第281回(1月1日)国交部会長の役割(2)国土強靭化基本法案成立へ
 安倍政権は先の臨時国会に提出し廃案になった「国土強靭化基本法案」など国土再建3法案を1月末開幕の通常国会で速やかに成立させる方針だ。これは東日本大震災の教訓を生かし、高い確率で発生が予想される首都直下地震や南海トラフの巨大地震に備え、事前防災・減災など強くしなやかな「国土強靭化」を実現させるもの。10年間に200兆円の公共投資を想定している。「コンクリートから人へ」をマニフェスト(公約)に掲げた民主党は「バラマキ投資の先祖返り」と批判した。だが、消費増税を巡る自公民3党の修正合意では「防災や成長分野などに重点を置いた経済政策を検討する」が法案に追加されており、安倍首相は消費増税の前提となる経済活性化のためにも早期決着を図る構えである。公明党も10年間で100兆円投資の「防災・減災ニューディール推進基本法案」をまとめた。私は今回の党役員人事で農林水産を総括担当する政調副会長に就任したが、公共施設の老朽化もあり、前任の国土交通部会長として、強靭化法の早期成立に協力していく所存である。

防災・減災を3年間集中展開
「国土強靭化基本法案」は党の国土強靭化総合調査会(二階俊博会長)がまとめて昨年6月、臨時国会に提出し廃案になったが、その後も約40人の識者の意見を聴いている。今後予想される首都直下地震や東海地震と連動性が指摘される東南海・南海地震等に備え「南海トラフ巨大地震対策特別措置法案」「首都直下地震対策特別措置法案」の関連2法案と合わせ今月末召集の通常国会に提出する。事前防災・減災の考え方に基づくこれら国土復興3法案を速やかに成立させ、今後10年間程度に避難路・津波避難施設や救援体制の整備を強力に推進し、特に今後3年間は集中的な取り組みを展開する。加えて、首都機能の維持・強化と分散を図り、日本海国土軸など多軸型国土の形成と物流ネットワークの複線化を進め、国土全体の強靭化を図る。さらに、国土強靭化の取り組みを地域経済の中長期的発展の呼び水とし、雇用を創出に結び付ける。昨年12月2日、山梨県・大月市の中央自動車道で起きたトンネル崩落事故で9人が死亡、首都高の羽田トンネルでも天井板吊り下げの金具が 破断しているのが2か所も見つかった。今後急速に老朽化する橋梁等の道路施設、港湾、河川管理施設、下水道等を計画的に更新し、安全と安心の確保を促進して国民の生命と財産を守らなければならない。地方出先機関の広域災害対応力の一層の強化を図るとともに、国と地方のあり方と道州制の議論を整理することも重要だ。

災害に強く国民に優しい街作り
 さらに、東日本大震災の教訓を踏まえ、大規模地震災害に備えるため、公共交通インフラをはじめ、住宅・建築物の耐震化や密集市街地の解消、広域的な基幹ネットワークの整備・複線化、津波・高潮対策のための避難路・津波避難施設の整備を進める。近年頻発するゲリラ豪雨等の集中豪雨に対応するため、河川堤防の整備やダムを活用した治水機能の強化、下水道による都市の浸水対策を緊急的に推進し、特に事業中のダムやスーパー堤防は地元の意見を踏まえながら建設の促進を図る。平年を大きく超える豪雪に対しては市町村に除雪費を臨時に補助する制度を創設するとともに、地域の孤立化を防ぐ緊急防災公共事業を推進する。また、基幹的広域防災拠点の整備及び運用体制の構築や地震監視機能の強化、緊急地震速報や土砂災害警戒情報の提供など、災害に強い街作りを推進する。さらに、自転車専用道の整備など自転車利用者や歩行者の安全な環境を確保、全ての国民に優しく、歩いて暮らせるコンパクトシティー作りを進める考えである。

