北村の政治活動

 (平成13年12月1日) 7特殊法人の改革 第1関門を突破

 小泉内閣の最大懸案である日本道路公団など7つの主要な特殊法人の改革問題は11月22日、急転直下解決した。道路関係4公団は一体として民営化し、年間3千億円の国費投入は来年度から中止する。住宅金融公庫は5年以内に廃止し、都市基盤整備公団、石油公団も基本的に廃止する。しかし、現行の高速道路整備計画の扱いは「凍結」でなく「見直し」にとどめ、民営化後の組織形態や整備計画の見直しの枠組みについては第三者機関の検討にゆだね、償還期間も「30年」から「50年以内」に譲歩するーーとの内容だ。

 首相は“名”、党は“実”

 これまで約3ヶ月にわたる小泉首相と自民党道路関係部会、国土交通省官僚との綱引きは激烈を極めた。首相が中央突破の強い姿勢を見せたことから「70%以上の内閣支持率を背景に、衆院解散に打って出るのでは」との噂が流れ、これに“抵抗勢力?”が若手政策グループを結成するなど、一時は緊迫ムードが漂った。結局、首相は7公団の廃止・民営化と国費投入ゼロという小泉改革の“名”を貫き、自民党側も「凍結でなく見直しで、30年の償還期間なら今後も高速道は建設できる」として“実”をとり、兵を引き揚げた。

 9342のキーワード

 「反対の大合唱で、与党が阻害勢力になるなら、我が党が総理を応援したい」――。連立を夢見る鳩山由紀夫民主党代表は、改革案決定前日の党首討論で首相をこう激励したが、自民党の鮮やかな戦線撤収ぶりには肩すかしを食ったに違いない。それほど道路問題は紆余曲折があり、まとまりそうになかった。キーワードは四全総で決められた高速道路整備計画の「9342キロ」。このうち約7千キロは整備されたが、残る2383キロの未着工区間を凍結するかどうかが最大の課題で、これを巡って幾通りもの改革案が提示された。

 国費投入はゼロ

 国交省が9月に示した当初案は、本州四国連絡橋公団を単独で早期に民営化し、日本道路公団、首都高速道路公団、阪神高速道路公団の3公団は統合して、整備計画区間の全線開通の見通しを得る20年後に民営化するという内容。これに対し、「全面民営化」に固執する小泉首相は10月1日、扇千景国交相に「現行の高速道整備計画は見直し、国費投入は中止、借入金の償還期間は50年から30年に短縮」を厳命した。首相は民営化をてこに未開通区間の建設を凍結したり、建設区間を絞り込むことで建設費用を大幅に削減する一方、日本道路公団に年間3千億円(道路4公団では計約5千億円)の利子補給をしてきた国費投入分をゼロにすることで財政再建を図りたいからだ。国費投入を打ち切ると高速道路建設の事業費は約5割削減になるという。

 反発の大合唱

 これには自民党交通部会や中堅・若手の集まり「道路問題を考える会」が猛然と反発した。「未整備区間の一部は既に着工し、約5万6千人が建設に従事している。雇用創出の点でも重要だ」「整備計画地域では、道路建設を前提に経済構造が出来上がっている」「道路なくして国家なし」「現状はまさにファッショだ。首相は独裁の大統領ではないはず」と、9342キロ堅持の大合唱が起こった。確かにこの整備計画は99年12月の第32回国土開発幹線自動車道審議会の答申を得て当時の建設、運輸両相が正規に決定している。
「プール採算性の高速道は道路公団が独自で作るもの」と受け止めていた地方自治体も、国の直轄方式に変更されれば、建設費の3割を負担することになるため強く反対した。

