北村の政治活動

 (平成13年10月16日)困難な医療保険改革 高齢者に“痛み”

 小泉改革の中で大きな“痛み”を伴うのが医療制度改革。毎年1兆円ずつ膨らむ医療費の伸びで、現在の医療財政は破綻寸前にある。小泉首相は厚生労働省の事務次官を呼び「三方一両損だ。とことん厳しくやるように」と叱咤激励した。その結果生まれたのが、9月25日に同省が発表した医療保険制度改革試案だ。三方とは、患者、医療機関、健保・政管健保・国保などの保険者を指す。確かに試案は高齢者やサラリーマンの負担増と、医療機関にも大胆なメスを入れ、痛みを分かち合う内容である。日本医師会は反発を強めているが、自民党内にも「制度を変えない単なる数字いじり」との批判がある。政府は次期通常国会に制度改革の関連法案を提出するが、衆院厚生労働委員会に属する私としては、法案を煮詰める段階から徹底的に具体策を検討して、国民の期待に応えたいと考えている。

 自己負担の大幅アップ

 改革試案はまず、医療保険の財政安定化策として、@サラリーマンの自己負担を2割から3割に引き上げ、月収基準で徴収している医療保険料をボーナスも含めた年収基準に改めるA高齢者医療制度の対象者を70歳から75歳へ段階的に引き上げ、自己負担を原則1割から2割にアップするBこの負担アップには高所得高齢者者も含めるC窓口負担の月額上限(最高5千円)を撤廃するD高齢者医療費に総額管理制度(キャップ制)を導入するE三歳未満の乳幼児の自己負担を3割から2割に引き下げるF診療報酬をマイナス改定するG薬価算定ルールを見直すーーが骨子。一方、医療サービスの効率化策では@電子カルテ、レセプト電算化など医療機関のIT(情報技術)化と情報開示で患者の選択拡大A医療機関の格付けや広告規制の緩和――などを挙げている。

 保険運営団体は大赤字

 わが国の総医療費は年額約30兆円で米国に次いで2位。毎年膨れ上がる医療費で、大企業のサラリーマンが加入する健康保険組合、中小企業の政府管掌健保、自営業者や退職サラリーマン加入の国民健康保険が、いずれも赤字に苦しんでいる。景気低迷で給与が伸びず、給与額に比例する保険料が減る半面、少子高齢化の進展で高齢者医療費のための拠出金負担が増え、99年度には計約7千億円の赤字を計上している。政管健保は02年度に積立金が枯渇するといわれる。中でも高齢者医療費は3分の1の約10兆円と巨額。年率8%を超える伸び率を示しているが、このままでは2025年の総医療費は80兆円で、うち45兆円を70歳以上の高齢者医療費で占めることになるようだ。

 無駄な構造なくせ

 朝日新聞は9月末の社説で「治療の回数や薬の量が多いほど医療機関の報酬も多くなる出来高払い方式は無駄も多い。高齢者と若者の1人当たり医療費の格差を比べると、欧米は2,3倍だが、日本は5倍と大きい。通院や入院の頻度が高いためだ。同じ病気で複数の医療機関にかかる“はしご受診”も多い」と指摘、医療費の無駄な構造に大胆に切り込むことを提唱した。確かに病院の待合室は孤独な老人のコミニュケーション広場と化している。朝日社説が主張するように「患者のコスト意識を高め、医療に競争原理を導入し、優れた病院が患者に選択され、劣る病院は淘汰される仕組みも必要」だろう。

 診療報酬引き下げへ

 厚労省の改革試案は、これまで優遇されてきた高齢者にも応分の負担を求め、高齢者医療の伸びを少なくとも4%にとどめることを目標に策定された。だが、改革試案が全て実施された場合でも、02年度の国費支出は1千億円の削減にしかならない。02年度の概算要求基準は、5500億円と予想される医療費の自然増を2700億円に抑えることにしており、その差額2800億円を削減するには制度改革による1千億円の削減だけでは追いつかない。試案では、老人医療費の膨張を総枠で抑制する「総額管理制度」を挿入、超過分は医療機関で負担する措置を講じたが、診療報酬や薬価の引き下げは避けられない。

 医療機関は猛反発

 財務省は、医療費全体の伸び率を国民所得の伸び率程度に抑えるべきだとし、医療費の伸び率が国民所得の伸びに比例した目標値を上回る場合は、翌年度の診療報酬単価を切り下げるよう主張。薬剤費なども低価格の製品に薬価を合わせるなど厳しく制限するよう求めている。これに対し、日本医師会などは、医療費の目標総額を超えた分を医療機関側が負担するのに加え、診療報酬のマイナス改定が実施されれば、収入減につながると猛反発している。一方、国民の大幅負担増には自民、公明両与党内からも異論が出されている。

 抜本改革先送り

 とくに自民党の厚相経験者からは「厚労省の試案は数字をいじっているだけで、制度を何も変えてはいない」と抜本改革でないことに不満が示されている。坂口力厚労相自身が、「組合健保、政管健保、国保の医療保険を将来的には一本化し、年金、医療、介護、雇用の各保険料の徴収を一元化して事務の効率化を図る」という医療制度の抜本改革論者であり、試案策定の過程では保険財政の改善だけにこだわる役所との関係がぎくしゃくした。

 法案作成の一翼担う

 厚労省の事務方のように、まずは医療保険財政の破綻を食い止める財政対策に専念して抜本対策を先送りするか。財務省のように医療機関のコスト抑制で財政支出を防ぐのか。医療制度改革の論議は始まったばかりだ。政府は日本医師会や医療保険の運営団体、労組代表などを交えた議論を経て年内に最終案を決定するが、国民の健康と豊かな生活を守る医療保険制度は、絶対に崩壊させてはならない。私は以上の点を十分精査したうえ、大いに発言し、積極的に法案作成の一翼を担いたいと考えている。