第247回(7月16日)北方領土特集=LNG発電所建設を (№1)
  菅首相は①第2次補正②公債特例法③再生エネルギー法――の3法成立を「退陣3条件」に掲げながらも、あわよくば「脱原発」を争点に衆院解散・総選挙を断行、政権延命を図ろうと夢見ている。福島原発事故後、スイス、ドイツ、イタリアが「脱原発」に政策転換したが、電力輸入が出来る欧州と違って電力生産の30%を原発に頼る日本で、原発を休止・廃炉にすれば、産業の生産力は衰退、企業の海外移転など産業空洞化をもたらす。再生エネは太陽光、風力、地熱、木くず・生ゴミのバイオマスなどが柱だが、生産コストは火力の7倍以上で、いずれは年間2千円以上の電力料金値上げとなって国民に跳ね返る。電力業界・財界や民間団体が反発するのはこのためだ。再生エネがコストダウンし普及するまで約20年の歳月と20兆円規模の投資が必要だ。火力発電の燃料となる液化天然ガス(LNG)は価格が上昇、輸出大国ロシアを強気にさせ、北極圏のノルウエーも本格生産を始めたが、供給源としては安定している。産業の大動脈である電力は「明るく、温かく、楽しく」がキーワードだ。そこで、衆院沖縄・北方問題特別委員長としての私は、北方領土の返還と絡めサハリン(旧樺太)に日本の9電力などの出資でLNG発電所を建設。LNGパイプラインではなく、日露間の送電線を宗谷海峡などに敷設し、日本本土はもとより北方4島の電力需給を賄い、4島の開発に資する計画を立てている。乞うご期待。

温暖化で北極海LNG開発加速
 「東日本大震災後、LNGは原子力の穴埋めとして注目が集まった」と5月23日の朝日は報じた。北緯70度、北極圏のノルウエー沿岸で、世界最北のLNG基地が本格的生産を始めたが、これは温暖化で北極海の氷が溶けて日本や中国への航路が開く期待も資源開発を後押ししたという報道だ。確かに「バイキング時代以来、ほとんど無人」といわれたノルウエー最北端の、漁港があるメルケア島に炎を上げる煙突やガスタンク、冷却施設などが立ち並ぶ。パイプラインで届けるには遠すぎるので、「船で運べるようにガスを液化する欧州最大で世界最北の基地を北極バレンツ海沿いに初めて立ち上げた」もので、川崎汽船などはLNGを米国やスペインにピストン輸送、特殊タンカーは三井造船が開発するなど日本企業も一角を担っている。北極海ルートなら原子力砕氷船を使っても、オランダ・ロッテルダム-横浜間が、海賊で危険なスエズ運河経由より約4割短くなり、商業航海の実験は既に活発化。昨年以降、鉄鉱石や軽油をノルウエー北部やロシアから中国などへの運行に成功している。このように、LNGの開発・輸送問題は世界で脚光を浴びている。

新興国の旺盛な天然ガス需要
  朝日は「ドイツなどで原発依存を見直す動きが出ているが、太陽光や風力など再生エネルギーだけで、直ちに需要を満たせるわけではない。世界で未発見のガスのうち約3割が北極圏に眠っている。LNGへの依存が高まる可能性がある」と指摘している。心配なのは福島第一原発事故によって、LNG価格が2割も急騰。現在価格は100万BTU(英国式熱量単位)当たり13ドル台だが、秋以降20ドル台になる恐れも出てきた。朝日によると、新興国の旺盛な需要が根底にあり、日本が長期契約で輸入する量の年7千万トンに比べ、数年前まで輸入ゼロだった中国は現在1千万トンを輸入、将来は4千万トン輸入するとの予測もある。同様に数年前ゼロだったインドは10年の短期だけで900万トン輸入、世界一の天然ガス輸出国ロシアを強気にさせている。それだけに、北方領土問題特別委の委員長として、シベリア、サハリンの資源開発は見逃せない重要な案件だ。

中韓を4島に誘い実効支配誇示
 ロシアはプーチン氏がメドベージェフ氏に政権を事実上禅譲、メ大統領、プ首相のタンデム(双頭)体制に入ったが、昨年11月から今年4月にかけて、メ大統領ら政権中枢が相次いで北方領土を訪問。今年1月末にはプーチン首相の指導で、豊富な天然資源が眠る北極海の石油・天然ガス開発に向けて、ロシア最大の国営石油会社ロスネフチと英石油大手のBPが提携に合意した。ロシアは韓国や中国の企業に北方領土への投資を呼びかけ、水産加工施設などの合弁事業や投資計画の誘致を次々に明らかにしている。イタル・タス通信は「大統領は事実上、領土問題を巡る今後の対日対話を閉じた」と報じたが、ロシアには4島の実効支配を国際的にアピールし日本との経済協力がなくとも4島を開発できると誇示する狙いが隠されている。背景には菅首相がメ大統領の北方領土視察を「許し難い暴挙」と批判するなどの拙劣な外交が災いしている。しかし、来年9月に極東のウラジオストク市で開くAPEC(アジア太平洋経済協力会議)サミットの議長国を務めるロシアは、日中韓など北東アジアのLNG需要に対処するため、天然ガス最大手企業のガスプロムと「極東ガス」が、同市郊外のLNG工場で共同の技術的、経済的な調査を行うことで合意した。

