第262回(3月1日)3極新党・地域政党連携・連合など政界再編加速
石原・橋下両氏が再編の牽引車
 緊迫政局の中で関心を集めているのが政界再編の動き。石原慎太郎都知事は2月3日、国会内で開かれた、たちあがれ日本の全国拡大支部長会議で、同党の平沼赳夫代表、国民新党の亀井静香代表らとの新党構想について、「東京でやることはやった。皆さんに命を預けたい。一緒にやりましょう」と述べ、新党参加に強い意欲を示した。政界再編は石原氏と橋下徹大阪市長を牽引車に①第3極の保守新党②地域政党の連携③既成政党と地域政党の連合――の3通りが画策されている。①の第3極の保守新党は石原・亀井・平沼の3氏が結成を目指しているが、先の大阪ダブル選で橋下氏の応援に駆けつけた石原都知事は最近の記者会見で「東京、愛知、大阪のアライアンス(同盟)で中央集権を打ち破っていく」と述べ、②の「大阪維新の会」や名古屋の「減税日本」など地域政党との連携にも力を入れている。③は、石原氏と同じく橋下氏の選挙を応援した、みんなの党の渡辺喜美代表が「アジェンダ(政策理念)が共通する大阪維新の会と国政で協力する」と連合を模索中。一方、民主党の小沢一郎元代表と鳩山元首相は同月3日夜、都内のすし屋で会談し、消費増税反対で一致した。仮に衆院本会議で小沢・鳩山連合軍が造反し、増税法案を否決するか、野党提出の内閣不信任案に同調・可決すれば、首相は切羽詰まって、直ちに衆院解散を選択、与党分裂の総選挙に突入し、政界再編は現実のものになると予想される。

東京・愛知・大阪の3大都市連合
 河村たかし名古屋市長とタイアップして昨年2月の愛知トリプル選を制した大村秀章愛知県知事は1月31日、都内で亀井氏と会談し、第3極の保守新党と連携し、東京、愛知、大阪の3大都市連合を作り、国政に関与していく意向を表明した。亀井氏はこれに対し、「オールジャパンで地方から国の形を変えて行こう」と応じた。橋下氏の「大阪都」構想の向こうを張って「中京都」構想を掲げる大村氏は、次期衆院選に備え、4月にも政治塾を開設する構えだ。大村氏は翌1日、都知事長男の石原伸晃自民党幹事長とも会い、協力を要請した。だが、石原幹事長は「真田の心境だが、親父を頼む」と苦笑いで応じるばかり。というのも、民主党や自民党の若手議員の中に新党参加に関心を持つ者が多いことから、「関が原の戦い」で親子が敵味方に分かれて戦った真田幸村を引き合いに出し、心境を打ち明けたもの。その後も伸晃氏は「子どもからは(父親が)利用されているようにしか見えない」と記者団にぼやいたが、都知事は記者会見で、「(幹事長を)辞めちまえって言ってるんだ。あんな訳の分からない政党にいて損して、本当に可哀想だと思うよ」と同情したと言う。

船中八策のたたき台91項提示
  再編のキーマン橋下氏は「維新政治塾」を開設、これには2月10日までに当初予定の400人を遥かに超える3326人が応募。政治塾は次期衆院選に「300人擁立、200人議員獲得」の目標を掲げ候補者を育成する方針。「大阪維新の会」は同月14日、坂本龍馬の「船中八策」をもじった次期衆院選公約のたたき台を公表。内容は①首相公選制、参院廃止を視野に入れた憲法改正を伴う政治の抜本改革②国会議員の定数・歳費削減と政党交付金削減③道州制へ移行、地方交付税廃止など統治機構の作り直し④日米同盟を基軸に豪とも連携⑤環太平洋経済連携協定(TPP)への参加⑥高所得者に対する年金の掛け捨て制導入と資産課税の創設⑦地方に税財源を委譲し、自治体間で財政調整する「地方共有税制度」の創設⑧教育行政制度を自治体の選択制へ移管――など、91項目にわたる膨大な政策で、国政を担う政党に脱皮する考えだ。橋下大阪市長は16日、首相の諮問機関である地方制度調査会(会長=西尾勝東大名誉教授)の専門小委員会で大阪都構想を説明、「大阪の府と市で同じようなことをやっており壮大な無駄だ。広域行政体と基礎自治体を作り直すべきだ」と述べ、制度の詳細設計は地方に任せるよう訴えた。ヒアリングには「特別自治市」を主張する政令市代表の阿部孝夫指定都市市長会副会長も、自由な大都市制度を強調した。

