第264回(4月1日)列島の四海波高し(上)北朝鮮ミサイル発射
 北朝鮮が4月12~16日間に地球観測衛星を黄海越えに打ち上げると発表すれば、中国は3月中旬、尖閣諸島から東シナ海のガス田「白樺」にかけての日本との領有権を巡る敏感な海域で、巡視船6隻が立て続けに巡視視訓練を実施。大統領再選を決めたプーチン露首相は北方領土問題で「引き分けにする」と発言して2島返還を示唆。大津波に襲われた東日本大震災から1年を経ても、日本列島は四海波高しだ。日本政府は、事実上の長距離弾道ミサイルである北朝鮮の衛星打ち上げは国連安保理決議に違反するとして、米韓中と連携し中止を求めたが、日本に向けて飛来した場合はミサイル防衛(MD)システムで迎撃する方針。東シナ海の軍事バランスは領土問題に重大な影響を与える。日米両政府は在沖縄米海兵隊のグアム移転と米軍普天間飛行場の移設を切り離す「在日米軍再編計画の見直し」で合意したが外交・防衛に弱腰の野田政権が万全な再編見直し案を策定できるかどうか。私は近隣諸国に舐められ米海兵隊の抑止力と存在感に翳りが出ると憂慮している。

首相、防衛大で安保の懸念表明
 「厳しさを増すと同時に複雑さを呈し、不透明感が漂っている」――首相は18日、横須賀市の防衛大卒業式で訓示し、核・ミサイル問題を含む北朝鮮の動き、軍事力を増強し周辺海域で活発な活動を続けている中国を指摘、安全保障上の数多くの懸念を訴えた。念頭には北朝鮮の宇宙空間技術委員会が3月16日、同国の北西部から地球観測衛星「光明星」3号を打ち上げるとの報道官談話発表がある。北朝鮮は平和利用を隠れ蓑に人工衛星名目で長距離弾道ミサイルの発射実験を行っており今回は2009年4月に日本列島越えに発射して以来3年ぶり。発射予告期間の4月15日は金日成主席の生誕100回目で、「強盛国家」「先軍政治」を受け継ぐ新指導者・金正恩氏の実績を誇示する狙いがある。衛星は北西部の平安北道鉄山郡の「朝鮮西海衛星発射場」から打ち上げ軌道は公海上を通過し日本列島上空は避けられそうだ。98年8月には北東部・舞水端里基地から弾道ミサイル「テポドン1号」を発射。06年7月にも同基地から「テポドン2号」を発射し日本海への落下が確認された。北朝鮮が2月、北京での米朝高官協議で寧辺のウラン濃縮活動を停止することで合意しているため、米国務省は米朝合意違反に当たるとし、「北朝鮮のウラン濃縮停止と米国の食糧24万トン支援を柱とする米朝合意は破棄とみなす」と警告した。

PAC3を輸送しミサイル防衛
 米国務省のヌーランド報道官は16日、「北朝鮮の全ての約束の信頼性に疑問が生じる」として、栄養補助食品の輸送に関する協議を一時中断するほか、北朝鮮の寧辺の核施設に国際原子力機関(IAEA)監視員を派遣することについても対応を再検討する考えを示した。米国は6カ国協議の日韓中露の担当者との個別電話会談で各国が計画中止を北朝鮮に働きかけることで合意したが、ロシアは「深刻な懸念を呼び起こす」との声明を発表。
 6カ国協議の議長国の中国も北朝鮮の駐中国大使を呼び自制を求めた。首相は27日、とんぼ返りで韓国・ソウルで開かれた核安全サミットに出席し、ミサイル発射の自制要求と東電福島原事故を踏まえ国内原子力施設の脆弱性克服のための具体策を表明した。田中直紀防衛相は19日の参院予算委で「自衛隊法第82条の3の第1項に基づき、首相の承認を得たうえ、破壊措置を命じることを考えている」と表明。防衛省はロケットの一部が沖縄南西の先島諸島上空を通過し、フィリピン沖の太平洋に落下すると見て、イージス艦数隻を周辺海域に派遣するとともに地対空誘導弾パトリオット・ミサイル3(PAC3)を海上輸送し、沖縄本島や南西諸島への配備を進めている。首相が防衛大で危機意識を示したのは良いが、既に中距離ミサイル・ノドンの射程距離(約1300キロ)にある日本がミサイル防衛に失敗すれば、国際社会の笑い種となり、消費増税どころではなくなる。
                                 (以下次号)