西海市―上五島間海底送電線を日露に
 プーチン首相は3月20日、東日本大震災の支援策として、「サハリンの資源開発を促進し、対日輸出を拡大したい」と述べ、LNGの対日供給量を増やすよう指示しており、従来の強硬姿勢を緩めた。このように、ロシアは建て前とは別に、再び日本の経済協力に期待をかけ始めている。この機会を捉え、私はサハリン(旧樺太)にLNGの火力発電所を日本9電力の協力で建設、海底ケーブルを敷設し北海道および本州はもとより、北方4島にも送電、4島の開発に役立てる構想を発案、経済産業省の幹部らに検討を要請した。既に長崎県の西海市の松島火力発電と53キロ離れた五島列島の上五島間に「松島奈良尾66KV海底XLPEケーブル」が敷設され、2005年に運転を開始した。ロシア本土とサハリン間のタタール海峡(旧間宮海峡)の幅は10キロ足らず。サハリンと北海道間の宗谷海峡は40キロ程度だ。日本では本州―四国間に直流500KVの「阿南紀北直流幹線500KV海底OFケーブル」が敷設され、世界最大級の送電容量を誇っている。

川口元外相もサハリンに前向き
 恩師・白濵仁吉元郵政相は日ソ交渉の創始者・河野一郎元農相の率いる河野派に属し、農林漁業関係で多くのロシアの友人を持っておられたが、私も負けずにロシア人脈を探して折衝、成案を得たいと思っている。日本総研の寺島実郎理事長はLNG発電による電力輸入について、「外交力が必要」と講演で力説したようだが、私はロシアにも幅広い人脈を持つ川口順子元外相にお願いするのがベターと思い、7月8日に党本部で開かれた政調総合エネルギー政策特別委に出席した。同委でエネルギー政策を講演した川口氏もサハリンLNG発電の重要性に言及、私の案を前向きに推進する必要性を認めていた。「国土幹線天然ガスパイプライン建設推進議連」(鳩山邦夫会長)は休止中だが、その仲間や超党派の「LNG議連」などに呼びかけ、いずれ日露両国間の交渉に持ち上げ、実現したいと念願している。

電気料金に跳ね返る機構の負担
 原発事故の損害賠償については「原子力損害賠償法」があり、国は原発1か所毎に最大1200億円しか負担しないことになっている。東電は同法3条の但し書きにある「異常に巨大な天災地変の場合は免責される」を楯に、賠償負担の上限設定に固執したが、政府は5月13日、東電を公的管理下に置く原発事故賠償策のスキーム(枠組み)を正式決定、東電にリストラの徹底を求めた。政府が今国会に提出している「原子力損害賠償支援機構法案」は、政府が無利子の交付国債を発行する形で公的資金を投入するが、この資金は東電が家庭や企業の支払う電気料金などを元手に長期間返済する。だが、2・5~4兆円、事故の収束が長引けば10兆円にも上ると見られる巨額の賠償金を東電が市場から資金調達するのは難しいため、原発を保有する9電力が賠償支援機構を設立して賠償を支援することにした。つまり、電力業界、国、企業・家庭の3者が賠償を負担するが、当然、税金、電気料金に跳ね返ってくるわけで、財界は産業の空洞化を招きかねないと反発している。

機構9電力の技術で発電所建設
 電力は家庭・社会を明るくし、エアコンで冷暖房を、電子レンジで楽しい調理を提供する。「明るく、温かく、楽しく」の[明・温・楽(ミンオンラク)]が、電力に名付けてよいキーワードだ。東京ガスは「天然ガスは二酸化炭素の排出量が石油より約25%少ない」と強調、新たなLNG輸入基地を15年度に茨城県日立市に稼働させるという。LNG発電はエコ社会にも相応しいし、「パイプライン建設に伴う環境破壊」(プーチン氏)もない。エネルギー政策を見直すまでの繋ぎ期間は、原発を点検・維持しつつ、コストの安い火力発電に頼らざるを得ない。昨年4月に米南部沖メキシコ湾で大規模な原油流出事故が起きたが、LNGのパイプライン輸送、船舶輸送も、テロ攻撃や急激な気温差、気象条件の変化などによって危険だ。そこへいくと、無尽蔵に近い天然ガス資源を持つサハリンに賠償支援機構の9電力がロシアと協力して発電効率の高い火力発電所を建設、リチウム蓄電、超電導など送電コストの低い最新技術を駆使、海底ケーブルを日露間に敷設すれば、両国の繁栄と北方領土の解決にも役立つと思う。         (以下次号)