第213回(2月16日)シーシェパード妨害が拡大 対応策を協議
 南極海で活動する日本の調査捕鯨団に対し、反捕鯨団体「シーシェパード」(SS)の妨害行為がエスカレートしている。昨年12月14日には捕鯨船「第2昭南丸」に異常接近してきたSSと放水合戦を演じたが、1月6日に発生した事故はSSが初めて投入した抗議船の小型高速船「アディ・ギル号」(AG号)と昭南丸が衝突、AG号は大破・漂流した。私が部会長を務める自民党水産部会は外務省、水産庁から事故概要の説明を聞き、対応策を協議したが、SSに同情的だったオーストラリアでも過激行動への反感が高まり、豪国民の不満は、事態を抑制出来ないラッド政権に向かっている。豪州の主張は、自国が南極大陸の1部に領有権を持ち、その沖合は「排他的経済水域」(EEZ)にあたるため、日本の捕鯨は違法――と言う論拠。だが、領有権が確定していない南極で豪がEEZを主張するのは無理な話。調査捕鯨は国際捕鯨取締条約に基づく正当な行為であり、1987年から南極海と西太平洋の2海域で実施、年間約1千頭の捕獲計画を国際捕鯨委(IWC)に届けており、国際司法裁判所に持ち込めば確実に勝てる。日本は南極調査捕鯨の危険を早急に解決するため、6月にモロッコで開くIWC総会で具体案を提案しなければならない。

再発防止と予算充実を党要求
 自民党は1月22日、党本部で水産部会(北村誠吾部会長)を開き①「シーシェパード」による調査捕鯨妨害活動②五島・福江島西方の漁船沈没事故③水産関係の21年度第2次補正予算と22年度予算案④22年度水産税制改正案⑤有明海ノリの色落ち問題――について内閣官房、外務省、水産庁から説明を聞いて対策を討議、2月8日にもSS妨害問題と大西洋クロマグロの国際取引禁止問題を協議した。調査捕鯨妨害活動について水産庁の本村祐三資源管理部長は「1月6日11時頃から船団を追尾してきたSSの妨害船「ボブ・バーカー号」(BB号)とAG号は日新丸、第2勇新丸、第3勇新丸に異常接近し2時間妨害、BB号は監視船の第2昭南丸に酪酸らしき液体の入ったビンを投げつけた。第2昭南丸はAG号の接近を阻止しようと長距離音響発生装置(LRAD)と放水で警告したが船首の右舷側から左舷側に横切るAG号が急速に減速したため、第2昭南丸は避けられず衝突、AG号は船首部分が大破し乗組員は近くにいたBB号に救助された。第2昭南丸の船体に大きな被害はなく乗組員にも怪我はなかった。その後、AG号は漂流中だ」と説明した。水産庁の調査捕鯨妨害対策予算は年間約8億円が計上されている。党側からは、①監視用の巡視船を強化するなど、予算を充実すべきだ②悪質な犯罪行為が再発しないよう、水産・捕鯨の主権と人命の安全を確保するため、万全の体制を構築すべきだ③巡視船に豪政府要員らを同乗させ危険な実態を視察させてはどうか――などの意見と要望が出された。

レーザー照射、酪酸撃ち込む
 財団法人日本鯨類研究所によると、SSの新船BB号は元ノルウェー捕鯨船(1200トン)で、同国の国旗を掲げているがトーゴの船籍。モーリシャスを昨年12月18日に出航、AG号とともに活動している。AG号は昨年12月23日、第2昭南丸(SM2)に仕掛けたと同様に調査母船日新丸(NM)の船主直前を衝突寸前の距離で走り回り、船尾からブイの付いたロープを何度も投入してスクリューや舵に攻撃をかけたり、NM乗務員にレーザー光線を頻繁に照射した。さらに、ランチャーの様な発射装置を使って酪酸を詰めたボールの様な物体を撃ち込み、1個がNM甲板に着弾した。NM側はLRADの警告と放水で接近を阻止した。肉眼に照射すれば失明の恐れがある高出力レーザーを頻繁に照射し、皮膚や眼に極めて有害な酪酸を撃ち込むなどSSの妨害はより過激になり、犯罪的な行為が平然と行われている。スクリューめがけて投入されたロープは洋上のゴミとなり南極の環境を破壊している。

