第236回(2月1日)離島揺るがす問題(中)尖閣実行支配の脅威
 朝日新聞は昨年末、中国軍が東南アジア諸国連合(ASEAN)の国々と領有権を巡って対立する南シナ海で、他国が実行支配する離島に上陸し、奪取する作戦計画を立てていると報じた。昨年9月の尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件はその兆候でもあろう。中国のGDP(国内総生産)は昨年、3年ぶりに2桁成長を遂げて日本を追い抜き、世界第2位の経済大国に躍進した。国防費も2桁台の伸びで空母2隻を建造中。海・空軍力の強化は顕著だ。次世代ステルス戦闘機を開発し、年明け早々に試験飛行したと言われる。中国は南シナ海や東シナ海を最重要な国益である「核心的利益」と位置づけ、軍事力で実行支配しようとしている。南シナ海では武装した漁業監視船による中国漁船の護衛と、他国漁船の違法取り締まりを強化している。菅政権の弱腰外交につけ込み、中国漁民が突如、尖閣諸島(中国名=釣魚島)に上陸し漁業施設などを建てた場合、それを保護する名目で中国軍が同諸島を実行支配する懸念は大いに予想される。韓国は李承晩ライン設定後、勝手に竹島(韓国名=独島)の実行支配を続けている。中国の出方は最も警戒すべきだろう。これら離島防衛は私が委員長を務める衆院沖縄・北方問題特別委で論議されることになる。

中国軍が離島上陸作戦計画
 朝日が12月30日朝刊で報じた記事は、管轄する広州軍関係者の情報として、作戦計画は空幕による防衛力の排除と最新鋭の大型揚陸艦を使った上陸が柱で、既にこれを使った大規模軍事演習を始めている。中国は南シナ海を「核心的利益」と位置づけて権益確保の動きを活発化しており、ASEAN諸国や米国が懸念を深めるのは必至だ。中国は沖縄県の尖閣諸島を巡っても領有権を主張しており、尖閣問題での強硬姿勢につながる可能性もある――と指摘している。朝日によると、中国外交の基本は、鄧小平氏が唱えた「韜光養晦」だったが、これでは外交を弱気にさせるとして、代わりに台頭したのが「核心的利益」。台湾やチベットなど、「いかなる妥協もせず軍事力による解決も辞さない」最重要な国益を指すという。広州軍関係者によると、この作戦計画は一作年初めに策定されたもので、空軍と海軍航空部隊が合同で相手国本国の軍港を奇襲し、港湾施設と艦隊を爆撃する。1時間以内に戦闘能力を奪い、中国海軍最大の水上艦艇でヘリコプターを最大4機搭載できる揚陸艦「こんろん山」(満載排水量1万8千トン)などを使って島への上陸を開始。同時に北海、東海両艦隊の主力部隊が米軍空母艦隊の侵入を阻止する――という。

南シナ海領有権交渉を有利に
 中国軍は計画の策定後、南シナ海で大規模な演習を始めた。一昨年5月、空軍と海軍航空部隊による爆撃訓練を実施。昨年7月には、南海、東海、北海の3艦隊が合同演習をした。主力艦隊の半分が参加する過去最大規模で、最新の爆撃機や対艦ミサイルも参加。演習に参加した広州軍区関係者は「米軍の空母艦隊を撃破する能力があることを知らしめた」と話している。朝日の記事はさらに、昨年11月上旬に行った約1800人規模の中国海軍陸戦部隊の実弾演習や揚陸艦と最新鋭の水陸両用戦車を使った奇襲訓練などを取り上げた後、中国政府関係者によると、領有権を争う南シナ海のスプラトリー(南沙)とパラセル(西沙)両諸島のうち、中国が実行支配しているのは8島。ベトナムが28島、フィリピンが7島を支配するなど中国が優勢とは言えない状況だ。この関係者は「いつでも島を奪還できる能力があることを各国に見せつけることで圧力をかけ、領有権交渉を有利に進める狙いがある」としている――と報じている。

