第218回(5月1日)閣内対立の郵政改革(下)改革阻止―小泉民営化推進派
 郵政改革法案は調整が遅れ、4月30日に提出された。将来的に金融2社の株式をすべて売却する計画だった従来の郵政民営化を大きく転換する内容であるため海外でも関心を呼んだ。米国やEU(欧州連合)の駐日大使も限度額引き上げが、内外の事業者に差別的な取り扱いにならないよう、世界貿易機関(WTO)協定など国際条約を遵守し、公平な競争条件を確保することを求める書簡を日本政府に提出してきた。これに対し、亀井郵政改革相は「小泉、竹中がやろうとした郵政改革に逆行していると言われるが、当たりまえだ。(小泉改革を)否定するんだから」、「民間に限度額はない。日本郵政の限度額を現行の1000万円に縛るのは無茶な話だ」と民業圧迫論に反論。これには小泉元首相の子息・進次郎氏が6日の衆院財務金融委で「民業を圧迫する亀井大臣は逆行している。国民新党の支持率は1%未満。国民の信頼は得られない」と噛みつく一幕があった。亀井氏らは、郵便貯金や簡易保険に集中する資金について、地方債や社債の運用を増やすよう見直し、個人を対象に少額で短期融資することを検討している。特に電線の地中化など地域経済の底上げや、国際協力銀行を通じた日本企業の海外インフラ(社会基盤)整備の受注支援、外国債購入に振り向けるなど民間還流に視点を置いた資金運用に務めるとしている。原口総務相は、資金運用の見直しでは「病院、学校などの公共施設整備に重点を置く」と述べている。金融2社の窓口業務を受託する郵便局に対する金融庁の検査・監督は、一般銀行より緩和する方向だ。

10万人正規社員登用が狙い
 日本郵政は従業員約43万7千人のうち、グループ計約20万人の非正規社員を抱える。亀井氏が限度額引き上げにこだわるのは、この非正規のうち約10万人を、10年度から3~4年かけて正規社員に登用する方針があるからだ。そこには大規模な安定雇用を生み出して「小泉改革からの転換」を強く印象づけようとする意向が強く働いている。だが、非正規社員の雇用安定に繋がる一方、年間で最大3千億円のコスト増になる試算もあり、収益力のさらなる向上が迫られる。正規社員化により、グループの人件費が年間2千億~3千億円程度増えると見られるが、これは09年3月期連結決算の経常利益8305億円の4分の1から3分の1に当たる。それには、出来れば郵貯預入限度額の撤廃も求め、利益優先で公共性を軽視する経営を阻む一方、郵貯資金を増やして収益基盤を固める狙いが亀井氏にあった。非正規の大量採用に伴い、郵政民営化で廃止された「郵政大学校」を復活させて、採用に関する選考や研修を再開するという。このように議論を呼んだ限度額問題は結局、預金や保険の動向を見ながら、法律の施行時に政令を再検討することになった。

訪問介護で自治体と連携も
 経営改革の一環として、官僚OBが役職員で在籍する「ファミリー企業」157法人のうち必要な企業は子会社化し、それ以外は取引を辞める。さらに、事務用品の調達は、東京一括調達から、原則として地方調達に切り替える。自治体との連携では、民間の介護事業者と競合しない地域で、郵便局や配達の社員に介護資格を取得させ訪問介護を実施。宿泊保養施設「かんぽの宿」を介護の必要な高齢者が利用できるようにし、郵便局でのパスポートの申請や手渡しを可能にする。同法施行は2011年10月1日だが、政府の保有株についても、売却の可能性や時期を法律に明記するかどうかは今後の課題とした。これにより、「官から民へ」を目指した郵政民営化の理念は大幅に後退するが、小泉改革を推進してきた自民党の中川秀直元幹事長は、2日の党全議員懇談会で「完全民営化で衆院解散に追い込むことが一番大事だ」とブチ上げ、郵政改革案を阻止する姿勢を明確にした。確かに地域の民間金融機関の預金が郵貯に流れ、中小企業への融資を妨げるなど地域経済に打撃を与えることがあってはならない。「第2の予算」・財政投融資の復活に繋がる郵政改革であっても困る。「大きな政府」に逆戻りだ。私は離島や限界集落にユニバーサルサービスを取り戻すことを最優先にあらゆる角度から法案を検討し慎重審議で臨む考えだ。