第233回(12月16日)太西洋と大平洋のクロマグロ漁獲削減
 48の国・地域が加盟する太平洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)の第17回特別会合(年次総会)は、11月17~27日までパリで開かれ、2011年の大西洋クロマグロ漁獲枠の削減問題を協議した。モナコがワシントン条約締約国会議でクロマグロ禁輸を提案し否決された後、初めての会合。年次総会では東大西洋クロマグロの2011年総漁獲可能量(TAC)を10年の1万3500トンより600万トン減らし、1万2900トンに削減することを決めた。国別割当で日本は10年の1148・05トンから11年は1097・03トンに削減される。地中海産を含む大西洋クロマグロの7~8割を輸入する最大消費国の日本は、年次総会で独自の削減案と乱獲が疑われる国は来年禁漁とするよう提案した。提案は、漁期が始まる前に漁業国に規制順守の計画を作ることを義務づけ、順守委員会の承認を得られない場合、その国に禁漁を求める内容。これに対し、欧州連合(EU)内には当初、6000万トンへの大幅な削減を主張する意見もあったが、フランス、スペイン、イタリアなど地中海沿岸の漁業国は、漁獲枠の現状維持を求めた。スイス紙が「日本の妨害でマグロ資源の保護が出来なくなった」と、乱獲国よりも消費国日本を批判する欧州メディアもあった。マグロ資源の減少は養殖用の稚魚の乱獲にある。

韓国が反対の幼魚漁獲も削減
 韓国が太平洋クロマグロの漁獲を急速に増やしていることも問題だ。黒潮に乗って回遊する太平洋クロマグロは、温暖化現象でその一部が日本海にも回遊している。その中には産卵前のマグロや幼魚のヨコワも多い。韓国は中西部太平洋マグロ類委員会(WCPEC)の「太平洋クロマグロ保存管理措置」に難色を示し、自国EEZ内を管理措置の適用外としている。韓国は日本海回遊マグロを巻き網で一網打尽に乱獲、02~04年の漁獲量は平均約900トンだったが、08年には約1500トン超と増加し、ほとんどが養殖用の幼魚ヨコワで、約1200トンを福岡市中央卸売り市場に上場するなど生産を急増させた。福岡市で9月に開かれたWCPECの北小委員会では日本が提案した3歳以下のクロマグロの幼魚漁獲量を2002~04年の水準より減らす計画を議論した。この規制案が適用されると日本は05~09年の年間平均6千トンから約3割減らす必要がある。だが、韓国が反対して合意を持ち越した。そこで、日・米・韓・中・台湾・EUなど25の国・地域が加盟しているWCPECは12月6~10日まで米ホノルルで年次会合を開き、太平洋クロマグロの漁獲規制の強化策やカツオを大量に漁獲する大型巻き網船の隻数規制などについて協議、日本提案に沿って11~12年の幼魚(3歳以下)の漁獲量を02~04年の水準に抑えることで合意した。日本は提案通り幼魚の漁獲を約3割削減し02~04年の平均約4500トンに抑制する。一方、カツオは日本近海での漁獲量が減少している。

豊田通商が完全養殖で商業化
 WCPECの科学委員会でもカツオ資源量の減少が指摘された。熱帯域で操業する大型巻き網漁船の増加が原因。日本は巻き網漁船の隻数を現状以下に抑制するよう提案したが、こちらも漁獲増を望む太平洋島嶼国などが難色を示し合意に至らなかった。協議を続け来年合意を目指す。マグロ、カツオの安定供給、安定価格実現のためには、乱獲防止と養殖技術の向上以外にない。豊田通商は近畿大学と提携し、クロマグロの完全養殖技術を活用して商業化に乗り出すと9月に発表した。近畿大が人工孵化に成功したクロマグロの稚魚(体長約6センチ)の提供を受け、約3~4カ月かけて体長5~30センチの幼魚ヨコワに育て、養殖業者に出荷する。既に6月、長崎県の五島列島に設立した会社で年間約1万匹を生産する計画。近畿大は国内養殖に必要な40万~50万匹の稚魚を賄う方針だ。国内のマグロ養殖業者は、マルハニチロ、日本水産、日本ハム、双日、三菱商事子会社の東洋冷蔵などが、長崎、鹿児島、沖縄、山口、和歌山など各県下で事業を展開してきた。

長崎県水産試験場はクエ養殖
 各社はこれまで天然の幼魚を約2年かけて体長1メートル程度に育てて市場に供給していたが、マグロ保護強化の勢いに押され、天然養殖魚の確保が難しくなっている。その点、人工孵化から成魚まで完全養殖する豊田通商・近畿大の提携は民間企業としては世界でも初めてで注目を集めている。長崎県科技振興局総合水産試験場はこの夏、フグよりも高級魚であるクエの稚魚約31万匹の生産に成功した。クエの種苗生産は近畿大や独立行政法人水産総合研究センター(大分県)などでも取り組んでいるが、数十万匹レベルの稚魚生産は全国トップクラス。同水産試験場は、有明海側や島原半島、橘湾沿岸でもホシガレイの着底稚魚の分布調査などを行ったが、大型種苗の放流により、飛躍的に回収率の向上が期待されることが確認された。「海の揺りかご」と呼ばれる海藻類の「藻場」整備も重要だ。特にアマモは砂場に地下茎を伸ばし成長する種子植物。海底の泥や水中に酸素を供給、水質と土壌を浄化し、魚の産卵場であり外敵から身を隠す稚魚の成育場だ。大手ゼネコン鹿島建設は神奈川県葉山町の研究施設「葉山水域環境実験所」でアマモの藻場再生実験に乗り出した。脂の乗ったトロのマグロやフグ、クエは冬の味覚の王者。私は自民党前水産部会長として水産業界がこれら高級魚の養殖技術向上にさらに取り組むよう支援する考えだ。