第292回(6月16日)TPPと農林水産対策(1)自民第4Gが提言
 環太平洋経済連携協定(TPP)の18回交渉会合は7月15~25日マレーシアで開かれる。日本は米議会での90日間に及ぶ審議を経て、正式メンバーになれる日が同月23日であるため、次回は実質3日間の参加でしかない。TPPの参加11カ国は既に900ページの素案や協議文書をまとめているが、日本は見ることすらできなかった。参加国は10月の大筋合意と年内の妥結(最終合意)を目指している。後れを取った日本は焦って5月15~24日までペルーの首都リマで開かれた17回会合に外務・農水・経産省の職員を派遣したが、会場のホテルにも入れず、交渉参加国の担当者と会食し、情報を収集するのが関の山だった。それだけに、日本政府は参加の出遅れを取り戻そうと挽回策に懸命だ。中国包囲網を警戒する中国商務省の報道官は5月30日、「TPPに加入する利害と可能性を検討している」と一部中国メディアとの記者会見で語り、TPPに参加の意向を表明した。自民党外交・経済連携本部のTPP対策委員会は3月13日、農業、食品の安心・安全など5グループに分けて提言案を取りまとめている。第4グループは最も打撃を受ける農林水産分野だが、提案では「世界の長期的な食糧需給の逼迫、国内の高齢化進展、地域経済が疲弊する中で、農林水産業を持続的に発展させるには構造改革の加速化、耕作放棄地の解消、食料自給率の向上、集落営農の推進、国際競争力の強化、輸出の飛躍的拡大などが必要」として農水の防御策を挙げている。農水担当の政調副会長として私も積極的に提案作りに参加してきた。

関税撤廃の例外で5品目要求
 TPPは輸入品にかける関税をなくすことが狙いなので、参加すれば自動車、電機などの
輸出関連企業は息を吹き返すが、逆に外国の安い農産物がどっと日本に入ってくる。消費者には朗報だが、農水産業は大きな打撃を受ける。広い農地や牧草地がある大量生産地の米国、豪州などと違って、日本国内で働く農水産業者は約4%でしかなく、国内総生産(GDP)に占める割合も約1・2%と少ない。このため。コメ(144・5万戸)は778%、バター(2・2万戸)360%、砂糖(4万戸)328%、大麦(3・5万戸)256%、小麦(8・6万戸)252%、脱脂粉乳(2・2万戸)218%、牛乳(7・4万戸)38・5%と高率の関税で保護されてきた。コメ、麦、乳製品、砂糖、牛肉の生産額を単純に足すと3兆円を超える。関税がなくなれば輸入品に押されて値段も下がり、生産額が数千億円以上減るのは間違いない。そこで、政府自民党は交渉参加の条件に「聖域なき関税撤廃を前提にする限り反対」を唱え、これら5品目を関税撤廃の例外と要求している。さて、後発参入組の日本がどこまで戦えるか。

自民党TPP対策委員会の第4グループがとりまとめた提言は次の通り
日本農業の現状とあるべき姿
 長期的な世界の食料需給のひっ迫、国内においては、高齢化の進展、地域経済の疲弊等の厳しい状況の中で、農林水産業が、将来にわたって国の礎となり、今後も若者が参入し、持続的に発展できるよう、農林水産業者をはじめ関係者が一丸となって取り組んでいかなければならない。このため、従来の枠にとらわれず、構造改革の加速化と耕作放棄地の解消、食料自給率の向上、集落営農の推進など多様な担い手の育成、国際競争力の強化や輸出の飛躍的拡大、新規需要米の拡大をはじめ需要に応じた生産構造の実現を図り、豊作の喜びが実感でき、消費者・国民にも支持される力強く安定的な農林水産業と多面的機能が発揮できる農山漁村の実現を図る。

TPPでの日本の主張
 地理的制約等から、構造改革や輸出の促進等を最大限行っても、生産性の向上や新規需要の開拓には限界があり、仮に我が国農林水産業が各国との競争にさらされれば、一次産業に壊滅的な打撃を与えることは必至である。そもそも国民の生存権に関わる食料安全保障・多面的機能維持の理念と市場経済の原則とは一線を画すべきである。
我が国は、これまでのEPA/FTA交渉において、多くの重要品目について必要な国境措置等を堅持してきたところであり、TPP交渉参加の是非の判断に当たって、多様な農業の共存を実現するためにも、守り抜くべき国益について、以下のとおり確認する必要がある。米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物等の農林水産物の重要品目が、引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象となること。10年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めない。また、国内の温暖化対策や木材自給率向上のための森林整備に不可欠な合板、製材の関税に最大限配慮すること。

漁業補助金と食の安全安心の基準
 漁業補助金等における国の政策決定権を維持すること。仮に漁業補助金につき規律が設けられるとしても過剰漁獲を招くものに限定し、漁港整備や所得支援など持続的漁業の発展や多面的機能の発揮、更には震災復興に必要なものが確保されるようにすること。
残留農薬・食品添加物の基準、遺伝子組換え食品の表示義務、遺伝子組換え種子の規制、輸入原材料の原産地表示、BSE基準等において、食の安全安心及び食料の安定生産が損なわれないこととし、政府及び農業者もこの実施に努めること。

ミニマムアクセス米
 国内外の情勢の変化にかんがみミニマムアクセス米の対応について検討していくこと。
 なお、仮にTPP交渉に参加した場合であっても、以上の農林水産分野におけるコアとなる主張が受け入れられない場合にはTPP交渉から脱退も辞さないものとすること。