次世代ステルス戦闘機を試験
 朝日は年明け12日朝刊で「レーダーに探知されにくい中国軍の次世代ステルス戦闘機『殲20』の試作機が11日、四川省成都の飛行場で初めて約15分間の試験飛行をした」と報じた。ちょうどゲーツ米国防長官の訪問中で、胡錦濤国家主席には飛行を知らされていなかったとされ、同長官は記者会見で、「中国軍の文民統制について懸念を持っている」と述べ、文民と軍人両方が参加する対話の重要性を強調したという。「殲20」は可動式の垂直尾翼を備え、高い機動性を持ち、中国が初めて自主開発したエンジンを搭載しているとされる。試験飛行は米国防長官の訪中に合わせて最新兵器を誇示し、牽制する狙いが中国軍部にあり、意図的に公開されたと見られる。読売は25日、試験飛行の「殲20」には、1999年に旧ユーゴスラビアで地対空ミサイルによって撃墜された米軍ステルス戦闘機F117の技術が応用されていると報じた。農民が撃墜で散らばった機体の残骸を集めたのを、中国側が買い上げ、ステルス技術を模倣したというものだ。朝日は「尖閣諸島や南シナ海で中国と他国の軍艦や監視船とのニアミスが目立っており、上層部のコントロールの及ばないところで現場の軍が挑発行為に出れば衝突に繋がりかねない」とし、ゲーツ発言は「共産党が軍を指導する」との規約が徹底されず、膨張する軍が暴走して挑発行為や突発事故を起こしかねないことを懸念したものと言える――と詳しく解説している。

対艦弾道ミサイルもほぼ完成
 さらに朝日は16日朝刊に衝撃的な記事を載せた。「中国が、西太平洋で米空母を阻止する切り札として開発を進めてきた新兵器、対艦弾道ミサイル(ASBM)がほぼ完成し、すでに部隊配備も始まった」と報じ、「潜水艦と並んで米海軍が最も恐れる兵器だ。…日本の安全保障にとっても深刻な問題」と、加藤洋一編集委員が解説している。要約すると次のようになる。<ASBMとは、中距離弾道ミサイル(DF21)を改造して、はるか彼方の洋上を航行する空母を攻撃できる新兵器。防衛が難しく「空母キラー」と呼ばれている。ウィラード米太平洋司令官は昨年12月、「IOC(初期運用能力)に到達した」とインタビューで答えた。射程は1500キロを超える。日本列島から台湾を通って南シナ海に至る、いわゆる第1列島線はその中に入る。中国が防衛の目安にしているラインだ。動く標的を追って軌道を変えることが出来、目標に到達すると多数の子弾をばらまき、被害が広範囲に及ぶ。空母の飛行甲板に当たれば、沈没を免れても飛行機の離着艦は出来ない。潜水艦と並んで、中国の「接近阻止・領域拒否」能力を支える主要兵器システムだ> 

状況認識甘い「動的防衛力」
 以上がASBMの性能の要約だが、加藤委員は、これに対抗する米国の新戦略「統合海空戦闘構想」を説明している。これも要約すると、<昨年2月に発表された4年ごとの国防政策の見直しで、「空、海、陸、宇宙、サイバー空間のあらゆる作戦領域で、海空両軍が如何に能力を統合し、米国行動の自由に対する挑戦に立ち向かうかを示す」とし、①抑止が敗れて中国からミサイル攻撃を受けたら、米軍は一旦その射程外まで撤退②態勢を立て直して海空両軍で反撃に転じる――というもの。昨年11月発表の米中経済・安保検討委の米議会報告書は、中国軍が弾道・巡航ミサイルで、三沢、横田、嘉手納各米空軍基地を攻撃する能力を持っていると指摘。韓国の鳥山、群山両基地も含めて有事の際には使用不能となる可能性に触れている。西太平洋で弾道ミサイルの脅威にさらされていない空軍基地は、グアム島だけだ。ところが、防衛省が昨年末に発表した防衛計画大綱には、中国が「接近阻止・領域拒否」の能力を高めているとの状況認識は含まれていない。米の構想が、本格的な戦争を念頭に置いているのに対し、日本の「動的防衛力」は戦争に至らない「グレーゾーンの紛争」への対処を主眼としている>と状況認識の甘さを厳しく指摘している。