北村の政治活動

 (平成14年4月1日) BSE調査検討委報告 気懸かりな官の作為

 最近、政府が発表する調査報告書の中では、役所の機密を公開したり、政治家との関係を暴露する内容が目立ってきた。外務省が鈴木宗男元北海道沖縄開発庁長官の疑惑を示す内部文書を次々と公開、野党側の“鈴木氏追い落とし”に利用されたり、BSE(牛海綿状脳症)調査検討委員会(委員長・高橋正郎女子栄養大大学院客員教授)が報告書案の中で、役所の「重大な失政」と政・官の「癒着体質」に言及するなど、政界に波紋を描いている。

 一転、内部告発

 BSE調査委員会は農相と厚相の私的諮問機関として設置された。本来各省庁の諮問機関である審議会、委員会、研究会は、役所の事務方が立案した政策などを委員が追認するだけの、「官僚の隠れ蓑」的な存在が多いとして、これまで絶えず批判されてきた。それが一転、内部告発的な報告書を世に出したのだから、政権与党内にも衝撃が走った。

 重大な失政と決め付け

 「無礼者、名誉毀損だ。公の場で対決してやる」――。自民党派閥領袖の1人は、報告書案の説明に現れた農水省幹部を一喝したという。BSE調査委は3月22日、BSEへの行政対応に関する報告書の原案を公表した。新聞でご存知の方も多いと思うが、それには、BSEの感染源とされる肉骨粉の規制を96年に農水省が行政指導にとどめた点は不適切で、「重大な失政」と決めつける一方、同省の危機意識の欠如や政策決定の不透明さ、生産性偏重・消費者保護軽視の“農水族”議員の圧力など政と官の「癒着体質」を批判している。

 生産者偏重と批判

 “農水族”の言葉を使って政・官関係を厳しく批判した第2部の執筆は、産経新聞論説委員の岩渕勝好委員が担当。その記述は「農林水産省の政策決定に最も大きな影響を与えているのが自民党中心の農水族議員。全国農村を地盤に選出された多くのの議員が巨大な支援団体にして強力な圧力団体を形成し、衰退する農業を補助金で支えてきただけに、常に生産者優先の政策を要求し、農業予算獲得を支援してきた。BSEのあらゆる局面で農水省が打ち出した政策に対し、農水族議員が陰に陽に影響を及ぼしている。農水省は産業振興官庁として抜きがたい生産者偏重の体質を農水族議員と共有してきた」と批判している。これではまるで政治家だけが悪く、農水官僚は指示通りに動いてきたと言わんばかりだ。

 官僚独善の恐れ

 結論では、「ただし、BSE問題を契機として、大臣をはじめ省内に遅ればせながら改革を目指す動きが出てきたことは評価に値する。政策判断の軸足を生産者から消費者に移す考えだ」などと矛先を緩めて結んでいるが、同案の説明を受けた自民党議員は収まらず、「政治家がものを言うのがけしからんとなると、官僚独善になる」と強く反発した。結局、4月2日に公表される最終報告書からは「自民党を中心とする農水族議員」を「国会議員、とりわけ農林関係議員」と修正し“農水族”の文言は削除されることになった。

 農相更迭論が再燃

 参院民主党は2日の公表後、参院予算委に高橋BSE委員長と熊沢英昭・前農水事務次官らを参考人として招致し報告書の説明を求めたうえ、質疑では「BSE発生を許したのは行政の危機意識の欠如であり、酪農家や消費者に多大な不安を与えた農政の責任は重い」と追及する構えである。友党の神崎武法公明党代表も「農水省の責任はある。きちんとけじめをつけてもらいたい」と記者会見で述べるなど、一時は鎮静しかけた農相更迭論が再燃する気配にある。確かに、英国でBSE汚染が広がった90年から、01年9月に日本国内で発生するまでの約10年間、農水、厚労両省の対応は手ぬるかった。危機意識の欠如、政策決定の不透明さは目に余る。とりわけ、世界保健機関(WHO)がBSEの感染源とされる肉骨粉を法律で禁止すべきだと勧告したのを知りながら、行政指導で済ましたことは「重大な失政」といえなくもない。これが「制・官・行」の癒着なら、ことは重大だ。

 政官癒着の改革

 辻元清美社民党衆院議員の辞職を受けて、前事務所代表の脱税容疑、北方四島支援事業をめぐる疑惑などでそれぞれ自民党を離党した加藤紘一元幹事長、鈴木宗男元北海道沖縄開発庁長官の議員辞職問題が再びクローズアップされている。大物2議員の疑惑の背景には「政・官・業」のもたれ合いがあり、その体質の改革が求められている。自民党の国家戦略本部は“政と官“に関する改革案として、@政党や国会議員への対応は、原則として大臣、副大臣、政務官が担当するA官僚は国会議員から働きかけがあった場合、閣僚らに報告し、指示を受けるB国会議員との接触は文書に記録し保存するC政府提出法案に対する与党の事前承認制を廃止して、政策決定を内閣に一元化する――などを打ち出した。

 許せぬ官僚の世論操作

 これは、官僚の中立性を守るため、政治家と官僚の接触を原則禁止している英国の政治システムをモデルにしたものだ。この改革案で、政と官の関係改善は一定の効果が上がりそうだが、官僚の言いなりになるような閣僚だと、それこそ官僚の独善的な政策決定になりかねない。気懸かりなのは、今回のように外務省が、秘密指定解除までして「官僚に都合の良いメモ」だけを情報公開したり、BSE委員会のように、農水省がマスコミ委員の力を借りて「族議員に行政責任を転嫁」するような作為的な報告書を公表するケースである。政策決定と責任は当然閣僚が引き受けるが、それを補佐し行政事務を執行するのが官僚の役目である。官僚が恣意的に世論を操作し、責任逃れをすることは断じて許されない。

 何より構造改革

 私自身は中央政界での経験が浅く、BSE委員会報告書が示したような「政・官癒着」の風潮は知らないし、また、あってはならないと肝に銘じている。これまでも農政で生産者、消費者の双方を等分に見て政策を推進してきたつもりだが、農業は、BSEはもとより安価な開発輸入など、グローバル化の波に洗われている。時代のテンポに一番立ち後れている産業の分野だ。そこには流通機構の改善、大規模集約化など、何よりも構造改革が迫られている。政と官が一丸となって長年の“失政”を取り戻す時期にきているようだ。