第274回(9月1日)領土問題で露中韓連携 政府の外交無策突く
 日米関係は、米軍の新型輸送機MV22オスプレイの沖縄配備を巡りぎくしゃくし、日米同盟が揺らいでいるが、内政もまた、消費増税の与野党攻防などで混迷している。その隙を突いて、露・中・韓3国が連携したかのように、領土・主権問題で揺さぶりをかけてきた。ロシアのメドベージェフ首相が7月3日、国後島を訪問し北方領土問題で強硬姿勢を示したのを皮切りに、韓国の李明博大統領が8月10日、竹島を日帰り上陸し、別件では天皇陛下に謝罪を要求。香港の活動家14人が同15日、尖閣諸島の魚釣島に不法上陸、強制送還されると中国各地で反日デモが起きた。「解放軍は軍艦を出して島を占拠せよ」、「琉球列島も取り返せ」など過激発言も出て、北東アジアの情勢は緊迫の度を深めている。いずれも野田政権の外交対応の未熟さによる。一方、政府は同29日、北朝鮮との政府間協議(課長級)を北京で開いた。これは日朝赤十字が接触した結果を踏まえ、6か国協議の行き詰りに焦る北朝鮮が、日本からの食糧援助を引き出そうと遺骨返還をダシに仕掛けてきた。日本は拉致問題の解決を強く主張、金正恩体制の出方を探ろうとしている。協議が韓国の頭越しに再開されたため、李大統領が不快感を示し、激しい言動を続けたものだ。

再選狙い竹島上陸と謝罪要求か
 「〈天皇陛下が〉韓国を訪問したいならば、独立運動をして亡くなられた方々のもとを訪ね、心から謝罪すればいい」――韓国の李明博大統領は14日、忠清北道の大学で天皇を「日王」などと呼んでこう発言。翌日の終戦記念日〈韓国で言う光復節〉にはソウルで演説し、従軍慰安婦問題について日本政府に「責任ある措置を求める」と要求した。李氏は10日、日本政府の中止要請を無視し、領有権を巡り対立が続く島根県・竹島に日帰り上陸を強行するなど日増しに対日強硬姿勢をエスカレートさせている。これは、実兄の汚職などで支持率が低下し、12月の韓国大統領選では与党・セヌリ党の朴槿恵・元代表〈朴正熙・元大統領の長女)に敗北しそうな形勢にあることなどが背景にある。李大統領は政権末期の求心力低下に歯止めをかけるため、あえて歴史問題の言動で国民のナショナリズムをあおり、再選しようと懸命になっているようだ。しかし、天皇の訪韓は歴代韓国大統領が望み、李大統領も平成20年に来日した際、直接陛下に要請したもので、陛下から希望したことは1度もない。従軍慰安婦問題は65年に佐藤栄作政権が日韓基本条約を締結した際、「完全かつ最終的に解決」で合意、人道的措置も行って決着済みの問題である。

李承晩ライン引き竹島実効支配
 それを野田首相が李大統領の賠償要請に対し、「知恵を絞っていきたい」などと不用意発言をしたため、蒸し返されていた。竹島も1905年に島根県に編入された日本固有の領土。それを李承晩大統領が1952年、勝手に李ラインを引いてその中に取り込み、実効支配を続けているものだ。要塞や観光地化が進み、19日には李大統領直筆の石碑の除幕式も行われた。首相は10日夜、官邸での記者会見で、「竹島が歴史的にも国際法上も我が国の固有の領土であると言う立場と相容れず、到底受け入れることが出来ない。極めて遺憾だ」と批判して李大統領に親書を送り、対抗措置として日本の主張を国際社会にしっかり知らせるため、国際司法裁判所に提訴した。国際司法裁は当事者双方の同意がないと裁判が成立しない仕組みだが、韓国は「領土問題は存在しないし、一顧の価値もない」と提訴を拒否、逆に「盗人猛々しい」などと日本を批判、首相の親書を郵便で送り返してきた。

