第255回(11月16日)大阪ダブル選が開幕 維新の会VS既成政党
 27日投開票の大阪ダブル選挙が熱気をはらんでいる。大阪府知事選は10日、大阪市長選は13日に告示された。「大阪都構想」を掲げる橋下徹大阪府知事は辞任して大阪市長選に立候補。「都構想」に反対する平松邦夫大阪市長が再選を目指す。地域政党「大阪維新の会」を結成、今春の統一地方選で府議選が過半数、市議選が第1党になった橋下陣営は府知事選でも「維新の会」の松井一郎府議を擁立。対する平松陣営は大阪府の倉田薫池田市長を相乗りの府知事候補に担ぎ激戦を展開中だ。単独候補を擁立しない自民、民主両党府連は倉田陣営を支援している。大阪都構想は東京都と23特別区をモデルに政令市の大阪・堺両市を解体、府と合わせて広域自治体「大阪都」に再編する政治・行政改革の地方版。大都市制度を巡っては愛知県と名古屋市を合体する「中京都」、新潟県と新潟市を再編する「新潟州」など道州制を含む構想が数多く浮上している。都構想の実現には地方自治法の改正が必要。橋下氏は「都構想が実現しないなら、大阪だけでなく近畿圏を視野に維新の会で国政を目指す」と述べた。平成の市町村大合併で地方自治体数は半減したが、大阪ダブル選は地域主権の今後を占う上で極めて重要だ。長崎県の市町村合併では自治体の対応が賛成、慎重論に別れた。私も多年地方自治に携わってきた経験を生かし国会で大いに論議を深めたい。

大阪都構想4年で実現と橋下氏
 大阪ダブル選は10月23日、「大阪維新の会」代表の橋下府知事が大阪市長選に鞍替え出馬を正式表明、同会幹事長の松井府議が知事選立候補を表明した時から火蓋が切られた。両氏は記者会見で公約の柱の大阪都構想について「4年間で実現し、1期でやめる覚悟でやる」と決意を述べた。松井氏は大阪府八尾市出身。2003年に自民党から府議に初当選。昨春に橋下氏らと維新の会を設立し自民を離党した。大阪市長選には橋下氏と現職の平松氏の二人が立候補して、渡司考一前共産党市議は出馬を断念した。府知事選には松井氏のほか共産党が擁立した弁護士の梅田章二氏、維新に反発する大阪府内の市長らが推す倉田池田市長が出馬した。維新の幹部は当初、テレビキャスターの辛坊治郎氏や異色の元経済産業省官僚・古賀茂明氏にも出馬を要請したが固辞され、松井氏に落ち着いた。自民、民主両党は候補擁立を諦め、公明党は自主投票を決めている。民主党は平野博文国対委員長(衆院大阪11区)、樽床伸二幹事長代行(同12区)や藤村修官房長官(同7区)ら大阪出身議員が政権中枢を占めているだけに不戦敗は避けたかった。そこで平野府連代表は同11日、自民府連の谷川秀善会長と会談し、相乗り候補を擁立することで合意した。

特別区に再編し二重行政なくす
 民主側は弁護士の郷原信郎氏に出馬を要請、自民側は谷川会長が党府連大会で「橋下というわけの分からん奴に振り回されている」とぼやき、弁護士の丸山和也参院議員に打診したが、両氏とも「積極支援がない」と見て固辞した。自民党の市議には中山泰秀前衆院議員を担ぐ動きや、府議の多くが倉田氏の擁立を模索したが、維新府議を足元に抱える国会議員には次の総選挙を考えると「維新の会を敵に回すことは得策でない」とひるんで、意思結集出来なかった。橋下陣営はダブル選に勝利すれば2015年に都政に移行する筋書きを描く。全国19の政令指定都市は道府県に匹敵する権限と財政力を持っている。特に大阪市は人口で府全体の30%、総生産額で54%を占め、府とは別に美術館、体育館などを持っている。今年度の特別会計を含む予算額は約3兆9千億円で、府の約4兆3千億円と大差はない。このため、大阪全体のトップとは名ばかりの橋下氏は、都制を導入し府と大阪、堺両市の財布を1つにして二重行政の垣根を取り払えば、高速道路の整備や産業振興を効率的に向上できると主張。両市域を8~12の特別区に再編して公選制の区長、区議会を置き、中核市並みの権限と財源を与えれば住民密着のサービスが可能と都構想を推進した。

民主はアンチ橋下ラインを支持
 政府内にも「二重行政の解消」の理念に一定の理解を示し、「地方制度調査会」(首相の諮問機関)は来年、大阪府と大阪・堺両政令都市を廃止し「特別自治区」に再編する大阪都構想を踏まえた「大都市制度のあり方」を議論する方針だ。これに対し、民放アナウンサー出身の平松大阪市長は「市がバラバラになり、活力が失われる」と反発。市の職員組合も都構想に抵抗している。しかも、大阪市議会で維新の会は第1党だが、過半数には届いておらず、区割りや財源配分などを議決するのは容易ではない。さらに住民投票をクリアすることも難関だ。国会では大阪府が都と特別自治区に再編される「地方自治法の改正」が待っているが、逆に「きめ細かい住民サービスを行う基礎自治体の機能が阻害されはしないか」との懸念がある。4年前の07年10月、当時の小沢民主党代表は初出馬の平松氏と並んで記者会見し、「大阪で広い、厚い支持を得られることは総選挙でも大事なことだ」と強調、支援した。今回も輿石東幹事長は30日、再選を目指す平松氏と府知事選に鞍替え出馬の倉田池田市長に「ゴールを目指して党本部も精一杯協力することを誓う」とエールを送った。

橋下氏敵に回せば総選挙に響く
しかし、10年4月に地域政党「大阪維新の会」を設立した「橋下人気」は依然衰えていない。朝日の10月24日付け社説によると、「国の直轄事業負担金を『ぼったくりバー』と批判し、関西電力の15%節電要請を『騙されてはだめ、まるで霊感商法』と談じ、ツイッターでも過激な発信を続けている」ことが府民に受けているという。小泉元首相は絶叫調の演説で「自民党をぶっ潰す」と党内の抵抗勢力を批判、ポピュリズム(大衆迎合)政治の「小泉劇場」を演出した。これを真似た「橋下劇場」も府民の支持を得ているわけだ。また同社説によると、地方分権推進の立場から国の出先機関の廃止と自治体への移管を全国に先駆けて主張したのは良いが、「維新の会」の公約になかった君が代の起立斉唱条例を成立させるなど独裁的政治手法が波紋を描いた。府庁舎を全面移転する計画で、府議会の反対を押し切って買い取った大阪湾岸の高層ビルは、東日本大震災後に防災拠点として難があるとして頓挫したまま。維新の会が鳴り物入りで府議会に提出した職員基本条例案と教育基本条例案は府総務部や橋下氏が任命した教育委員らが強く反対し、採決されず継続審議になっている。
橋下氏は自民、公明両党の支援を受け、08年1月の府知事選で圧勝したが、今回は両党とも橋下氏の政治手法に批判的。さりとて、人気の高い橋下氏を敵に回せば総選挙に響くとの思惑もあり対決には慎重だ。さて、府民の審判はどう下されるか。国民は見守っている。