第278回(11月1日)エネルギー戦略が争点(下) 再生可能エネで孫正義氏怪気炎
 野田首相は10月17日に臨時閣議を開き、欧州の経済危機などで国内景気悪化の恐れが強まったとして、遅くとも11月中をメドに緊急経済対策を講じるよう指示した。対策は①日本再生戦略重点三分野〈エネルギー・環境、健康、農林漁業〉の前倒し実施②東日本大震災の復興・防災③規制改革や民間投融資の促進――が柱で財源は12年度予算の「経済危機対応・地域活性化予備費」の9100億円を充てる。これでエネルギー分野が活気付いてきた。読売によると、ソフトバンクの孫正義社長は9月6日、「自然エネルギーは最も安い発電施設だ。異論があるヤツは言ってくれ。理論的に跳ね返してやる」と都内の「再生可能エネ国際シンポジュウム」で講演し怪気炎をあげた。子会社のSBエナジーが日本各地で大規模太陽光発電所(メガソーラー)の建設を進めているからだ。SBエナジーは18日、徳島県小松島市の3・5万平方キロの埋立地で、メガソーラーの建設に着手、来年1月に稼動し、年間で一般家庭884世帯分の電気を賄う327万キロワット時を発電する計画。

固定買い取り制度で電気代高騰
借地料は1平方メートル当たり520円が県に支払われるが、5社による争奪戦の結果、地代は3倍以上に跳ね上がったという。プラント大手の日揮が大分市でメガソーラー事業を手掛けたほか、京セラ、IHIなど7社が出資するメガソーラーも鹿児島市で立ち上がり、それぞれ数十億~数百億円規模の金融マネーが投下されている。法制化で昨年5月に成立し、7月1日から始まった「固定価格買い取り制度」は、太陽光、風力、地熱などの電力のすべてを、電力会社が一定期間、同じ価格で買い取る制度。買い取った費用は電気料金に上乗せされる。制度開始から3年間は再生可能エネルギーの普及を促すため、参入事業者が「適正な利潤」を得られるよう高めの買い取り価格にしている。半年毎に経産省に提出する発電コストに基づき毎年見直されるが、料金は10年程度、据え置かれそうだ。同制度のドイツでは再生可能エネ普及のため消費者が負担する賦課金が来年から,現在の年約900ユーロ〈約9万1800円〉から約100ユーロ(約10万2000円)に高騰する。

五島観光目玉にEV、風力発電
 我が故郷・五島列島の五島市は「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」で世界文化遺産への登録を目指しているが、観光の目玉に電気自動車(EV)の普及を進めている。2010年度から島内に計80台のEVを導入し、主にレンタカー会社に配備した。1回の充電で走れる距離は100キロ程度だが、島内7カ所に計15基の急速充電器を導入。市商工振興課は、登録後の世界遺産を巡りながらEVも体験できる独自の観光を展開する考えだ。その電源になるのが洋上風力発電。環境省は8月29日から、長崎県の五島列島・椛島に設置した「浮体式洋上風力発電」の実証実験を開始した。読売によると、同島から2キロ離れた海面から突き出た風車のタワー部は10階建てのビルに相当する高さ約35メートル、空洞なので浮力は十分にある。水中に隠れた底部(水面下約37メートル)は約130トンのコンクリートを入れてバランスを取り、水深約100メートルの水中に浮いており潮に流されないよう3本の係留チェーンで海底に固定されている。8月末の五島を襲った台風15号でも、「傾いたのは10度程度で、物理的損害もない」(建設の戸田建設)と太鼓判を押している。

20年に原発33基分洋上発電
 羽根の直径が22メートルの実証実験は出力100キロワットに留まるが、同省は来春に2000キロワットの実証機を投入、充電高率や環境への影響などを調べ、16年度には実用化技術を確立する方針だ。洋上発電は住民の騒音苦情もなく、障害物のない海は強い風が吹き、発電効率は陸上の1・5倍以上。日本は排他的経済水域が世界6位で、広大な海に囲まれた日本には最も適した発電だ。浮体式の開発はノルウェー、ポルトガルなどが手掛けているが少数で、世界的にも実用化されていない。環境省は洋上発電で20年までに原発33基分に相当する3300万キロワット、少なく見積もっても3000万キロワットの開発が可能と試算しており、技術を確立すれば日本の新産業に成長する可能性がある。経済産業省も福島県沖で浮体式の実証実験を行う方針で、将来は100基程度に増やす考えだ。ただし、日本近海は急に深くなるため、潜在力を発揮するには水深200メートルまで設置できる浮体式の開発が不可欠だ。また、浮体式の発電は陸上の3倍程度のコスト高が予想される。政府が7月に始めた再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度で、風力発電の価格は1キロワット時当たり23・1円だが、この制度には浮体式が想定されておらず、高値で買い取る仕組みを整えるなら、技術開発は進むだろうが、それだけコストに跳ね返る。

発電・送電・小売の分社化提言
 公正取引委員会は9月21日、既存電力会社の発電・送電・小売の各部門を分離すべきだとの電力改革案を提言した。工場などに電気を売る「新電力」事業者が、発電部門から電気を安く仕入れることができるようにし、電力小売の競争を促す狙いがある。公取委は、工場などに販売される電力量に占める新電力の割合が約3・5%に留まっている点について、「既存電力が競合する新電力に電気を売ることを望まず、有効な競争が行われていないため、新電力への販売価格が高くなっている」点を問題視し、「電力会社が小売り部門を分社化する改善策が必要」と指摘した。分社後に発電会社が新電力を不利な条件で扱った場合は「独禁法違反」に問う考えを示している。日本のように既存電力が3事業を独占しているのと違って、ドイツは発電・送電・小売が分社化しており、風力発電の1千基普及を目指すなど自然エネルギーの開発が活発。新電力の切磋琢磨で料金値下げ競争が進んでいる。臨時国会では、各国の取り組みを踏まえ、電力の分社化など活発な論議が展開されよう。