第237回(2月16日)離島揺るがす問題(下)中国空母建造進む
 前回は中国の新兵器、対艦弾道ミサイル(ASEM)について説明した。射程1500キロのASBMと潜水艦の攻撃リスクを避けるため、米空母は艦載機の作戦行動範囲外のグアムなどに基地を移設せざるを得なくなるだろう。それにもまして脅威なのが中国の空母建造だ。朝日は1月4日、「中国の海洋戦略本格化」の見出しで、中国東北部・大連で建造中の空母「ワリャーグ」を特集した。中国海軍は今年中にも運用開始する見通しの同空母で、艦載機の発着訓練や防空ミサイル駆逐艦など支援艦艇との合同訓練を段階的に実施すると見られる。ワリャーグは1015年ごろの稼働を目指しており、初の国産空母による空母戦闘群構想が、いよいよ本格的に動き出すことになる。この外洋型海軍は、地球規模の海洋覇権戦略を具体化するものだ、と朝日は報じている。ワリャーグはウクライナから輸入したクズネッツォフ級空母(5万8500トン)を改良中のもので、別にもう1隻を国産技術で建造中という。ワリャーグの艦載機は、ロシアからスホイ33を購入する計画だが、同機をモデルに開発した国産のJ15を使う計画が併存しているといわれる。

10年内に複数空母を運用
 北京の軍事専門家によると、J15は10年に試験飛行に成功したとの情報があるそうだ。朝日の記事を要約すると<陸上施設を空母の甲板に見立てた発着訓練は、既に始まっている。洋上での艦載機発着訓練は次のステップである。護衛のミサイル駆逐艦や潜水艦などとの連携を万全にする合同訓練も欠かせない。米国防総省が公表した10年版の「中国の軍事力と安全保障の進展に関する年次報告書」は、中国で10年以内に複数の空母の運用が実現すると分析している。中国軍は最終的に4個の空母戦闘群を整備し、東シナ海を睨む東海艦隊(司令部・せき江省寧波)と、南シナ海を管轄する南海艦隊(同・広東省湛江)が基地建設を進める海南島への配備を計画しているという。ただ、空母戦闘群は、近海だけでなく、インド洋から西太平洋をも視野に入れたものとみられている。中国海軍はこれまで潜水艦増強に重点を置き、台湾海峡や中国本土に対する米軍艦艇の接近を阻止する戦略に力を入れてきたが、接近阻止だけでなく米国と並ぶ21世紀の超大国として、自ら外洋に進出する戦略的意図がある>

第1列島線~インド洋の制空権
 <外交筋は「東は日本列島―フィリピン諸島の『第1列島線』を超えて、小笠原諸島―グアムの『第2列島線』にまで、西は中東産原油を輸送するインド洋まで、制海・制空権を広げようと言う狙いがあるのは明白だ」と言い切る。一方、空母保有には、愛国主義の高揚を図り、胡錦濤政権の求心力を強めるという重要な政治的意味も含まれている。共産党筋は「高まる国民の大国意識を満足させる役割を果たすのは間違いない」という。ただ、空母戦闘群の運用に必要な中国版GPS(全地球即位システム)「北斗」が全地球をカバーできるネットワークが整うのは2020年とされる。搭乗員の錬度向上を含め、戦闘群を遠洋で運用できるまでには、相当な時間が掛かるとの見方も強い>――。以上が朝日の記事のあらましだ。中国軍事論の権威・茅原郁生拓大名誉教授は同紙面で、「2012年は中国共産党の第18回党大会が開かれ、習近平・国家副主席が胡錦濤総書記の後継となる重要な年。党は国民を喜ばせないといけない。空母は国威発揚の目玉となり得る。ただ、空母が稼働したからといって、戦闘空母を保有したと見るのは早計だ。第一線に配備されるのではなく、実験空母だと思う」と述べている。

尖閣諸島の監視船36隻建造
 だが、中国のGDP(国内総生産)は昨年、日本を追い抜き、世界第2位の経済大国に成長。三菱造船と提携して得た技術をもとに、今や世界屈指の造船大国に躍進している。空母ばかりでなく、領有権を主張する尖閣諸島や南シナ海での海洋監視船を強化しつつある。朝日は1月7日、中国国家海岸局の幹部が6日、今年から新たに36隻の海洋監視船を建造する計画があることを明らかにした。そのうち1千トン以上の大型船が22隻占める、と報じた。これは国家海運局北海分局の房建孟局長が新華社通信の取材に答えたもので、「総延長3・2万キロの及ぶ海岸線を守り、海洋権益を巡り争いが激化している情勢を考えれば、極めて不十分」と指摘。今年から新たに1500トン級7隻、1千トン級15隻、600トン級14隻の建造に乗り出すことを明らかにした。さらに、今年中に島の保護管理に当たるための快速艇を54隻増やす予定という。

自衛隊駐留求めた民主議員鎮静
 防衛省・統合幕僚学校の講義で過激発言をして退官した田母神俊雄前航空幕僚長は最近のテレビ番組で「今の中国空軍が『第1列島線』を越えて出撃すれば、帰途は燃料切れで墜落する。だが、中国に空母が出来れば約100機の艦載機を載せて南シナ海、東シナ海に出没し大変な脅威となる。憲法解釈で集団的自衛権は認められている。早急に行使の可能を実現し、さらに憲法を拡大解釈して別の国軍(義勇軍?)を作り、核が持ち込めるよう非核3原則も見直さないと日本の安全は保てない」との趣旨の持論をブチ挙げた。田母神氏は「先の戦争のことを『日本の侵略というのは濡れ衣』だ」と発言して航空幕僚長を更迭されたが、相変わらず発言は勇ましい。昨年9月の尖閣騒動では民主党議員有志も尖閣諸島への自衛隊常駐を求める声明を出すなどハッスルしたが、今はすっかり鎮静している。クリントン米国務長官は昨年9月、訪米した当時の岡田克也外相に、「尖閣には(日本の防衛義務を定めた)日米安保条約5条が適用される」と明言した。

自民内で領海・領土侵犯法創設
 しかし、中国漁民がゲリラ的に尖閣諸島に上陸、これを保護する名目で漁業監視船(実質は中国海軍の艦船)が警護し、実行支配したらどうなるか。恐らく米国は本格戦争を恐れて積極介入はしないだろう。日本政府がもたつく間に実効支配の既成事実を積み上げられ、韓国が実行支配している島根県・竹島の二の舞にならぬとも限らない。自民党は2月3日、所属議員から公募した政策アンケート482案件を集めたことを発表した。尖閣問題を踏まえた領海・領土侵犯罪を創設する刑法改正案、集団的自衛権の行使を可能にする安全保障基本法案、外国人による土地取得を規制する法案など多彩な案となった。3月末をメドにまとめる政権公約に盛り込むとともに、議員立法として今国会に提案、政策カタログも作成する方針だ。離島防衛は重大である。私が委員長を務める衆院沖縄・北方問題特別委員会など国会で大いに論議を重ねる必要があると考えている。(完)