第244回(6月1日)論議呼ぶ分都、遷都、展都、道州制(3)
 「終息の道筋が見えない原発事故に、やまぬ余震と電力不足で人々の不安は尽きない。本当に東京は大丈夫なのか」――。こんな書き出しで、朝日は5月8日、「首都機能移転論」を首都圏版に特集した。移転論は1980年代後半のバブル期から盛んになった。99年に国は「栃木・福島」「岐阜・愛知」「三重・畿央」の3個所を耐震性や交通の利便性から移転候補地に定めたが、景気の低迷などで議論は後退。国会審議も2005年から中断したままだ。この間も東京一極集中は進み、都の人口は昨年1300万人を超え過去最多となった。これまで移転論を「バカなこと」と一蹴していた石原慎太郎都知事が震災後は「首都機能が分散されるのは望ましい」と発言するなど、心境の変化が伺える。――と報じ、前号HPの「橋下構想に石原知事賛同」を裏付けている。菅首相は同月1日の参院予算委で「首都の中枢機能を代替できる地域をしっかりと考えて置かねばならない」と述べた。

大阪や那須で都市機能移転論
 超党派の「危機管理都市推進議連」(会長・石井一民主党副代表)も4月中旬、「バックアップ都市建設を急ぐべきだ」として副首都建設に向け法整備を急ぐことで一致した。国土交通省の首都機能移転企画課は今年夏の組織再編で廃止される運命にあったが、石井氏は同省幹部を呼び出し、「国会での議論もじきに再開される。むしろ陣容を強化するべきだ」とクギを刺した。今回の地震で在外公館や外資系企業の本社移転が相次いだ関西では、「東京がダメなら大阪があると世界に発信すべきだ」と橋下徹大阪府知事が音頭を取り、佐藤茂雄大阪商工会議所会頭らが「国家の危機管理こそが急務」と呼応するなど、都市機能の移転・分散の声が急速に高まっている。また、村山政権当時に、那須御用邸があり首都移転候補NO1の評価を受けた「栃木・福島」地域は、「東北新幹線も那須塩原駅まではほぼ大丈夫だった。やはり那須は地震に強い」と早くも誘致運動を再開している。

東北6県で広域自治復興機構
  震災復興構想会議の御廚貴・議長代理(東大教授)は朝日の4月29日付企画記事で、「日本の長い『戦後』は終わり、『災後』時代に入った。戦後は高度成長の明るい時代だったのに対し、災後は人口と経済が縮むダウンサイジングの社会となる。だが、暗い話ばかりでなく、若者の公共への貢献など希望もある。日本のグランドデザイン(全体構想)を示し、夢を描くことが大切だ。電力が使えない社会での生活スタイルとしてのスローライフや、防災上危うさが否めない東京一極集中を是正する視点が必要だ」と地域分散、地方分権を主張している。翌30日に首相官邸で開いた復興構想会議の第3回会合で、阪神・淡路大震災を経験した貝原俊民・前兵庫県知事は、東北6県と関東の自治体が復興に向けて連携を強化するための「広域自治復興機構」創設を提唱。同時に「財源なき復興ビジョンは寝言だ」と述べ、復興増税の検討が不可欠であると訴えた。貝原氏の構想は、阪神・淡路大震災で「復興特区」提案などに政府が消極的だったため、自治体主導で国の出先機関も統合し復興を進めるべきだと主張したものだ。

国会でも特区構想論議が盛ん
  東北特区構想の実現を目指す「道州制懇話会」は、小池百合子自民党総務会長、公明党の坂口力元厚労相、民主党の松原仁衆院議員らが発起人で超党派の120人超が参加しているが、これは都市復興の阪神大震災と違い、少子高齢化が進んだ農漁村と下請け工場のサプライチェーン(部品供給網)が壊滅的打撃を受けた東北地方では法人税、所得税などの減税措置と大幅な規制緩和が必要であるとし、縦割りではなく横断的な行政権限を広域自治体に与えようとしている。岩手県知事を3期務めた増田寛也元総務相らも特区構想の推進者。国会では災害復興の中核体として特区構想が論議を呼びそうだ。 
                     (以下次号)