第208回(12月1日)漁獲枠4割削減 激減の大西洋クロマグロ
 乱獲で激減している大西洋クロマグロ(本マグロ)について、ブラジル東部のレシフェで開かれていた「大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)」の年次総会は、最終日の11月15日、2010年の漁獲枠を09年比約40%減の1万3500トンに削減することで合意し、閉幕した。削減率は過去最大で、日本の割り当て漁獲量も同じ比率で減少し1148トンとなる。モナコがワシントン条約(CITES)事務局(ジュネーブ)に対し、大西洋クロマグロの国際取引禁止を提案しており、同条約の締約国会議で全投票数の3分の2以上が賛成すれば輸出入が全面禁止となる。ICCATは大幅削減の努力をアピールすることで、禁輸の最悪事態を避けようとしている。 特に日本市場へのクロマグロ供給量は08年が約4万3000トンで、約半分は輸入した大西洋クロマグロ。日本政府は資源管理を強化することで同条約の取引禁止を回避しようとICCATで強く主張してきた。モナコ提案に賛意を表明していた米国は漁獲枠削減の合意を受けて態度を変えようとしているが、モナコ提案を支持する国も多く来年3月にカタールで開かれる締約国会議まで油断は出来ない。自民党も私が部会長を務める水産部会で対応策を協議している。
この問題は10月1日のHP「北村の政治活動」でも取り上げたが、続報したい。

ワシントン条約提案が焦点
 49の国・地域が加盟する大西洋マグロの資源管理機関・ICCATの年次会合は同月9~15日までレシフェで開かれた。焦点の議題はモナコが10月に「ICCATでの資源管理が不十分」としてワシントン条約事務局に提出した「国際取引禁止の提案」だ。この提案が来年3月に採択されれば、シーラカンスやジュゴン、ウミガメなどと同様、国際取引が出来なくなる。太平洋クロマグロの推定資源量は少ないながらも横這いだが、大西洋クロマグロは30年前の3分の1に減っている。特に地中海を含む東大西洋では、生け簀で太らせる蓄養が盛んで、産卵前の幼魚まで乱獲されている。この分では資源枯渇の恐れがあるとして、昨年11月の年次会合では、09年の漁獲量を2万2千トン、10年は1万9950トン、11年は08年比で35%削減する1万8500トンとの方針を決めたが、削減幅が小さく、自然保護団体などが抗議していた。しかし、今年10月に専門家のICCAT科学統計委員会がまとめた報告では、同海域のマグロの資源量を増加させるため、総漁獲量を1万5000トン以下に抑えるよう勧告した。これには、蓄養に力を入れるスペインやフランスなどが抵抗し、ICCATは勧告に沿う規制を打ち出せずにいた。

稚魚捕れない場合は全面禁漁
 このままでは、モナコの呼びかけに賛同する国が増えることになると懸念した日本政府は1万5000トン以下の勧告に沿って漁獲量を削減するよう、資源管理の強化策を主張した。この結果、10年当初に予定されていた1万9950トンの漁獲量を09年比38・6%減の1万3500トンとし、11年漁獲量についても、08年に合意した1万8500トンを白紙に戻し、10年の年次会合での科学委員会の評価を踏まえて新たに設定することで合意した。年次会合では「ワシントン条約(CITES)で一切の商取引を禁止されるより、ICCATの信頼を取り戻して漁業の継続を図るべきだ」として来年1年間の休業も議論されたが蓄養国が拒否。当面の漁を抑制し、23年までに5万トンの漁獲が出来るよう漁獲枠を約4割削減し、科学委員会が10年に行う資源評価に基づいて漁獲を減らす行動計画について始めて妥結した。仮に稚魚が捕れないなど異常事態が起きた場合、大西洋マグロ漁を全面禁止する緊急措置も盛り込んでいる。 

日本でも3千トンの養殖計画
 太西洋クロマグロは最高級のトロがとれ、寿司、刺身の王者として日本では人気抜群。08年の日本輸入の合計は2万1400トン。太平洋クロマグロも含めた世界のクロマグロの7~8割は日本で消費されており、欧州や北アフリカ諸国では日本への輸出が目的で蓄養が盛んだ。蓄養国は巻き網漁法で産卵前の幼魚まで漁獲するため、資源の枯渇が懸念されている。国際取引が禁止されれば、日本に入って来る太平洋を含むクロマグロは半減する。だが、日本では最近、節約志向もあって高級魚の消費が鈍る一方、国内での養殖が増えたことから、漁獲枠削減は直ちに価格高騰に繋がらないと見られる。朝日によると、ある大手全国スーパーでは、クロマグロの刺身の半数を大西洋産で占めているが、担当者は「太平洋産や国内産で代替できそうで、仕入れに問題はない」と話している、という。天然物よりやや脂身が多いとされる養殖だが、マルハニチロホールディングスは国内8カ所で養殖をしており、申請中の漁場を含め、11年度には08年度の2倍近い3千トン程度の生産を計画中だと朝日は報じている。