未来志向と裏腹に歴史問題固執
 国家元首が紛争地に乗り込み、日本の象徴天皇に「謝罪しろ」と要求し侮辱するなどは言語道断。竹島を強奪しながら倒錯した「盗人発言」をしたとは呆れてモノが言えない。中年女性が「ヨン様」ブームに乗って韓流スターを追いかけ回したり、五輪選手の銀座パレードに50万人も集まるぐらいなら、中韓両国へ抗議行動を起こしたらどうか。未来志向の日韓関係と戦略的協力体制を謳いながら、過去の歴史問題に偏った言動を続ける李氏。韓国民族意識の底流には植民地時代の「恨」の一字しかないようだ。政府は8月末、東南ア諸国連合(ASEAN)経済閣僚会合の際に行う日韓2国間会談など「日韓政府間対話」の内閣府、財務、経産、総務4府省の協議を延期したが、9月初旬にロシアのウラジオストクで開催するアジア太平洋経済協力会議〈APEC〉の際も閣僚会議は見合す方針。25日の訪韓を取りやめた安住淳財務相は、金融危機時に通貨を融通し合う日韓の通貨交換(スワップ)協定について、融資枠の縮小や10月の協定延長を見合わす考えを示している。

甘い行政処分が再上陸を助長
 竹島騒動のさなかの15日夕、尖閣諸島〈沖縄県石垣市〉の魚釣島西側の岩礁に、中国の領有権を主張する香港の民間反日団体「保釣行動委員会」の抗議船「啓豊2号」が接岸、乗船者14人中7人が上陸、中国と台湾の国旗を振り立てた。沖縄県警はうち5人を入管難民法違反〈不法上陸〉容疑で逮捕、さらに海上保安庁の巡視船が抗議船を挟み込んで補足、船に戻った2人を含む乗船者9人を同法違反〈不法入国〉現行犯で逮捕し、2日後に5人は民間航空機で、9人は抗議船に乗せたまま、14人全員を強制送還した。政府は今回の不法上陸をあらかじめ想定、荒海での上陸排除に死傷者を出さない配慮から、2004年3月に小泉純一郎首相が上陸者を逮捕した時に習い、入管難民法を適用して直ちに強制退去措置を取った。巡視船の放水を使った退去勧告に対し、抗議船はレンガを投げて応戦、巡視船に傷がついたが、公務員執行妨害や器物損壊などの刑事事件に問うことはしないで、単なる行政処分の強制退去とした。このため、国会では自公両党などが証拠ビデオの提出を求め、厳しく追及した。先に逮捕された5人は連行途中、「我が国固有の領土だ」と喚き散らし、強制送還後は「英雄的歓迎」を受け、凱旋将軍気取りだったが、わずか2日間で帰国できることに味を占め、「10月に再度上陸する」と広言。秋の漁期には大漁船団・監視船団を組んで、尖閣を襲う計画が早くも取り沙汰されている。

領土守る議連が尖閣洋上慰霊祭
 「日本の領土を守るため行動する議員連盟」(会長・山谷えり子自民党参院議員)の私を含む超党派議員8人と都議、県議ら約50人、全体で約150人が21隻のチャーター漁船に分乗、18.19の2日間、尖閣諸島の海域で、太平洋戦争末期の疎開船遭難事件の「洋上慰霊祭」を挙行した。その際、香港活動家の不法上陸に怒った東京都議や兵庫県議ら10人が海に飛び込み、約20メートル泳いで魚釣島に上陸、日の丸を掲げたが、これに抗議する計数万人規模の反日デモが北京、上海,広州など中国の25都市で起き、一部は暴徒化して、日本料理店や日本車のガラスを割り、「日本製品をボイコットせよ」、「日本人は中国から出て行け」、「琉球諸島を返せ」と暴徒は口々に叫んだ。特に「日本人右翼の挑戦だ」とし「人民解放軍は軍艦を出して釣魚島を防衛すべきだ」「1戦を交えてでも奪い返すべきだ」など過激発言も出て、中国政府の「弱腰外交」を批判。丹羽宇一郎中国大使の車の日の丸国旗まで奪われた。読売によると深圳など沿岸工業都市では低賃金、劣悪な労働条件の出稼ぎ労働者が多く、内陸都市でも就職難が深刻で経済格差が高まった。世界第2の経済大国化で若者に「大国意識」が強くなり今後も政府批判の高まる事態が予想される。

