第225回(8月16日)九州3県で赤潮被害多発 視察し決議提出
  九州の八代海ではここ数年、秋期に赤潮が多発しているが、今年は梅雨期から長崎、熊本、鹿児島で多く発生。魚価の低迷、魚類消費が冷え込む中で養殖漁業は危機的状況に陥っている。水産庁の調べだと、我が長崎県雲仙市の橘湾東部漁協、南島原市の島原南部漁協、長崎市の橘漁協で高級養殖魚のハマチ(1~3歳魚)、ヒラマサ(2歳魚)、シマアジ(1~2歳魚)、トラフグ(2歳魚)の約6万4千尾が斃死した。被害額を集計中だが、昨年度の3漁協の被害状況は25万5千尾、損害は約4億3千万円に達している。長崎・熊子・鹿児島三県の本年度の被害は、数十億円に達するとの見方もある。赤潮は淡水の流入に伴う表層水の塩分低下によって、塩分成層が形成される時に植物プランクトンが異常増殖し、水深4メートル位まで赤・オレンジ色に染まる。養殖ノリの色が落ちるなど大被害が出るほか、赤潮が養殖魚のエラに詰まり斃死する。私が部会長を務める自民党水産部会は7月20日、熊本県天草・牛深などの赤潮被害を視察した。

激甚災害設定など9項目要請
  視察によって、熊本の被害状況は44経営体に及び、ブリ、カンパチ、シマアジなどに多くの被害が出ていることが分かった。地元の漁業者は地域の基幹産業としての役割を果たすべく頑張ってきたが、自己責任、自己努力には限界がある。視察団は被害状況を同29日の水産部会・捕鯨議連合同会議に報告、水産部会は地元漁業者の要望を網羅して被害対策の決議文をまとめ、同合同会議で採択した。決議は①複数年にまたがる激甚災害として認定し、救済する②口蹄疫対策と同様、手当金の交付と必要な財政的支援を講じる③養殖共済掛金の負担は現状に合った掛金補助体系に見直し、補助率を大幅に引き上げる④赤潮被害養殖業者の決済や返済に対し、災害緊急避難的措置として金融機関に返済猶予、条件変更を講じる――など9項目で、直ちに水産庁など政府へ申し入れた。水産部会としては恒久法的な自民党の赤潮被害対策法案を秋の臨時国会に提出すべく検討に入っている。

水産部会の赤潮被害対策決議
 魚価の低迷、魚類消費の冷え込みなどにより、養殖漁業を取り巻く環境は生産原価に見合わない販売を強いられる厳しい経営状態にあるにも係らず、漁業者は国民へ安心・安全で良質な水産物供給の責務と、地域の基幹産業としての役割を果たすべく頑張ってきている。しかし、漁業者の自助努力にも限界があり、ここ数年の赤潮の多発による被害が養殖漁業経営に追い打ちをかけ自己責任、自己努力だけでは乗り切れない危機的状況に至った。
 現下の経営危機をもたらしている赤潮の発生は漁業者の責任であろうか。赤潮の多発は国民生活の変化、地球温暖化、天候不順など幾つもの要素が複雑に絡み合った結果だ。漁業者の責に帰さない、漁業者にとって自然災害ともいえる赤潮被害による経営危機を、自己責任、自己努力の言葉だけで漁業者のみに負わせることが果たして正義だろうか。漁業・水産業が基幹産業である地域において養殖漁業の疲弊、衰退により関連産業まで含めた就業の場、雇用の場を奪うことは、地方そのものを疲弊、衰退させることではないだろうか。
国、県をはじめとした地方公共団体は、わが国の漁業を今後どうするのか、国民への水産物の供給をどうするのか、一次産業しか就業、雇用の場がない地方における地域住民の生活、地方経済の活性化をどうするのか、過疎化を防ぎ若者が残れる元気な地方にするにはどうしたら良いのか、など幾つもの視点から今後の地方のあり方、これからの国民生活のあり方、などを見据えて食料、産業、地域政策として総合的に構築し、その中にこれからの養殖漁業のあるべき姿を位置付け、夢と希望を持って養殖漁業に勤しめるよう早急に具体的な梃入れを図るべきである。 自民党水産部会は総意をもって下記事項を決議する。

 1.養殖漁業に甚大な被害をもたらす赤潮被害は近年多発しており、同一地域において複数年にわたり養殖漁業が甚大な被害を被った場合には、複数年にまたがる激甚災害として認定し救済すべきである。
 2.口蹄疫対策同様に、国及び地方公共団体は、赤潮被害による斃死魚の処理に係る埋却用地の確保、作業従事者の派遣など必要な措置を講じるべきである。また、国は赤潮被害により斃死した養殖魚の所有者の経済的な支援に資するため、口蹄疫対策同様、手当金の交付及び必要な財政的支援を講じるべきである。これら赤潮被害に対処するための費用は国において負担すべきである。
 3. 養殖共済掛金負担については、現状に合った掛金補助体系の見直しと補助率の大幅な
引き上げを行い、更なる漁業者負担の軽減を図り、加入を希望する漁業者の加入促進を図るべきである。
 4.共済金支払に関しても、現状に則した見直し及び共済加入条件等も現在の養殖実態に合致した早急な改正の要望に応えるべきである。
 5.赤潮被害を受けた養殖業者などの直近の決済や返済に対しては、災害による緊急避難的措置として、金融機関に返済猶予、条件変更の対応を講じるよう金融機関への指導を行うべきである。
 6.赤潮被害を受けた養殖漁業者などへの漁業緊急保証対策事業(セーフティーネット)の融資保証枠(無担保・無保証人での対応枠)の増額と、災害における緊急措置としての別枠の創設を講じるべきである。また、早急な各融資機関での漁業緊急保証対策事業枠融資の実行を図るべきである。
 7.国において、地区内の赤潮被害の心配のない、もしくは回避可能な新漁場を今年度内で設置できるよう、関係機関、関係者に対し科学的知見に基づいた強力な指導を行うべきである。 また、赤潮発生の心配のない養殖漁場へ養殖魚を移動できない養殖漁業者が、赤潮被害を防ぐために足し網等自助努力による対策を講じる場合には、国において助成を行うべきである。
 8.近年、国内各地において赤潮が多発している現状に鑑み、国の責任において各種研究機関間の調査・研究成果の共有をはじめとした連携、協力を緊密にし、発生メカニズムを早急に解明し、県域を越えた協力体制を構築するなど赤潮の予防・防除対策に万全を期すべきである。
 9.赤潮被害の発生により、人災ともいうべき風評被害が発生することがないよう、国の責任において国民へ正しい情報の周知徹底を図るべきである。
 
 
平成22年7月29 自由民主党政務調査会 水 産 部 会