第273回(8月16日)平均家庭年7万円超アップ 消費増税負担
 消費増税を柱とする社会保障・税一体改革関連法案は8月10日に成立した。現在5%の消費税率は2014年4月に8%、15年10月には10%に上がる。税率が8%の場合、夫婦と子ども2人世帯の年間負担増は、年収300万~350万円で約5万2600円、500万~550万円で約7万2900円、1000万~1250万円で約11万5600円となる。低所得者には「逆進性」が強い消費税だ。政府は8%の際には「簡素給付措置」、10%の際は「軽減税率」を導入する。しかし、消費税率をアップしても国の借金体質は解消されない。国債発行残高は12年度末に708兆円に達する見込みで、同年度の税収見込みの約17倍。国民1人当たり約554万円の借金を背負った形だ。しかも、日本の政府債務残高は国内総生産(GDP)対比で約230%と先進国では最悪。財政危機に揺れるギリシャの約161%を大きく上回る。さらに、10%に引き上げる時期が、当初計画より半年遅れたため、国と地方の「基礎的財政収支」(プライマリーバランス)の半減目標は約16・6兆円も不足し、これを全額消費税で賄えば、税率を16%程度まで上げる必要が出てくる。次期総選挙の争点は消費増税だが、問題点を総ざらいしてみた。

逆進性対策に「軽減税率」採用へ
 上記を見ても、消費税は高所得者ほど税率が高くなる累進性の所得税と違って、低所得者の負担が相対的に重い逆進性だ。このため、政府は1989年(竹下内閣)の税導入時と97年(橋本内閣)の税率5%への引き上げ時に、低所得者などに原則1万円を支給した。今回も5%になる際、低所得者に「簡素な給付措置」として現金を配る方針で、来年末の14年度予算案編成時に配布対象・金額・給付期間などを固める見通しだ。さらに、本格的な所得税の減免や給付つき税額控除、軽減税率も検討する。しかし、所得税減免、給付付き税額控除などを採用する場合は、国が所得を正確に把握する必要があるため、国民に番号を割り振る「共通番号(マイナンバー)制度」の導入と定着が前提となる。そこで、公明党が強く主張した「食料品や新聞などの『軽減税率』を8%の時点から前倒しで採用する」ことも検討している。これは消費税率が20%程度の高さに達した欧州の多くの国で採用されているが、何を軽減の対象とするかの「線引き」やインボイスなど商店での扱いが複雑で成案を得るのが難しい。所得税の最高税率は現在、「課税所得1800万円超で49%」だが13年度の税制改正で、もう1段階の上限を設けて「5000万円超で45%」にする方針。増税による買い控えを避けるため住宅、自動車購入の特例も設ける。

国民会議で“棚上げ”民主公約討議
 年金では、パートなどへの厚生年金の適用を拡大し、16年10月から収入月額8.8万円以上などの用件を充たせば加入が可能になる。また、年金を受給するための最低加入期間は、25年から10年間に短縮し、15年10月から実施する。被用者年金の一元化は、公務員加入の共済年金を15年10月から会社員の厚生年金に統合、官民格差を是正する方向で検討中。低所得者への基礎年金増額も、15年10月に「福祉的な給付措置」を導入、保険料の納付期間に応じ最大月5000円の給付を検討している。このほか、子育て支援では、「認定こども園」の現行制度を拡充し、認可制度や補助金手続きを簡略化した。自民党が提案した「社会保障制度改革国民会議」は民間委員ら29人以内で構成、1年以内に将来の年金制度などを議論することになった。特に同会議では、民主党が8年前に打ち出した月7万円の最低保障年金制度創設や現行の後期高齢者医療制度の廃止などマニフェスト(政権公約)に掲げながら、3党合意で“棚上げ”にされた懸案事項を討議する。

財政再建、経済成長を同時進行
 小沢一郎元代表らのグループは、マニフェスト違反に抗議して離党したが、首相は一体化改革で、社会保障の持続可能な改革と財政再建、経済成長を同時に図ろうとしている。景気対策としては、環境・医療・防災などの分野に予算を重点配分し、実質経済成長率を2~3%に高めたいとしている。しかし、これは絵に描いた餅に過ぎない。日本は毎年度の歳出を税収では賄えず、約半分は国債(借金)の発行でしのいでいる。国債発行残高は、前に述べた通り、12年度末709兆円に達する見込みで、国民1人当たり約554万円の借金に支払う利子の国債費約10兆円は年間予算の25%を超え、毎日約300億円の利息を払っている勘定。世界最悪だ。内閣府の試算では、消費税率10%アップが実現し、11~20年度平均で実質成長率2%を達成したとしても、20年度の国と地方の借金(公債等残高)は1100兆円を超えると予想している。債務残高はGDP比約230%で、財政破綻しそうなギリシャ、ポルトガル、アイルランドよりも高率で、これまた最悪。経済力としてのGDP比では米国、中国、日本の順だが、為替レートが違うので、購買力の平価換算で国民1人当たりの経済力を弾けば、ルクセンブルグ、シンガポール、ノルウェーが上位で、日本は19位。「ジャパン・アズ・NO1」ともてはやされたのは遠い昔だ。

IMFが15%台ヘアップ提言
 政府はプライマリーバランス(PB)の赤字を、15年度末までに10年度の半分に減らし、20年度に黒字転換を図り、借金に頼らないようにする目標を立てた。だが、税率10%の時期を当初方針の15年4月から半年遅らせたため、PB黒字化には約16・6兆円足りない。それに、社会保障費は毎年着実に1兆円ずつ増加するので、これを全額消費増税で賄うには、税率を16~20%まで引き上げる必要がある。IMF(国際通貨基金)は6月、「日本は税率を15%まで上げるべきだ」と提言した。各紙の世論調査を見れば、このような増税攻勢に、国民は「止むを得ない」と受け止めているようだが、果たして次期総選挙でどのような審判を下すか。各政党はじっくり見極めて対処しなければならない。