や災害で迅速に対応するため意思決定を速やかにするのが狙いで、陸海空の各幕僚長定例会見の廃止や陸海空の各幕僚監部にある広報室の廃止も検討している。改革案では2014年度に次官級の「防衛審議官」を設置、内局や陸海空の自衛隊がそれぞれ行っている防衛装備品調達の業務を統一する「防衛装備庁(仮称)」の新設と、15年度には、自衛隊関連法令の立案業務は内局に残すが、内局の運用企画局を廃止し、部隊の運用業務は統幕に移管するなどを検討。全般的に制服組の権限を強化する方針だ。