第245回(6月16日)論議呼ぶ分都、遷都、展都、道州制(4)
 同じ地方分権でも、村山政権時の平松守彦前大分県知事は連邦制による地方への権限委譲を唱えた。都道府県を廃止し、全国を10ブロック程度に分け通産局や財務局など出先機関をまとめる府を作り、同ブロックの予算を決定するなど中央の権限を市町村に分権。中央政府は通貨管理、外交・防衛だけをやる「小さな政府」に変身させるというもの。さらに当時、都知事選に出馬して敗れた岩国哲人・元出雲市長は「地方分権も霞が関が権限を持ったままの首都移転なら、壮大なカネの無駄遣いになるだけ」と批判し、羽田の24時間ハブ国際空港化を挙げ、産業空洞化に苦しむ京浜工業地帯と羽田空港、臨海副都心を結ぶ「黄金の三角地帯」の形成を提唱した。学者の間では「遷都は内需拡大につながるように見えるが、逆に都市機能の一極集中のメリットを一挙に損なう。都心の道路混雑の緩和が先」との反対も多かった。当時、故・金丸信元副総理が発足させた新都市推進懇談会には、利権がらみの遷都ブームにあやかろうとした衆参両院の超党派議員約230人が参加した。

遷都の効果14兆円で利権膨大
 確かに遷都の波及効果は建設費用14兆円の2倍の内需喚起が予想され、開発にまつわる利権も膨大に見えた。だが、かつての新産都市や工業特別地域の指定では誘致合戦が激化、地価暴騰など色々の弊害が出た。華やかな都会の息吹が感じられない人工の「国会都市に」政治家、官僚が生活基盤を移すだろうか。ブラジルの首都ブラジリアは国会議事堂、裁判所、官庁群が立派に建ち並んでいるが。国会議員は会期中だけリオデジャネイロから飛行機で通い、高級官僚の多くも週末はリオで過ごす習慣だという。報告書は「首都移転と地方分権、規制緩和を“車の両輪”」に「政府と産業都市を切り離す政経分離」を提唱、序章には「今報告書の試みは、首都移転という壮大な過激の序曲を奏でることだ」と高らかに謡ったが、20年後の実態はどうか。官僚の抵抗は強く逆に旧人事院ビルや旧文部省ビルが高層化、国会議員会館も建て替えられて遷都などは絵に描いた餅に終わっている。

特区―首都機能移転―道州制へ
 さて、今回はどうか。復興基本法案の修正は自公両党の主張を丸飲みして、①年内に復興庁の設置②復興特区の新設③復興財源として復興再生債の発行――で合意した。阪神大震災当時、遷都論を唱えた堺屋太一氏は週間文春の立花隆氏との対談で、「東北復興に府省横断的時限機関を設け、やがて(3~5年後)中央の権限を移譲して道州制を導入。まずは東北州を作る。その中には、日本一の交響楽団がある都市とか、重量挙げ国際都市といった、それぞれ個性のある6つくらいの『日本一の都市』を作り、その都市を中心に東北全体の復興を進めればいい。復興で注意すべきは、生活・地域、経済・産業、文化・楽しみ、の3つをバランスよく進めていくことだ」と述べている。平松氏の連邦制に近い考え方だ。荻原博子氏は朝日のオピニオン欄で、敢えて“禁じ手”とされる「国債の日銀引き受け」で財源を確保するよう提案。その財源で、「東北には最新技術を駆使し、大災害が来てもビクともしない街や港湾、空港を作れば、東海・東南海・南海地震に見舞われそうな地域に拠点を持つ企業が新都に投資し機能の多くを移す。原発に頼らず太陽光、風力といったクリーンエネルギーの開発に力を注ぐ街もできる。技術革新が進み、雇用も増え、海外にノウハウを売れる。日本産業育成の役目を終えた経産省が『復興省』に衣替えし、東北に移って音頭をとるべきだ」と首都機能移転を主張している。  (以下次号)