第212回(2月1日)中国が給油引継ぎ検討 安保政策の重大変更
 インド洋で多国籍海軍に給油活動を続けてきた海上自衛隊は1月15日、活動の根拠法である新テロ対策特措法の期限が切れたのに伴い、活動を終了した。8年余に及んだ活動は同日午前、パキスタンの艦船に対し補給艦「ましゅう」と護衛艦「いかづち」が最後の給油を行った後、両艦は帰国した。我が佐世保基地から多くの海自隊員が出動したが、1人の犠牲者も出さず無事に任務を完了したことは隊員諸君の大きな誇りである。炎熱地獄の中、過酷な活動に従事されたことにまず感謝し、8年間の労苦を心からねぎらいたい。給油は日本と中東を結ぶ重要なシーレーン(海上交通路)の安全確保にも役立ち、国際的にも高い評価を受けていたが、鳩山首相は「日本には他の貢献の仕方がある」と述べ、特措法を延長しなかった。テロとの戦いは日本の平和と安全に直結するが、国際社会の1員としての責務を放棄したことは真に遺憾である。早くも中国海軍が給油引き継ぎを検討するなど、中東への影響力を強化しつつある。普天間飛行場の移設問題で亀裂の入った日米関係は給油終了でさらに冷え込んだ。私は安保政策の重大な変更として国会で追及したい。

代わりに50億ドル資金援助
 給油活動は2001年9月の米同時テロ後に始まった。テロリストの洋上逃走、武器や麻薬の密輸を監視するため、多国籍海軍による海上阻止活動には当初、米英など10数カ国が49隻を越す艦船を派遣、その後も5~10カ国が艦艇を派遣した。日本は米同時テロで24人の犠牲者を出しており、テロとの戦いに協力するのは当然だ。そこで、直接のアフガニスタン支援ではなく、同年12月から各国海軍への燃料補給を開始した。従来の国連平和維持活動(PKO)とは法的枠組みの異なる、新たな国際平和維持協力活動で、法律上も、部隊運用上もハードルは高かった。野党時代の民主党は、自衛隊の海外派遣である給油活動は「憲法違反だ」と主張し、07年11月のねじれ国会では特措法が期限切れ・失効となった後、同党などの反対で新テロ対策特措法の成立が遅れたため、給油を一時中断した。さらに政権交代後はいち早く給油停止を宣言、岡田克也外相は昨年秋、予告なしにアフガンを訪問、カルザイ大統領にタリバーンの元兵士に職業訓練など新たな支援策として5年間で50億ドル(約4600億円)の資金援助を確約した。日本は既に農業インフラ整備、警官の給与肩代わりなど2000億円の民生支援で貢献してきている。

資金より給油継続が効率的
 だが、給油活動の年間経費は50~70億ドル。昨年からは月6回程度に減少したため、トータルでは51万キロリットルの240億円に過ぎず、アフガン支援は資金的にも給油継続の方が遙かに効率的だった。20年前の湾岸戦争では海部俊樹内閣が莫大な資金を拠出したが、国際的には評価されず、米国のリチャード・アーミテージ元国務副長官に「ショウ・ザ・フラッグ」と海外派兵など人的貢献を要求された経緯がある。給油活動は海自がインド洋で日章旗を掲げることでプレゼンス(存在)を示し、関係国と連携を深めて様々な国際テロ情報を入手でき、中東でのシーレーンの安全確保にも役立ってきた。米国も日本について1996年の日米安保共同宣言、イラクやインド洋への自衛隊派遣などを通じ、グローバル・パートナーに成熟しつつあるとの認識を深めていた。ところが鳩山政権は給油ニーズの減少を理由に給油活動を終了した。確かに1月の給油は1回だけだったが、背景にはインド洋に隣接するアデン湾などアフリカ・ソマリア沖で多発する海賊被害がある。

何より重要なシーレ-ン確保
 各国とも艦艇を海賊対策に振り向けざるを得なくなった。海自の給油対象は海上阻止活動を担う各国の艦艇であったから、ピーク時には月20回以上あった給油は昨年から月平均6回程度に減少していた。しかし、アフガンで生産されるアヘンの密輸は急増しており、タリバンやテロ組織は麻薬密売で得た資金を武器の購入に充てており、各国艦艇が給油のために現場を離れると、監視の目が緩み密輸がやりやすくなる。海自の活動は各国艦艇に感謝されていたばかりでなく、給油活動や日本との往復の合間に、沿岸国や周辺イスラム諸国と親善訓練を行うなど関係強化も図ってきた。何よりも重要なのが日本と中東を結ぶシーレーンの安全確保だった。それに取って代わり中東で影響力を行使しようとしているのが中国だ。16日の読売は「政府関係者によると、中国政府の内部文書に、中国海軍がインド洋での給油活動に備え、訓練を行っていると明記されているという」と報じている。

中国はエネルギー安保が狙い
 中国は、ソマリア沖の海賊対策に艦艇を派遣するなど、中東近海で軍事活動を積極的に展開、97年11月に海自の給油活動が中断した際には、中国軍関係者が米軍に対し、海自の活動を引き継ぎたいと非公式に打診してきたという。今年、GDP(国内総生産)で日本を追い抜き、米国に次ぐ世界第2の経済大国になると言われる中国は、21年連続で軍事費2桁増を続け、台湾海峡を威圧する空母建造も始める勢いだ。中国の軍拡の流れは止まらず、中東産原油の調達ルートを確保するエネルギー安全保障上の狙いもあって、インド洋で給油活動を行うことで中東への影響力を強めたい思惑があると見られる。アフガンでは40カ国以上の部隊が1500人を超える犠牲者に耐えつつ、治安維持や復興支援に従事している。オバマ米政権は、イラクの兵力を撤退させる代わりにアフガンに3万人追加の増派を決めたが、米国民は「アフガンのベトナム戦争化」を懸念して反発、政権の支持率が50%を割り込んでいる。それゆえ、他国のように人命のリスクを伴う直接のアフガン支援でなくとも、米国はじめ参加国艦船への海自の給油活動は需要が多く感謝され、日本に適した軍事的貢献であったとして、日米同盟の強化に深く繋がっていたのは事実だ。

名護市長選敗け日米同盟に亀裂
 1月19日は日米安保改定署名の50周年記念日。安保改定は、1世代前に作られた同盟関係を東西冷戦の状況の中で、東アジアの恒久的な安全保障について、米国が戦略的保証を与え、日本が基地を提供するという単純な合意だった。だが、これで日本は周辺国に再軍備の警戒感を与えず、経済の復興と成長に専念でき、戦後の画期的な躍進を遂げた。鳩山政権は昨年の日米首脳会談で「日米同盟の重層的深化」で合意しながら、同盟の基盤である基地問題で迷走した結果、24日の名護市長選では辺野古移設容認派の島袋吉和現市長が敗れ、日米合意は宙に浮き、日米同盟は亀裂を深くした。首相が具体的展望のないまま県外移設に言及し、迷走した結果、「県外、国外移設」に期待する県民世論が過剰に高まり、反対派の稲嶺進・前市教育庁が僅差で当選したからだ。中国の急速な台頭と軍拡路線、北朝鮮が狂奔する核開発の野望、エネルギー超大国に復活するロシア――。北東アジアの緊張は高まっており鳩山氏持論の「常時駐留なき安保」は幻想だ。米軍が撤退すればどうなるか。1992年に米国がフィリピンの要求に応え基地を撤収、比が混乱したのを見ても一目瞭然。私は機会があれば国会で安全保障について論陣を張りたいと考えている。