第220回(6月1日)解けるか4次元方程式(下) クルクル変わった出任せ発言
 日米両政府は5月22日の実務者会談で、①沖縄県名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沿
岸部に1・8キロ滑走路を建設②工法や具体的な建設位置は8月末までに決定③基地機能の県外への分散移転を検討――の移設案に大筋合意、28日に外務、防衛担当閣僚(2プラス2)の共同文書として発表した。米軍普天間飛行場移設は①名護市辺野古の沿岸部を埋め立てる現行計画を修正、滑走路は「杭打ち桟橋方式」とする②鹿児島県徳之島の空港にヘリコプター部隊の一部か訓練を移転③普天間や嘉手納基地でのヘリや航空機訓練を全国の米軍、自衛隊基地に分散移転――などを政府の最終案としたが、米国は「滑走路と海面の間に空洞が出来、テロのプラスチック爆弾や上空からのミサイル攻撃によって滑走路が沈む」と杭打ち方式に難色を示し、徳之島への訓練移転に反対したため、現行計画から一歩も踏み出せず5月決着を先送りせざるを得なかった。首相は「3月末までに政府案を一本化したい」と述べながら、月末が迫ると「今月中でなければならないと法的に決まっているわけでない」と詭弁を弄した。今回はさすがに誤魔化しきれず沖縄県民に陳謝したが、首相のクルクル変わる出任せ、場当たり発言が基地問題をややこしくてきた。

県外移設の寝た子起こした罪
 「綸言汗の如し」というように政治家の言葉は重いが、首相は総選挙直前の昨年7月、野党・民主党の代表として沖縄を訪問した際、「最低でも県外の方向」と言い切った。この選挙公約が眠りかけていた県内移設の反対運動に火をつけ、危険性が高い普天間の固定化を避けようと、現行計画を容認してきた中井真知事や島袋吉和前名護市長らの14年間にわたる努力が水泡に帰した。政府が「ゼロベースで見直す」と悠長に構えているうちに、1月の名護市長選では反対派の新人、稲嶺進前市教育長が勝利して辺野古沖合埋め立ての現行計画は挫折、沖縄県議会は2月24日、「国外・県外を求める意見書」を全会一致で可決した。名護市議会は3月8日、シュワブ陸上案にも反対する意見書を同じく全会一致で可決、うるま市議会も同19日、ホワイトビーチ沖建設案に反対する意見書を可決した。そこへ示された県内移設プラス県外訓練分割の2案だ。県内では「県外移設の期待を煽り、寝た子を起こしながら、今さら県内・県外折衷案とは裏切り行為だ。自民党政権よりたちが悪い」と不信、不満が一挙に高まった。もちろん、徳之島、海自大村航空基地、空自新田原基地など訓練分散移転の候補地に挙げられた長崎、鹿児島、宮崎県でも反対運動が起きている。訓練分散について、ウィラード米太平洋軍司令長官は「空輸部隊が陸上部隊と一緒に駐留していることが非常に重要だ」と指摘。海兵隊運用に関する客観的基準としては、滑走路と訓練場が離れているような提案はダメだと即答、あらゆる案を検討しても、現行案がベストだと強調している。

中国は遠海防衛に戦略転換
 防衛省の防衛研究所は3月末、東アジア地域の安全保障・軍事情勢を分析した年次報告書「東アジア戦略概観2010」を公表した。それによると、中国が92年に「領海法」を制定したのを受けて、中国海軍は、沖縄などの南西諸島と台湾、フィリピンを結ぶ「第1列島線」と、小笠原諸島とグアムを結ぶ「第2列島線」の間での作戦を想定、「近海防衛」から「遠海防衛」に戦略転換を図りつつ、今後は太平洋での活動を活発化させるだろうと警告した。3月17日には7,8隻の中国艦隊が東シナ海から宮古島と沖縄本島の間の公海上を通過し太平洋へ抜けた。4月10日は浮上した潜水艦2隻を含むミサイル駆逐艦、フリゲート艦など10隻の艦隊が同じ航路を通り、太平洋上を沖の鳥島方面に南下し演習をした。また、中国軍の軍事力強化については、この10年で①陸軍偏重の是正②装備の国産化③ハイテク・情報化――が進み、遠方展開能力も着実に向上させたと指摘、軍事力でも世界のトップクラスになったと分析している。中国は先の全国人民代表大会で、今年の国防費は5300億元(約7兆円)と決めている。前年実績比で7・5%の増加だ。国際世論を意識してか、1989年以来続いてきた2桁の増加は止まったが、依然として高い伸び率で海、空、宇宙へと軍事力増強、拡大を進めている。上海で空母を複数建造中だし地対艦弾道ミサイルも開発中だ。