 在庫量最大で値上げ心配なし
 在庫も積み上がっており、水産庁の統計ではクロマグロなど高級マグロの国内在庫量は9月末現在で計2万4600トンと、ここ10年で最大。9月の築地市場で冷凍クロマグロの1キロ当たり平均価格は、前年同月より23%安い3032円で、今年は4千円を超えていないという。正月に向けても値上がりはなさそうだ。昨秋の金融危機以来、庶民が財布の紐を引き締め、消費が落ち込んでいるのも事実。高級マグロに偏らない消費生活が望ましい。朝日は11月19日の「天声人語」に<居酒屋で「めったに入荷しないんです」と勧められると、つい「それでは」となる。遠からず幻の味になるかと聞けば、今のうちにと腰が浮く>と書き出しながら、<江戸期までマグロは下魚で、とれたら肥料にしたという。サツマイモやカボチャと並べ、「ちゃんとした町人は食すのを恥じる」と書かれたこともある>と続け、<味覚や食文化は意外に浮気者だ。ゆえに「クロ偏重」も永遠とは限らない>とし、<マグロにはトロで見劣りしないミナミ(インド)をはじめ、メバチ、キハダ、ビンナガとある。…広く薄く、おいしくいただくのが、海への礼儀であり、料理の腕の見せどころではないか>と結び、高級マグロの消費を減らすキャンペーンをした。

党水産部会でマグロ対策協議
 20日の自民党水産部会では、①大量クラゲ来襲②水産税制改正③マグロ対策④WTO(世界貿易機関)の水産分野対応――などを協議した。先号のHPで詳しく解説したエチゼンクラゲについては、「業者が安心して漁に取り組めるよう政府が対策を講ずるべきだ」との決議文を採択、政府に申し入れた。決議は①被害が拡大しないよう早急に対策事業予算の追加手当を行う②駆除では他に被害を出さないよう死滅を図る③洋上駆除と漁獲作業との峻別を止め、駆除作業の軽減を図るよう弾力的に運用する④洋上駆除の効率的作業への技術開発を一層促進する⑤政府が責任をもって外交努力で中国沿岸水域での原因究明と削減に万全を期す⑥激甚災害に匹敵する自然災害だけに漁業共済制度を拡充すべきだ――など9項目を掲げている。マグロについても現状を分析、対応策を検討したが、政府が漁獲枠削減など資源管理の徹底、産卵から育てる養殖技術の高度化、漁業規制だけに限らない流通、消費の見直し――などを図るよう今後も働きかけたいと私は考えている。

カツオ、マグロ漁業協で挨拶
 自民党の水産部会長として私は27日午後、東京都江東区で開かれた全国鰹鮪近代化促進協議会の総会で要旨次のように挨拶した。
1.カツオ、マグロ漁業を巡っては、モナコがワシントン条約による国際取引禁止を提案するなど、国際規制の高まり、燃油の高騰、乗組員の不足など課題が山積している。わが党は、国民食生活の代表的な水産物であるマグロを供給する重要な産業であり、地域の活性化に欠かすことのできない基幹産業であるマグロ漁業の振興に向けて、乗組員に対する規制の緩和、経営支援、高騰する燃油に対し最大9割補てんする燃油高騰対策、新規漁場開拓への支援など、全力を傾注してまいった。
2.現民主党政権は事業仕分けの名のもと、事業の廃止、予算計上見送り、削減、基金の国家返納を決めている。漁業の厳しい状況を打開し緊急事態に機動的に対処するため創設した水産業燃油高騰緊急対策基金や漁船漁業構造改革総合対策基金などをこの事業仕分けで返納、漁村総合整備事業が予算要求で減額とされている。私たちには到底理解できない。
3.原油価格は今なお右肩上がりに動いており、漁業者が安心して操業できる基金は益々必要だ。我々は国民から負託を受けた国会議員として、これまで同様、皆様方現場の声を水産部会で十分にくみ上げ国会の場で堂々と政策論議を行い、国政に反映させて参りたい。