第214回(3月1日)クロマグロ輸出禁止は採択か 日本は反対工作展開
 絶滅の恐れがある野生生物の国際取引を規制するワシントン条約(CITES)の第15回締約国会議は3月13~25日にカタールのドーハで開かれる。同会議はモナコが提案した大西洋クロマグロの国際取引禁止を協議するが、事務局は2月5日に国連欧州本部(ジュネーブ)で開いた会見で、クロマグロの輸出は「禁止が望ましい」との立場を表明し、6日までにモナコ提案を支持し「採択するよう勧告する」との見解を各国政府に伝えてきた。世界一のマグロ漁業国である日本は、大西洋クロマグロの資源管理は十分であるとし、モナコ提案には強く反対している。しかし、イタリアやフランスなど同海域で操業する主要国が相次いで提案支持を打ち出したため、投票国の3分の2以上が賛成すれば採択される可能性が強まっている。そこで、政府は同22~26日までスペインのマドリッドで開かれた「大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)」の遵守委員会に佐々木隆博農水大臣政務官を派遣、同会合で反対のステートメントを発表。関係約20カ国代表を駐スペイン大使公邸に招いて晩餐会を開き、反対工作を行った。私が部会長を務める自民党水産部会でも対応策を協議した。この問題は昨年末のHPでも詳しく取り上げている。

ICCATで4割削減に合意
 モナコが昨年10月にワシントン条約事務局に提出したのは、「ICCATでの資源管理が不十分」としてクロマグロ漁を規制する「国際取引禁止の提案」だ。この提案が3月に採択されれば、シーラカンスやジュゴン、ウミガメなどと同様、国際取引が出来なくなる。太平洋クロマグロの推定資源量は少ないながらも横這いだが、大西洋クロマグロは30年前の3分の1に減っている。特に地中海を含む東大西洋では、生け簀で太らせる蓄養が盛んで、産卵前の幼魚まで乱獲されている。この分では資源枯渇の恐れがあるとして、ICCATは昨年11月、ブラジル東部のレシフェで開かれた年次総会で、2010年の漁獲枠を09年比約40%減の1万3500トンに削減することで合意した。削減率は過去最大で、日本の割り当て漁獲量も同じ比率で減少し1148トンとなる。日本政府は資源管理を強化することで同条約の取引禁止を回避しようとICCATに強く働きかけ、大幅削減の努力をアピールすることで、モナコ提案の最悪事態を避けようとしたわけだ。

世界生産量の8割を日本消費
 モナコが大西洋クロマグロを絶滅の恐れがある種として、ワシントン条約付属書Ⅰ(商業目的の国際取引禁止)へ掲載するドラフトを作り、関係国に意見紹介したのは昨年7月下旬。我が国は8月下旬にモナコ提案には反対であると回答した。フランスは2月3日、モナコ提案を条件付きで支持すると発表。当初はモナコ提案に賛意を表明した米国は昨年11月のICCATで漁獲枠削減の合意を受けて態度を変えようと努力していた。だが、モナコ提案を支持する国も多く、米国、EU(欧州連合)ともに最終態度は未決定だ。米国、EUはむしろ宝石サンゴに関心が強く、宝石サンゴ全種を同条約の付属書Ⅱへ掲載するよう提案している。付属書Ⅱでは、現在は必ずしも絶滅の恐れがなく、商業目的の国際取引や公海での水揚げも可能だが、国際取引には科学的助言に基づく輸出国の許可証が必要となる。日本市場へのクロマグロ供給量は08年が約4万3000トンで、約半分は輸入した大西洋クロマグロ。世界生産量の約8割を消費する大消費国の日本としては、大西洋クロマグロの資源管理は資源管理機関のICCATで、科学的根拠に基づき適切に行われるべきだとモナコ提案には反対しており、マドリッドで開かれたICCATの遵守委員会には佐々木農水政務官を派遣し、モナコ提案の採択阻止に向けて働きかけてきた。特に中南米やアフリカが多くの投票権を持っているので、政府はさらに副大臣を派遣する考えだ。

中国消費急増し50倍1万トン
 クロマグロは最高級のトロがとれ、寿司、刺身の王者として日本では人気抜群。08年の日本輸入量は太平洋クロマグロが3800万トン、大西洋クロマグロが18700トンで計2万2500トン。クロマグロ漁の国内生産量は太平洋が17800トン、大西洋2700トンで計2万500トン。このように太平洋と大西洋の供給割合は5分5分で消費量は総計4万3000トン。世界のクロマグロの7~8割は日本で消費されており、欧州や北アフリカ諸国では日本への輸出が目的で蓄養が盛んだ。蓄養国は巻き網漁法で産卵前の幼魚まで漁獲するため、資源の枯渇が懸念されている。国際取引が禁止されれば、日本に入って来る太平洋を含むクロマグロは半減、価格が高騰する恐れがある。注目されるのは、経済発展が著しい中国でクロマグロの消費が伸びていることだ。読売は1月末、「上海では近年、回転寿司の開店が相次ぎ、店の総数は50を超え刺身を出す和食店も400以上ある」と紹介、「脂がのった大トロにはまった」豊かな中産階級が毎週食べにきていると報じている。中国のマグロ消費量は2000年の約200トンから08年には50倍の約1万トンに急増。海産魚貝類消費はこの10年間で年約1000万トンに倍増したという。

養殖餌の小サバも値上がり中
 朝日新聞によると、マルハニチロホールディングスは国内8カ所で養殖をしており、申請中の漁場を含め、11年度には08年度の2倍近い3千トン程度の生産を計画中で、スーパーなどでも養殖マグロが出回っている。だが、養殖の餌にしていた小サバなどを長崎県の漁業者が音頭とって中国に食用として輸出し始めたところ、これまた中国で倍の値で売れ出したことから対中輸出が増え、3~5割値上がりしたという。中国の需要増により、中長期的には日本の魚は全般的に値上がりするのは避けられないようだ。自民党としても国民生活に悪影響を与えないようモナコ提案は粉砕しなければならないが、養殖技術の改善などについても検討を深めなければならないと考えている。