第217回(4月16日)閣内対立の郵政改革(上) 亀井・小沢両氏の思惑一致
 国民新党が「1丁目1番地」とする郵政民営化を見直し、郵政グループの組織を再編する郵政改革法案は閣内対立の大騒動の末、ようやく4月20日に提出するが、同法案の主要部分は、郵便、郵貯、簡保の3事業を一体的に運営できるよう組織を改めるとともに、自治体と連携し過疎地の福祉や行政サービスを充実させるため郵便局に介護事業や旅券発行の一部を担わせるのが柱。亀井静香郵政改革・金融担当相の剛腕により、ゆうちょへ銀への預入限度額は現行の1000万円から2000万円に、かんぽ生保への加入限度額は1300万円から2500万円に、それぞれ引き上げられる。旧郵政・旧大蔵両省間では限度額を巡って「郵貯百年戦争」が展開されてきたが、郵政ファミリーにとっては先祖返り以上の収穫である。これは7月参院選で旧特定郵便局長会や旧全逓など郵政40万人の組織票が得たい亀井党首と、連立政権を維持して、選挙前に「政治主導確立法案」など多くの重要法案を成立させたい小沢一郎民主党幹事長の思惑が一致したからだ。郵政民営化で離島などのサービスが低下したことは否めない。法制化では改革が稔るよう努力したい。

限度額は郵貯百年戦争の再来
 改革法案の経営形態は、現在の5社体制を改め、持ち株会社の日本郵政と郵便事業会社、郵便局会社を統合した新たな親会社の傘下に、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険を置く3社体制とする。親会社に対する出資比率と、金融2社への出資比率はいずれも「3分の1超」とした。国民新党は当初、親会社への出資比率を「3分の2超」にすると主張。少なくとも金融2社へは「2分の1超」とするよう検討していた。株式を2分の1超持つと取締役の選任や解任ができ、引き続き公共性に配慮した経営が出来るからだ。だが、2分の1超保有すると上場は難しく、政府関与が強くなることを警戒した金融界や、官業への逆戻りを懸念した民主党内の意見に配慮し、小泉政権の民営化方針と同様、事業譲渡など経営上の重要案件への拒否権を持つ「3分の1超」に統一した。この点について亀井郵政改革相は「政府の関与は必要だが、過度に関与すると日本郵政の自主性が損なわれ、活力が失われる危険性がある」と述べている。限度額については、亀井氏らが当初、ゆうちょ銀とかんぽ生保の経営自由度を高めて収益力を強化し、コストを賄う考えに立ち、郵貯への預入限度額を3年の移行期間は3000万円、簡保は5000万円とし、その後は撤廃する方向で調整していた。

郵貯銀への資金シフト恐れる
 しかし、限度額は、「郵貯百年戦争」当時、利子が10年間で2倍になった定額貯金とともに、民間金融が「民業圧迫」の元凶であると目の敵にし、民間金融を護送船団方式で守ってきた旧大蔵省と田中軍団をバックとする旧郵政省の間で激しいバトルを展開してきた歴史がある。小泉政権は完全民営化まで預入限度額を1000万円としていたが、これと対照的に限度額を大幅に引き上げればペイオフ制度にも響き、ゆうちょ銀行やかんぽ生命保険の信用力が民間金融機関より高いと見なされる状態が続く。それだけに金融界は猛反発。永易克典全銀協会長は「政府の信用力を背景にゆうちょ銀への資金シフトが起きかねない。官業は民業の補完に徹するべきだ」と反対した。金融危機が相次いだ1997年から2年間で、郵貯への資金流入は20兆円超に上っている。農協は「JAグループへの甚大な影響が懸念される」と警戒するが、農協、漁協と郵便局の両方に口座を持つような店舗網が重なる地域金融機関の危機感は深刻。信用金庫や信用組合も懸念は同じだ。

ぺイオフ響くと閣内異論噴出
 亀井氏と郵政担当の原口一博総務相、斎藤次郎日本郵政社長が3月23日にまとめた「最終案」に対し、閣内では異論が噴出。仙石由人国家戦略相は、ゆうちょ銀の資金運用の8割が国債に振り向けられる現状から、「限度額を引き上げてもどう使うか分からない。今もほとんどが国債運用だ。国債への資金集中が経済の縮小を生んでいる」と、民間融資に繋がらない点を指摘。野田佳彦財務副大臣は「官業の民業圧迫だ」と批判した。古川元久内閣府副大臣も、民間金融機関が破綻した場合、元本1000万円とその利子しか保証しないペイオフ制度を取り上げ、「ゆうちょ銀の限度額が2000万円まで上がると、保証額も事実上同額となる。民間との競争条件確保の観点から大きな問題だ」と懸念を表明した。確かに亀井最終案は政府関与を強めながら経営の自由度を拡大する「大きな政府」路線が鮮明になり、「官から民へ」を目指した小泉郵政民営化の理念は大幅に後退。信用金庫など地域の民間金融機関の預金が郵貯に流出して経営を圧迫、中小企業への融資を妨げるなど地域経済に打撃を与える恐れがある。これは参院選の大きな争点になる。(以下次号)