第279回〈11月16日〉国交部会長の役割(1) 文化遺産登録の現状
 先号のHPで報告した通り、私は安倍晋三総裁の新体制下で、党の国土交通部会長に就任、週一回のシャドーキャビネット〈影の内閣〉会議に出席、衆院選公約〈マニフェスト〉作りに励んでいる。国交省は橋本行革で建設、運輸両省が合併して行政の窓口が広く、港湾・道路・住宅・鉄道などインフラ整備と海上保安庁、観光庁まで守備範囲は広大。喫緊の課題は尖閣諸島警備の海保巡視船艇をどう増強するかだ。中国が海洋・漁業監視船を増やし日本の領海侵入を続けているのに対し、海保の今年度予算は海自イージス艦1隻分の約1700億円でしかない。領海と排他的経済水域(EEZ)を合わせて世界6位の広大な領海をどう守って行くか。もう1つは6月に自民党が提案した「国土強靭化基本法案」をいかに実現するかだ。10年間に200兆円を投資する壮大な計画で、民主党の「コンクリートから人へ」の政策を大転換する狙いだが、与党は「ばら撒き政治の復活だ」と反論している。我が選挙区長崎では新幹線整備の3ルートに指定され、観光とタイアップで整備が進んでいる。前回は長崎の世界文化遺産に触れたが、紙面の都合で割愛した。喫緊の課題は先送りし、今回は文化遺産を詳しく取り上げてみた。

9件の内、長崎の教会群が有力
 読売は9月5日朝刊に「長崎の教会群が有力」との特集記事を掲載した。その要約を元に次回の世界遺産を展望してみたい。ユネスコ〈国連教育・科学・文化機関〉による2014年の世界遺産審議に向けて文化庁は8月、「富岡製糸場と絹産業遺産群」〈群馬県〉の政府推薦を決めた。「鶴岡八幡宮など武家の古都・鎌倉」〈神奈川〉、「富士山域」〈静岡・山梨〉は推薦済みで、「平泉」〈岩手〉は追加登録を目指すため、再掲載が決まった。来年以降の暫定リスト掲載の候補は①「彦根城」〈滋賀〉②「飛鳥・藤原の宮都と関連資産群」〈奈良〉③長崎の教会群とキリスト教関連遺産」〈長崎、熊本〉④「国立西洋美術館」〈東京〉⑤「三内丸山遺蹟など北海道・北東北を中心とした縄文遺跡郡」〈北海道、青森など4道県〉⑥「八幡製鉄所など九州・山口の近代化産業遺産群」〈福岡・山口など8県〉⑦「宗像神社・沖ノ島と関連遺産群」(福岡)⑧「相川金銀山など金を中心とする佐渡鉱山の遺産群」(新潟)⑨「仁徳天皇陵古墳など百舌鳥・古市古墳群」〈大阪〉――の9件を数える。 

16~19世紀の信仰物語る遺産
 世界遺産の手続きは、まず推薦候補を記載した「暫定リスト」を世界遺産委員会に提出する。政府はその候補のうち準備が整った中から推薦を決定し、9月末までに暫定版推薦書を提出。その翌々年の夏、同委員会で登録の可否が審議される。来年以降の最有力候補は「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」だ。南蛮船来航から禁教下での弾圧など16~19世紀の日本におけるキリスト教信仰を物語る文化遺産で、大浦天主堂〈長崎市〉など13箇所で構成される。7月の文化審議会世界文化遺産特別委員会でも「富岡」と同時に審議対象とされた。しかし、保存管理計画が一部策定中のうえ、「16世紀と19世紀の試算は時代も性格も異なり、位置づけが分かりにくい」と指摘され、推薦は見送られた。長崎県世界登録推進室は「各資産のつながりの説明を強化する」とし、来年の推薦決定を目指す。来年の推薦審議では、文化遺産の中から「稼動している産業遺産」を分離し、文科審議会とは別の組織で審議される,と読売はいう。

富岡以降の新推薦は遅れるか
 その恩恵を被ると見られるのが「九州・山口の近代化産業遺産群」だ。八幡製鉄所など28箇所で構成され、幕末以降の近代工業国家と日本の台頭を示すからだ。政府が1992年に作成した初の暫定リスト以降、唯一残る「彦根城」〈滋賀〉も、同じ江戸時代の城郭で93年に世界遺産となった「姫路城」(兵庫)との差別化など根本的な課題を残したまま。ユネスコ世界遺産委員会が2014年から文化遺産の審議を1国1件に絞る方針であることも、国内の推薦審議に大きな影響を与えている。13年に「武家の古都・鎌倉」、「富士山」の2件が審議されることになっているが、少なくとも1件が14年の再審議になった場合、「富岡」を含めて再びどれを審議してもらうか選ばなければない。そうなると「富岡」以降の「長崎」など新たな推薦はさらに遅れる可能性もある、と読売は指摘している。一方、ユネスコの予算不足から審議件数はさらに減る可能性がある。6月のユネスコ委員会では、採択こそされなかったが、13年の審議件数の上限を45件から23件に減らす意見も出たという。

地域高規格道路の建設も促進
 読売が折角、「長崎の教会群」が有力と名指ししてくれても、このように文化遺産の推薦には時間がかかり、登録までの道のりは遠い。幸いに五島市は早期登録を目指し、早々と観光目的の電気自動車(EV)の普及に乗り出した。環境省は8月末、その電源として五島列島・椛島で「浮体式洋上風力発電」の実験に着手した。障害物のない洋上は強い風が吹き、発電効率が高いので、私は長崎の全県下で普及を図り、長期的には脱原発を推進したいと考えている。また、整備新幹線ルートは着工したが、長崎県は離島・半島を多く抱え、山間地が多く道路整備が著しく立ち遅れている。観光の振興、企業立地の促進、物流の効率化などを支援する「地域高規格道路」など広域幹線道路の整備が必要。今後は海上保安庁の増強策、「国土強靭化基本法案」など国土交通行政の問題点について、本欄で毎回、取り上げて行きたいと考えている。