第268回(6月1日)諫早干拓を糺す(中)誤判断の開門見直すべきだ
長崎県の中村法道知事、宮本明雄諫早市長ら地元代表約60人は5月11日、上京し鹿野道彦農水相に潮受け堤防開門の見直しを要請した。昨年10月に公表した環境影響評価(アセスメント)の準備書について「開門方針を白紙の段階から見直すよう求める」との内容で106項目に及んでいる。九州農政局にも同意見書を提出した。
     以下は4月18日の衆院農水委員会における北村の質疑応答2回目

北村 有明海の再生を裏付ける科学的、客観的な根拠は何処にもなく、単なる憶測であり、明らかに菅前総理の誤った判断であると言わざるを得ない。間違った判断によって国自身が福岡高裁の開門判決の義務を負ってしまった。地元の皆さんが開門による影響、被害を強いられる危機的な状況に陥っている。農水相は、前総理の間違った判断が明らかである以上、開門を見直すべきではないか。
鹿野農水相 先の委員会質疑では、諫早干拓事業は洪水防止等の防災効果が有ることから推進し、集団的な優良農地を創出する――との考え方を頭において発言してきた。防災上、営農上、漁業上、支障のないように万全を尽くしてやることを前提に判断したことから判決上、国が平成25年の12月までに開門の義務を負うことになった。諫早干拓事業の本来目的に支障がないようにしていかねばならない。誠心誠意話し合って行こうと思う。
北村 誠心誠意を念頭に取り組んでいることは認めるが、例えば、地下水の取水によって地盤の沈下、井戸の枯渇が生じた地域であるにも関わらず、事前に十分な調査もしないまま、開門の代替水源として大量の地下水取水を先に決めてしまい、後から地下水調査を行うという間違った判断がここでもなされている。地下水取水により、地元の貴重な生活用水を奪い、地盤沈下が生じることを佐賀大学の調査等で確認できている。地盤沈下で家屋が傾き、宅地、道路等の沈下、井戸水の減少等を蒙った地元は到底納得できないし、地域を挙げて不本意ながら阻止行動を行っている。国会でも地下水利用の規制法案が審議され、 諫早市議会でも全会一致で地下水規制条例を制定した。佐賀県白石平野などは新たな水源開発で地下水取水から切り替えているのに、なぜ、諫早地域だけが逆に、開門の代替水源として、再び地下水取水で地盤沈下、井戸枯渇等の苦渋を受け入れなければならないのか。
深度3百メートル地盤沈下調査
筒井副大臣 地下水取水を最終的に決定してはいない。ご指摘の懸念がどうなのか、地下水調査をしたいと申している。今、地盤沈下はほとんどが深度百メートルぐらいの洪積層の井戸で起きているのが多いが、調査するのは深度3百メートルの岩盤層。これの亀裂の中に入っている水を取水したら地盤沈下は起こらないという説もあるので、実際に調査して、確定してから実際の工事を行いたいと考えている。
北村 3百メートルの深井戸なら大丈夫という話は確たる証拠があるのか。今さら地下水の調査ボーリングをする必要があるのか。いずれにしても地元の理解、協力、同意が得られるまで、そういう努力を続けるのか。
筒井副大臣 確定判決で来年の12月までに開門する義務が国にはある。それに間に合わなければいけないと同時に、また、特に長崎の県の皆さんの理解を得なければならない。今、それを並行して一生懸命、全力を挙げて取り組んでいるところだ。

抜本的な塩水浸入防止対策示せ
北村 塩害、潮風害についても、ケース3、ケース2(いずれも制限開門)と同じ開門方法で1ヶ月の海水導入を行った平成14年度の短期開門調査では、堤防の亀裂あるいは基礎の付近から背後地の水路等に塩水が浸入して、半年間も農業用水に使えなかった。抜本的な塩水の浸入防止対策は何ら示されていない。またアセスの準備書では、調整池が海水化されれば周辺の農地で、台風等の強風で潮風害が発生するが、まともな対策は示されていない。農業者に対しても対策がない。塩害、潮風害を受忍せよということか。
筒井副大臣 まず、調整池が塩水化するわけだが、その高さを、海水圧をそんなに増やさないために、現在と全く同じマイナス1・0からマイナス1・2の水位を保つことが1つ。それと、樋門や既存の堤防の補修をするのが2つ目。3つ目としては、水路等に海水が浸入したりして、農地に被害を及ぼす可能性があるから、排水ポンプを、あるいは排水機場を何箇所も設けて海水を排水する、これらの対策を示しているところだ。もう1点、台風等による潮風被害が起こった場合には、散水によって海水を除去する方法を示しているが、いずれにせよ、今示した以外も含め、地元の皆さんとさらに協議して進めて行きたい。
                         (以下次号)