第287回(4月1日)安倍政権の安全保障政策(中)武器3原則緩和
 安倍内閣は3月1日、武器輸出3原則を緩和し、国内で製造した最新鋭ステルス戦闘機F35の部品の輸出を3原則の例外扱いにした。菅義偉官房長官は談話発表で「F35製造への国内企業参画は、わが国 の安全保障に大きく資する」と強調。防衛関連産業は商機拡大に繋がると歓迎している。野田前内閣も「個別判断をやめ、国際共同開発・生産について基準を定め、包括的に例外化する」と輸出3原則の例外拡大を唱えていた。だが、F35は中東で周辺国と軍事的緊張を続けているイスラエルも導入する。その機体に日本の部品が使われれば、武器輸出3原則の基本理念とした「国際紛争の助長回避」と矛盾しかねないと、共産、社民など平和政党は基本理念の変更に強く反対している。武器輸出3原則は「①共産圏②国連決議で禁止されている国③国際紛争の当事国やおそれのある国――に輸出は認めない」と言うもので、1967年に佐藤内閣で定められた。三木内閣の76年には「国際紛争の助長を避けるため慎重に対処。3原則対象地域以外へも輸出を慎む」と拡大された。

小泉内閣以来徐々に例外化拡大
 しかし、中曽根内閣の83年に「同盟国・米国への武器技術供与を認める」と例外化が始められ、小泉内閣は2004年「米国と共同でのミサイル防衛(MD)技術開発・生産で認める」「MD以外の米国との共同開発・生産やテロ・海賊対策支援では戸別判断」と例外を拡大。野田内閣でも「開発・生産は日本の安全保障に資する武器で、安全保障を協力する国と」と例外拡大路線が続いた。さらに、安倍首相は「最新鋭戦闘機F35の国際共同生産に参加し、国内製造部品の輸出を例外化すれば日本の防衛生産育成に資し、米軍への供給も可能で日米安保体制に寄与する」と述べ、大幅な武器輸出の緩和に踏み切った。米ロッキード・マーチン社中心に製造するF35は米軍の最新鋭ステルス戦闘機。米国を中心に9カ国が共同開発中で日本はエンジンやレーダーの部品を製造する。自衛隊に導入を機に共同生産に乗り出せば首相訪米で掲げた日米同盟強化の象徴になる。安倍内閣が3月1日に発表した武器輸出3原則の例外を認める官房長官談話では、過去の例外を認める際に盛り込まれた「国際紛争等の助長回避」との文言には触れず第三国への移転の管理も米国側に委ねる形になり、基本理念も「国際紛争の助長回避」から「国連憲章の遵守」に変更された。

防衛産業は例外拡大を大歓迎
 これは、最初に対米武器技術供与で3原則が緩和された当時の中曽根康弘首相が「国連憲章の精神を堅持したい」と述べた国会答弁を参考にしたもの。菅官房長官は記者会見で、「国際社会の平和と安定のため取り組まなければならない紛争がある。テロとの戦いをはじめ、紛争の平和的解決へ国連憲章を遵守することこそ平和国家としての基本理念だ」と語った。日本企業では三菱重工がF35の機体、IHIがエンジン、三菱電機がレーダーなど電子機器部品の生産や組み立てをそれぞれ担当し、3原則例外の拡大を大歓迎している。民間旅客機の生産は生産コストを下げるため日本企業の製造比率が部品で35%に及ぶなど国際分業が常識だが、3原則で国内向けに限定されていた防衛需要は減少するばかりだった。そこで自民党は昨年の総選挙政策集で「国内の防衛産業を維持するため、日米共同生産を推進する」と明記、首相も2月22日の日米首脳会談で「米国とともに責任を果たす」と確約していた。これに対し野党は「F35の日本性部品の管理を米国に委ねることはどこへ輸出されるか検証できない」とし、武器輸出3原則の形骸化が加速すると批判している。

仏・露も対中武器輸出を拡大
 こうした中、フランスの防衛産業が中国に最新鋭のヘリコプター着陸装置を売却。日本政府は18日、同装置が沖縄県・尖閣諸島周辺の領海に侵入する中国公船に装備されると見て、仏政府に懸念を表明したが、仏政府は「対中武器禁輸の対象外の装置」との立場である。また、中国メディアは習主席が訪露した直後の25日、「ロシアから戦闘機24機と潜水艦4隻を購入し、中露間では過去10年間のうち最大規模の契約をした」と報じた。安倍首相は月末の訪露で、対中武器輸出を新たな懸念材料として協議を仕掛けるだろう。
                            (以下次号)