第2昭南丸はSS監視・追尾
 実は、第2昭南丸はSSの抗議船を監視するのが最大任務。ゆえに母船の船団とは離れて航行。「スティーブ・アーウィン号」(SI)が12月7日に豪州を出港した直後から追尾を続け、その位置を母船に逐一報告、SIが船団に向かったら見つからないように船団を逃がしていた。同14日にSIが300メートルまで接近してきたため警告の意味で放水すると相手も応じて放水合戦となった。SIは燃料補給のため一旦豪州に戻ったが代わりに23日にはAG号が20メートルまで接近してレーザー光線で乗組員の視界を遮るなど29日までに昨年末は計4回の妨害行為をした。SIは2月8日に現場に復帰し、調査船団のスクリューを狙ったロープの投げ入れや母船NMに対しレーザー光線の妨害を再開した。BBもNMにレーザー光線を照射した。このようにSSの妨害行動は年を追って拡大、悪質化している。SSは環境保護団体「グリンピース」メンバーのポール・ワトソン代表(カナダ出身)が1977年に設立した。86年にアイスランドの捕鯨船を沈没させ、2005年から日本の調査捕鯨を妨害。これまでに日本の乗組員5人が負傷し、警視庁はSSの4人を威力業務妨害容疑で国際手配している。調査捕鯨団は母船の日新丸など6隻で編成、昨年11月19日に日本を出航、12月中旬から南極海で捕獲を開始していた。

保護名目で資金集める危険集団
 日本捕鯨研究所に入った船団の報告によると、母船NMの後方から追尾していたSI号とBB号は11日午後から12日にかけ、9日の妨害に引き続き放水しながら接近、監視船SM2に高出力レーザーの照射や酪酸弾、発煙弾を撃ち込んで乗組員3人に怪我を与え、スクリューを狙ったロープの曳航などで執拗に妨害した。さらにSI号はボートを降ろし、ランチャーを使って赤い塗料を母船NMに多数撃ち込んだ。15日には大破したAG号の元船長が水上バイクでSM2に近づいてよじ登り、「損害賠償の要求とSM2の船長を逮捕するため乗り込んだと」語った。同研究所は、シーシェパードが自ら主張するような環境保護団体ではなく、「鯨保護を名目に資金を集めて暴力をまき散らすだけの危険な集団である」と指摘、「調査船と乗組員の安全を脅かす危険な暴力行為」を強く非難している。また、トーゴ船籍のBB号に加え、AG号がニュージーランド、SI号がオランダの船籍であるため、これらSS船の船籍国が直ちにSS船の船籍を抹消し、犯罪行為に厳正対処するよう強く求めるとともに、SS船に事実上の母港を提供し、資金の主要供給源になっている豪州の政府関係者に対しても、SSの暴力行為が再発しないよう努力して欲しいと要請している。ラッド政権の豪労働党は2007年の総選挙で、「日本の調査捕鯨の違法性を国際法廷で訴える」と公約、反捕鯨の環境団体「グリンピース」の元理事ギャレット氏を環境相に起用した。このため、第2昭南丸とAG号の衝突後も「(捕鯨船団と抗議側の)双方に危険行為の自制を求める」との公式発言を繰り返すにとどめ、豪国内にもこれまでは日本を批判する意見が多かった。

豪世論は過激行動に反感示す
 しかし、読売新聞の報道では、衝突時の映像がテレビなどで放映されSSの無謀な抗議行動が人命に関わる危険な事態であることが判明すると、豪の有力紙「オーストラリアン」が社説で一連の抗議行動を「傲慢で理屈に合わない。政治家と記者は(SSの)活動家への支援を止めるべきだ」と訴え、SSとの決別を宣言した。読者投票でも衝突の責任はSS側にあるとの回答が多いという。シドニー・モーニング・ヘラルド紙の社説もSSの行為を「違法すれすれの極めて危険な遊び」と非難。日本側の「防衛的措置は合法」と報じた、と伝えている。このように、SSに同情的だった豪州の世論は過激行動への反感に転じ、国民の不満はエスカレートする事態を抑制できないラッド政権に向かい始めているようだ。豪の野党からは、「豪州から船を派遣して双方の動きを監視すべきだった」などの無策批判が噴き上がり、豪政府内にも、主要貿易相手国である日本との関係悪化を懸念する向きがあるという。赤松宏隆農水相は5日の記者会見で、「6月にモロッコで開くIWC総会では、日本沿岸でのミンククジラ商業捕鯨を再開する代わりに南極海での調査捕鯨を見直してもよい」との意向を表明、条件次第では調査捕鯨を縮小する考えを示唆した。SS問題は日豪間の非公式な外交折衝を含め、捕鯨維持を前提にねばり強く解決を図るべきだ。