橋下氏と薩長連合を河村氏喜ぶ
 「関東はみんなの党、関西は維新の会。いとこみたいな関係だ。政策は瓜2つ」――。次期衆院選に100人の擁立を目指すみんなの党の渡辺代表は、維新の会と連携すれば「第1極」も夢じゃないと考えている。同党の江田憲司幹事長も「脱官僚、地域主権などアジェンダが一致すれば、共に実現していくのは当然だ」と語る。読売によると、作家・堺屋太一氏はみんなの党の生みの親。現在は大阪市の特別顧問を務め、「船中八策」をアドバイスした共通の政策ブレーン。「瓜2つ」は間違いなく、みんなの党は大阪都構想に必要な地方自治法改正案や道州制移行基本法案も準備、維新の会の水先案内役を務めている。橋下氏は河村名古屋市長の「減税日本」路線に反発して接触を避けていたが、河村氏の要請で両者は2月3日夜に3時間半会談し、「国政での連携を図るため当面は減税を棚上げし地方から日本を変えていく」ことで合意。大都市制度や教育委員会制度などで互いの政党が公約を明確にした後に連携を判断することでも一致。河村氏は「これぞ薩(名古屋)長(大阪)連合だ」と喜んでいる。橋下氏は憲法9条改正の是非を問う「国民投票」を公約に追加した。

資金力・人材・集票魅力あるか
 阪神・中京地区の都市部で苦戦が予想される自・公・民の既成政党も、次期総選挙で「維新の会」など地域政党の支援を得たい思惑から、選挙協力については各支部の対応に任せている。その中で、安倍晋三元首相は26日、維新の会が作成中の衆院選公約案の憲法改正条項について「評価する。より良い協力関係が構築できればいい」と語り、連携に向けて秋波を送った。しかし、地域政党の連携、石原都知事の“第3極”保守新党のいずれにしても,①擁立する資金力があるか②国政を担える人材が集まるか③浮動票を引きつける魅力があるか――などの難問が残されている。資金面では仮に、「維新の会」が小選挙区と比例区に重複立候補させるなら、供託金は1人当たり600万円だから、300人擁立で18億円が必要。これに運動員や組織固めなどに10数億円は掛かり、誰がスポンサーになるかが最大の課題。河村氏の「減税日本」も昨年2月のトリプル選挙で名古屋市議会の過半数制覇に成功したものの、寄せ集め議員で質が低く、単なる市議会の投票マシーンに過ぎないと早くも市民から批判されている。みんなの党や第3極保守党も資金の悩みは同じ。保守新党を画策するのは石原、亀井、平沼氏ら高齢者ばかり。恐らく既成政党から“老人党”に移籍する議員は少なく、若手候補者にとっては魅力が乏しいと言えよう。

堺市離反で橋下構想早くも翳り
 かつて、日本新党,新生党、新党さきがけといった「非自民」勢力が宮沢喜一政権を倒した総選挙では、新党が政治改革ブームに乗って浮動票を集め,細川護煕政権を擁立した。現在も国民の閉塞感は変わらず、自民、民主両党の支持率が低迷、無党派層が半数以上に増大して既成政党にとって総選挙は不利な状況。だが、大震災の国難に遭って国民は政治変革よりも、政局の安定を求めている。ポピュリズム(大衆迎合)的な地域政党が国政に進出しても、せいぜい阪神、中京を中心に2桁取れれば御の字。おまけに、大阪・堺両政令都市を特別区に組み入れる大阪都構想は、竹山修身堺市長が2月3日、松井一郎大阪府知事と橋下市長との鼎談で、大阪府と両市の協議会を作る条例案の2月市議会提出を見送ることを正式表明。同構想から堺市の離脱が明確になり、橋下構想には翳りが生じている。