鄧小平棚上げ論から核心的利益へ
 そこで、胡錦濤政権はデモが反政府運動に転嫁する事態を最も警戒、ガス抜きも兼ねて、デモを一定程度許容した節がある。中国では秋の第18回共産党大会で指導部が交代、胡錦濤氏の後を習近平副主席が継いで国家主席に就任するが、習氏は対日強硬路線だった江沢民前国家主席の“上海閥”系統で対日政策に江氏の影響が出る可能性が強まっている。9月29日に日中国交正常化記念行事があるが、40年前の交渉では「この(尖閣)問題に触れないこととする」で合意した。だが福田内閣の78年、鄧小平副首相が日中平和友好条約の批准書交換で来日した際、プレスセンタ-の記者会見で「一時(10年程度)棚上げしても構わない」と答えた。日本政府は直ちに「単なる放言」と無視したが、棚上げ発言が独り歩きし懸案事項であるかの印象を与えてきた。さらに2年前の海保巡視船と中国漁船衝突事件以降、中国は海洋資源豊富な尖閣諸島を南沙諸島やチベットと同様、中国が絶対に守るべき「核心的利益」に格上げした。また、中国政府内に発言力を持つ香港の富豪が「保釣行動委員会」のスポンサーで抗議船を提供、香港・台湾双方を支援していることも、中国各地で反日デモが激化した背景にあり、尖閣上陸作戦はエスカレートする気配にある。中国は「釣魚(尖閣)諸島は中国台湾省に属する島々で明代(1368年)から中国の領土だった」と明の属国扱いにし、琉球(沖縄)まで領土を広げようとしているから恐ろしい。

尖閣に漁業基地、離島防衛拠点を
 それもこれも、①日米中を2等辺3角形に位置づけて日米同盟を軽視、基地移設問題でつまずいた鳩山政権②2年前の中国漁船衝突事件を那覇地検の判断にゆだね、船長を釈放した菅政権③米海兵隊普天間基地移設やオスプレイの処置に手を焼く野田政権――など歴代民主党政権の外交無策に露中韓3国が付け入り、領土・主権問題で権益を強化しようとするものだ。海保庁強化関連法は月末にようやく成立したが、かくなる上は自衛隊の出動を容易にする警備体制の強化や領域警備法を制定しなければ、尖閣諸島で武力衝突が起き北東アジアの安全はもとより日米韓協力体制も一瞬にして崩壊しよう。我々が見た尖閣諸島の久場島は緑豊かで農業にも適し、ヘリポートを設置すれば海兵隊輸送のオスプレイも瞬時に発着できて離島防衛に役立つ。北小島と南小島の間の岩礁を破砕し岩石で両島を堤防でつなぎ、その両側に船だまりをを作れば、悪天候の非難港に活用できる。また、各漁協組の出先出先事務所を魚釣島に設置、沖縄県、石垣市などの行政事務を委託し、その経費を支出すれば、事務所や派遣員の費用も賄える。さらに、漁村や水産加工場も作り、太陽光パネルや風力・潮力など再生可能エネルギーで発電し、灯台にも電力を供給すれば、立派な漁業基地になる。国会では歴史上の汚点を残し、国家観、外交基本姿勢の欠落した野田政権を徹底追及する傍ら、尖閣の未来像を示して行きたいと考えている。