第261回(2月16日)外交防衛政策を叩く 防衛局長講話で紛糾
 先進国、新興国を問わず、国家の最大課題は外交・経済・軍事の3政策である。平和憲法で日本は軍事が「防衛」に名を変えたが、外交・安保・経済が国民生活を守る根幹だ。幸い私は自公政権で防衛政務官、防衛副大臣を、国会では衆院沖縄・北方問題特別委員長を、党では水産部会長を2度も務め、離島・漁業問題など経済振興にも取り組んできた。しかし、鳩山由紀夫政権が米軍普天間基地移設問題で迷走し、”外交音痴“をさらけ出して以来、周辺国に舐められっ放なし。政府が16日、尖閣諸島の4無人島に名称を付ける離島命名の方針を決めたのに対し、中国共産党機関紙の人民日報は「公然と中国の核心的利益を損なう振る舞いだ」との評論を掲載し日本を非難した。「革新的利益」とは中国が絶対に譲歩できない国家主権や領土保全などを意味し、これまでは台湾やチベットなどに用いてきた。日中共同開発で合意した東シナ海のガス田「樫」でも勝手に開発を進めている。ロシアは「北方領土は第2次大戦で得た領土」とし、大統領以下閣僚が視察した。周辺国は歴代民主党政権の足元を見て既成事実を積み重ね、領土的野心を満たそうとしている。歴代民主党政権は外交・防衛閣僚にド素人を起用して国益を損なったが、特に野田政権は一川保夫前防衛相が更迭されるなどその傾向が強く、防衛シンパの私にとって看過できない事態だ。

国会審議の標的は田中防衛相
 国会の集中審議で槍玉に上がったのが田中直紀防衛相。一川前防衛相に次ぐ問責決議案のターゲットにされている。田中氏は数々の未熟な言動を続けている。1月31日の参院予算委を無断で15分も中座し、国会内の食堂でコーヒーを飲んでいた事実が発覚。「風邪気味で鼻水が止まらず、薬を持ってこさせた」と弁明したが予算委審議は冒頭から度々中断した。1日の参院予算委で自民党の佐藤正久、山谷えり子両議員は、田中氏が沖縄現地を視察した際の普天間周辺小学校の危険性を軽視するかのような発言、国連平和維持活動(PKO)5原則と輸出3原則の違いを混同した国会答弁、沖縄の伊江島と東京の硫黄島を間違えた発言などを逐一取り上げ、防衛大臣としての資質を厳しく責め立てた。田中氏は南スーダンのPKOに派遣された陸自を警護するのは何処の国の部隊かを問われ、「決まっていない」と答弁するなど言い間違いや事実誤認を連発。渡辺周防衛副大臣が慌てて「バングラデシュだ」と訂正し、田中氏は陳謝した。2日の衆院予算委でもPKOで民間活動団体(NGO)などを警護する場合の武器使用について、「一つの部隊の中で活動していれば出来ると思う」と答弁し、自民党質問者の石破茂元防衛相から「民間人が部隊の中で活動するわけがない」と指摘され、またも事実誤認の発言を訂正した。防衛省本体も失態続きだ。

真部防衛局長を追及、更迭論も
 米軍普天間飛行場を抱える沖縄の宜野湾市長選は12日行われ自公両党が推薦した元県議の佐喜真淳氏が初当選したが、防衛省沖縄防衛局の真部朗局長が同市内に住む同局職員と親族80人に関するリストを作り、投票を呼び掛ける講話をしたことが選挙前に露呈、1日の国会で野党から激しい追及を受けた。衆院予算委は3日、真部局長を参考人招致し集中審議を行い、田中氏の監督責任などを追及した。田中防衛相は真部氏の更迭と同省幹部の処分を検討したが選挙後まで決定を持ち越した。防衛省が1日に発表した52職員の事情聴取によると、真部局長が講話で投票日と2人の立候補者を紹介したうえ、「普天間飛行場所在地の宜野湾市では、市民の民意が重要だ。棄権すべきではない。公務員として中立性・公正性に疑いをもたれないように」と述べ特定候補者を支持する内容は確認されなかったと言う。真部局長は2008年1月から11年8月まで防衛局長を務め10年9月の名護市議選でも同様の講話を行ったことを認めている。防衛局長は前任者の田中聡局長が普天間移設問題に絡む記者懇談で、「犯す前に『やらせろ』とは言わない」など不適切発言をし、昨年11月に更迭されたばかり。真部氏は手堅い手腕を評価され、田中氏更迭後に返り咲いた。

進展しない普天間移設に失望
 沖縄では過去にも防衛省による各種選挙への関わりが問題視されてきた。自衛隊を否定し非武装中立を唱え、基地反対闘争を激しく展開した政党を識別して投票するよう講話してきたし、普天間移設を巡って米軍海上へリポート建設の賛否が問われた1997年12月の名護市の「市民投票」では、政府の指示で沖縄防衛局の前身である那覇防衛施設局の職員ら約200人が戸別訪問を繰り返している。「市民投票」は公職選挙法が適用されないため、法的には問題なかったが、革新勢力は「国家公務員の地方自治への介入だ」と猛反発した。真部氏の講話も公選法に違反しないよう慎重に言葉を選んでいる。今回は「政治主導」を唱える民主政権と防衛首脳の間に溝が生じながらも、真部氏ら防衛局幹部は普天間移設を何一つ進展できない民主党政権に焦りと失望を感じ、自衛手段として普天間問題進展の一助になればと考えて講話し、基地周辺の民意を高めようとしたと見られる。

中谷元防衛長官ら真部氏を弁護
 真部氏の更迭論が出たさなかの3日、衆院予算委の集中審議では自民党の中谷元・元防衛長官が「職場の人間を集めて選挙に行けと言っただけだ。世間を騒がしたから処分するにはあまりにも可哀想だ」と真部氏を弁護、与党で沖縄出身の下地幹郎国民新党幹事長も「真部氏1人ではなく、ずっと続いている体質を手直ししないといけない」と真部氏をかばった。宜野湾市長選は幸い佐喜真氏が共産、社民などが推薦した伊波洋一元市長を900票差で破り、26年ぶりに保守が革新から市制を奪還した。だが、移設問題で柔軟な姿勢を取っていた佐喜真氏は選挙戦中、仲井真弘多沖縄県知事と同様「県外移設」を唱え、これを市民が後押ししたことから、地元の民意は真部局長の言動に強い影響を受けたと見られる。田中防衛相は集中審議で、「田中角栄元首相をどう思うか」と意地悪質問を受け、岳父と比較されたが、角栄首相は就任後2ヶ月の間に、竹入義勝公明党委員長を「特使」(パイプ役)として北京に派遣し周恩来首相と会談させたほか、ニクソン米大統領にも渡りを付け、党内反対派も説得して日中国交正常化の偉業を達成した。毀誉褒貶があったが角さんは決断の人だった。日米両政府は普天間移設を堅持しながらも、在日米軍再編計画の抜本的見直しに入っている。首相、防衛相のリーダーシップが厳しく問われるところだ。私は自衛隊諸君の行政停滞に対する不満・苛立ちと日ごろの努力を深く理解しつつ、戦略目標、歴史認識が欠落したお粗末な野田政権の外交・防衛政策を国会で徹底追及していく考えだ。