老朽化した上下水道・橋等改修
 事前防災制度確立では①地震・津波が来る前に街ぐるみで高台移転等の必要地域に対し、移転補償費を含め段階的な街作りが可能な支援制度・税制を創設②人口が密集する三大都市圏や大都市の機能(政府機能含む)を守るため通信ネットワークの確保、帰宅困難者対策、木造住宅密集地域の不燃化・耐震化、コンビナート対策、液状化対策、老朽化した上下水道対策を進める③ゲリラ豪雨に備え河川を改修し、地下調節池と排水施設の効果的な整備を進める④八ッ場ダムを完成させ、沿線地域の洪水被害を防ぎ1都5県の水需要に対応⑤高速道路のミッシングリンクの解消や4車線化など国の基幹ネットワークを含む全国の道路網の整備を促進⑥高速道路料金は、受益者負担の原則を堅持し、国民の利便性や高速道路の有効活用に資する割引制度を維持・拡充し、民営化された高速道路会社のあり方を見直す⑦その整備手法も日本のグランドデザインに鑑み国民に分かりやすく明示⑧巨大津波時に防潮機能を発揮する緊急避難路、復旧・復興支援物資などを輸送する代替路になる「命の道」や生活道路・通学路の安全対策など、地域生活に不可欠な道路は、B/C(費用便益比)にとらわれず積極的に整備を進める――などキメ細かな施策を挙げた。

通信・医療等 重要インフラ防御
 東日本大震災や原発事故から得た教訓は、行政、通信インフラに加え、医療、道路、航空、港湾、電力、ガス、水道等の社会の重要インフラを防御する事の重要性だ。しかし、現在は、各々のインフラが別々の事業者によって運営され、災害時の対策もバラバラなのが現実。被災地の拠点病院では、電力だけが復旧しても機能回復が不完全で、通信網、上下水道や交通網、緊急医療の仕組みが復旧しなければ意味がない。そのためには、災害復旧の優先順位や各インフラ相互依存性の分析を情報として共有しておく必要がある。特に首都圏直下型震災の脅威が迫る現状では、積極的に予算投入をしなければならない。携帯電話や無線アクセスなどの新規電波利用ニーズの増大に伴い電波の逼迫が深刻化している。防災の観点から、最も身近な社会インフラとなった携帯電話の大容量基幹通信網の整備が必要だ。首都圏に集中している政府情報システムを分散配置していく。東日本大震災では房総半島に集中している海底ケーブルの多くが被害を受けた。海外との通信網が途絶する恐れがあるので、他地域への増設を早急に手当し、離島と都市部との格差も解消する。

増税に4~6月経済成長率重要
 「デフレ脱却、円高是正で経済を再生させる。流した汗が報われるまっとうな経済を取り戻す」――安倍総裁は総選挙で経済再生の決意を表明、大型補正予算編成を訴えた。甘利明前政調会長は「財務省は4兆~5兆円の補正を言っているが全然ダメ」と述べ、公明党も10兆円規模の補正を主張している。自公両党は、消費税率を予定通り14年4月から8%に引き上げるには、13年4~6月期の経済成長率などが重要な判断材料になるため、景気を上向きにさせるべきだと考えている。3党合意では「成長戦略、事前防災・減災等に資する分野に資金を重点的に配分する」との条文が追加された。自公両党は、消費税率の5%から10%への引き上げで出来る財源は13・5兆円。新規事業に充てる2・7兆円を除く10・8兆円は現状の社会保障制度の維持に使われる。自民党は2%物価上昇のインフレ目標を明示し、現在は厳格な独立を定めている日銀法の改正も視野に、政府・日銀の連携を強める方針だ。

国民の命守る防災対策を実施
 これには国交相当時、八ツ場ダム建設を中止を主張した民主党の前原誠司政調会長が7月25日の講演で200兆円投資に対し「公共事業をばらまくという先祖返りだけは絶対に認めない」と批判した。自民党は「200兆円の数字が独り歩きしているが、党として正式に決定した事実はなく、決して200兆円の予算ありきではない。財源は国費だけでなく民間資金や地方負担を含めたものだ。綿密な国土強靭化計画を立て、厳選された事業を積み上げて総額を決める」と批判を交わし、国民の“命を守り抜く”防災対策を実施する姿勢を強調した。国会では200兆円を巡る攻防が予想されるが、前国交部会長として法案成立に協力したい。