 一体と上下分離の2案

 こうした党内論議を踏まえて、国交省と党交通部会などの関係者との間では、4公団を個別に特殊会社化し、高速道の保有は国が関与する新たな独立行政法人が行う案が浮上した。具体的には、管理権限を国に残したまま道路の保有や建設、債務返済、料金徴収などをまとめて民間会社にゆだねる「一体方式」と、独立行政法人の公的機関が、道路の保有や債務償還を手がけて、民間会社が建設や運営を行う「上下分離方式」の2案である。しかし、この案だと、財政投融資資金を使って道路建設が可能となるうえ、実質的には4公団存続になりかねないとし、首相はあくまでも石原伸晃行革相の私的諮問機関「行革断行評議会」が提起した「4公団を統合し、6分割して民営化する」との案にこだわった。

 国交省の新試案

 そこに登場したのが「国費投入ゼロでも、償還期間が50年なら、未開通区間2383キロを今後20年間で建設するのに必要な事業費20兆6千億円のうち、超低利が続けば最高で19兆円が確保できる」という国交省の新たな試算である。これは将来の金利上昇や交通量の落ち込みなどは度外視して、民営化後も固定資産税や法人税などを特殊法人同様に免除されることを前提に試算している。つまり、民営化後も道路の保有などに国が関与できる管理権限を持った「上下分離方式」を念頭に置いたものだ。古賀誠・党道路調査会長も「知恵を出せばやっていける。(民営化は)ブレーキにならない」と述べている。

 “産業の動脈”寸断

 現に第二東名道路などは愛知万博に備え部分着工が進んでおり、計画が凍結されれば既に完了した用地買収などが無駄になる。各府県も高速道整備計画に沿った地域開発を進めている。民営化で採算路線ばかり建設するようでは、全国一体であるはずの“産業の動脈”が過疎地区間で寸断されて均衡ある国土の発展はない。赤字国鉄の二の舞は困るが、やはり地域代表・政治家の発言が通る制度でなければなるまい。その意味で、落としどころを償還期間の「50年を30年に」、計画路線の「凍結を見直し」に変更したことは、「全面民営化」の首相の面子を立て、同時に党側の要求もとり入れた申し分ない解決策といえる。

 国の支出1兆円削減

 政府は与党との合意を受けて11月27日、7主要特殊法人廃止・民営化の基本方針を決めた。道路関係4公団は05年度までの早い時期に廃止・民営化して新組織を発足させる。事実上経営破綻し、4公団一体化に党側が難色を示した本四連絡橋公団は「債務(有利子負債3兆8千億円)を国、関係自治体の負担などで処理し、他の3公団と統合して処理するかどうかは、第三者機関の検討にゆだねる」ことにした。石油公団、都市基盤整備公団も05年度までに廃止、住宅金融公庫は5年以内に廃止する。首相は「残りの法人も徹底的に見直し、国の支出を1兆円削減してほしい」と特殊法人等改革推進本部会議で指示したが、最大手の道路4公団の国費投入中止で、1兆円削減に自信を深めている。

 攻防は第二ラウンド

 内閣府に新設する首相直属の第三者機関は「新たな組織、及びその採算性の確保」の検討を役割として挙げているが、民営化後の組織形態が保有と建設の「一体方式」か、それとも「上下分離方式」か、新組織にどれだけ整備をゆだねるか、などは白紙の状態。従って、道路問題は今後の第三者機関の人選によっては大きく変わるわけで、首相と党側の攻防は第二ラウンドに入ることになる。住宅金融公庫は住宅ローンの融資業務を段階的に縮小したうえで廃止するが、橋本龍太郎元首相の「公庫と同じ姿勢で民間が住宅融資を行ってくれる自信が持てない」との発言もあり、民間金融機関が長期・固定ローンを貸し出せるよう、証券化支援法人を設立してローンを支援することにした。まずは上首尾である。

 各論の改革は山積

 このように小泉内閣は第一関門をクリアした。だが、私の専門分野である“三方一両損”の医療制度改革、農業の構造改革など来年度予算編成に重大な影響をもたらす各論の改革が山積、不況下の雇用関係もますます逼迫している。首相が舵取りを誤れば、どこかの週刊誌が「1月解散」と書いたように、緊迫した局面にならぬとも限らない。絶えず緊張感を持続しながら、私は残る1ヶ月を予算編成と政策立案に全力投球したいと考えている。