第2列島線から西の軍備強化
 ステルス機能を備えた第5世代の戦闘機の試験飛行も近く実施される。1月には弾道ミサイルの迎撃実験を成功させた。3年前には衛星をミサイル攻撃で破壊した。将来は宇宙空間の支配を目指す宇宙軍が創設されるかも知れない。軍備強化の結果、中国軍は「第2列島線」から西側の太平洋水域に米艦線が侵入することを阻止する能力を備え始めた。台湾との統一に向けた戦略だ。海上保安庁は4日、奄美大島の北西約320キロの沖合で海洋調査をしていた同庁の測量船「昭洋」が、中国政府の海洋調査らしき船舶から調査中止を求められて追跡を受け、調査を中断したと発表した。日本の排他的経済水域(EEZ)内にあり、外務省は同日、中国政府に「国際法に沿った調査だ」と抗議したが、中国側は「当該海域は中国の規則が適用される」との見解を示したという。東シナ海のガス田共同開発を巡る日中合意はその後の協議が進展していないが、中国の遠洋海軍充実は、エネルギー資源を確保し、中東やアフリカ諸国から安全に運ぶためのシーレーン(海上交通路)や海洋権益を擁護する狙いがある。その点、沖縄は地政学的にも戦略上の要衝にある。

自前のヘリ専用空母建造案も
 一方、韓国は20日、海軍哨戒艦「天安」の沈没原因に関する韓国軍・民間合同調査団の報告書を発表した。沈没現場付近の海底で回収した魚雷スクリューの破片に記された識別用のシリアル番号や刻印が北朝鮮の字体であることを確認、「北朝鮮の小型潜水艦により魚雷攻撃を受けた」と結論づけ、6月にも国連安保理事会の召集を求めている。首相は再度の訪沖で、緊迫する朝鮮半島情勢を踏まえた米軍抑止力の重要性を指摘し、仲井真知事の協力を求めた。在沖米海兵隊は台湾海峡、尖閣列島、北朝鮮を睨む抑止力として、日本の安全保障上、極めて重要。米海兵隊が撤去すれば、中国が突如、尖閣列島を占拠しないとも限らない。橋本政権下で浮上し予算から消えた名護市沖合に構造物を浮かべる「メガフロート」(空洞の金属製の箱を組み合わせた浮体構造物)案があり、今回再検討されたという。辺野古の杭打ち桟橋(QIP)方式はテロ行為の対象になりやすく、海兵隊が沖縄退去後に杭を撤去するのも難しい。それなら造船不況の折でもある。いっそのこと中国の向こうを張ってヘリ専用の航空母艦を日本が建造し、米国に貸与する方法もあるのではないか。垂直離着陸機「MV22オスプレイ」はある程度の滑走路が必要で空母の使用は難しいが、従来型ヘリなら十分に使え、その方が桟橋建造より安上がりかも知れない。日米同盟50周年の記念すべき年に米側が愛想を尽かして安保条約の打ち切りを提案してきたらどうする。共同文書で米国の顔は立てたが、連立は崩壊、地元の怒りは極限に達し、鳩山退陣を求める国民の声は日増しに高まっている。首相はどのように中央突破作戦を描いているか。お手並み拝見だ。