第196回(6月1日)北村防衛副大臣答弁書(3)グアム移転協定
「沖縄駐留米海兵隊のグアム移転に関する協定」批准案は5月13日の参院本会議で野党の多数により否決されたが、4月14日の衆院本会議で与党が可決していたため、憲法で定めた「衆院で可決した予算と条約は参院で否決されても30日後に自然成立する」との衆院優先規定により承認された。衆院外務委員会(河野太郎委員長)は1カ月前の4月10日、麻生首相、中曽根弘文外相と私(北村防衛副大臣)の出席を求め、総括質疑を行ったうえ批准案を可決していた。同日は民主党の篠原孝、鉢呂吉雄、武正公一、社民党の辻元清美の4氏が質問したが、同8日の質疑(4月16日のHPに掲載済み)の繰り返しで、新味はなかった。米海兵隊移転費用の積算根拠について、首相は「下から積み上げたというより、これ以上払わないという上限を決め、33ドルぐらいから交渉をスタートして28ドルまで下げた」と説明、細かい答弁は「副大臣に聞いてくれ」と私に任せた。

篠原孝委員(民主) 8日の自民党委員の質問に西原正参考人(平和安全保障研理事長・元防衛大校長)は「米海兵隊8千人がグアムに移っても韓国の軍隊の能力アップ、北朝鮮の軍事的レベルダウンなどで、日本の抑止力が落ちる心配はない」と答えていた。しかし、相当の金をつぎ込んではいるが、肝心の我が国自衛隊の戦力はアップしているのか。

北村防衛副大臣 西原参考人の質疑では、朝鮮半島の緊張は以前より低くなった、韓国軍隊の力が伸びた、米海兵隊が大規模に出ていく必要性は下がった、との認識が示されたうえで、米国はグアムに海兵隊を増強することで、より自由かつ柔軟な形でアジア地域に海兵隊を送りことが出来るという見解が示された。今後、第3海兵機動展開部隊司令部等がグアムへ移転し、残りの部隊は再編され、引き続き沖縄にとどまるということだが、地理上の利点がある沖縄に、海兵隊の初動対処能力が維持されることは、抑止力の観点から非常に重要であると考える。もとより、我が国の安全保障確保には、引き続き防衛力を適切に整備するとともに、日米安保条約を堅持し、米軍の抑止力を維持することが必要である。防衛計画大綱のもと、中期防衛力整備計画に基づいて多機能で弾力的な実効性のある防衛力の着実な整備に努めて参ったし、今後もそうして参りたいと考えている。

篠原委員 日本の戦力はアップしたのかどうか。海兵隊8千人が出ていって大丈夫なのか。

北村副大臣 重ねての答えで恐縮だが、安保条約堅持による米軍の抑止力維持と、中期防衛力整備計画等々に基づき、多機能、弾力的な実効性ある防衛力の整備を続ける考え方だ。

篠原委員 緊密な同盟関係はいいが、「いつの日か、日本は万全な体制が出来たからそんなに米軍に駐留して貰わなくていい」という時代がきて欲しいと私は思う。食料の100%自給は無理だが、なるべく国内で出来るものは出来るようにというのは、エネルギーの安全保障だって、防衛力だって同じだ。米国の有識者でも「日本が軍事大国化しないために沢山の米軍基地を置いておくんだ」と平然と述べている。これでいいか。もちろん、核まで持つことはしなくていいが、米国に代替できる通常兵力の部分は代替すべきではないか。

北村副大臣 私個人としては一部同感な部分はある。ただ、申し上げている通り、防衛計画大綱とか中期防衛力整備計画に基づき、これまで営々と着実な整備をいたして参った。その一方で、地理上の利点を有する沖縄に、海兵隊による一定の初動的な対処能力が維持されることは、抑止力維持の観点からも非常に大事である。沖縄海兵隊の位置づけも、抑止力の役割り等を踏んまえて、我が国の安全確保の観点から捉えるべきであり、一面的に我が国防衛力との関係で決定づけるものではないと考える。

篠原委員 米国は勝手だ。国際的貢献はどんどんしろと言ってくる。政治的に受け入れやすいもの、PKOとか人道的支援だとかで塗り固めて協力してくれと言ってくる。最後は軍事力でも協力しろとの態度をちらつかせながら、本当はあまり日本が軍事力で強大になってはほしくないのが本音。その一方で、抑止力では米軍に頼っているのだから、色々なことで米軍に対し資金を提供して当然と言ってくる。だから(日本は)グアムへの移転経費も出していいという卑屈な態度までとらざるを得なくなっている。こんな負い目を感じる必要は絶対ない。日本がやれることはやるのだから出ていってくれと言っていいはずだ。

北村副大臣 日米安保体制が基盤の日米同盟を新たな安全保障環境に適応させながら、我が国の平和と安全を確保するため、在日米軍の兵力態勢の再編に取り組んでいるところだ。在日米軍の再編に係る協議において、我が国の方から抑止力を維持しながら、特に沖縄の負担を軽減することの重要性を強調してきた。政府は沖縄住民が強く希望している在沖海兵隊の移転の速やかな実現が可能となるよう、米国とともにグアムの施設及びインフラ整備のための負担を担うということで、現在の考え方を進めている。昭和32年5月の閣議決定に明記されている通り、「直接、間接の侵略を未然に防止し、万一侵略が行われるときはこれを排除し、もって民主主義を基調とする我が国の独立と平和を守ることにある」――。この国防政策の基本方針が卑屈であるという風には考えていない。

篠原委員 グアムはベトナム戦争の頃は重要な基地だったが、今は寂れている。中国軍が軍事費を相当増強して東シナ海、西太平洋に出てきて、グアムは大事になってきた。官僚の“渡り”ではないが、米国は“渡りに船”で日本のカネでグアムの基地を立派にしてしまおうと思っている。沖縄の基地を見てきたが、宜野湾市なんかではうるさくて生活できない。離着陸、タッチ・アンド・ゴーを1日に3百回、夜11時までというのは尋常じゃない。沖縄県民にこんなひどいことをさせているのだから、日本政府が沖縄の皆さんにお金を出すのは当然だと思う。防衛省の大きな仕事として、どの程度認識しているのか。

北村副大臣 沖縄県には全国の約74%の在日米軍施設・区域が集中している。その負担軽減は重要な課題だ。環境整備法等に基づき、各種の補助等を実施するとともに、再編特措法に基づき、米軍再編実施に伴い負担が増加する市町村に、新たな再編交付金を交付している。沖縄の均衡ある発展のために米軍跡地の有効利用、適切な活用を促進すべく、特定跡地給付金等の支給とともに、北部振興策に係る補助金の交付も行っている。そのほか、米軍基地の所在による閉塞感の緩和のために、いわゆる沖縄懇談会事業に係る補助金の交付も行っている。今後とも沖縄県民の負担軽減に努力して参りたい。


鉢呂吉雄委員(同党) 今配布された資料の抜粋では、2年前の駐留軍再編特別法の施行令第11条は住宅の賃貸、電源の開発、電気の供給、水源の開発、水の供給、下水の排除及び処理といった事業は融資という言い方であり、基地内、基地外という書き方は一切ない。この施行令に基づいても、どうして、基地内だからこれは真水の事業であると、とらえることが出来るのか。

北村副大臣 先日も答えたと思うが、平成21年度予算で、在沖米海兵隊のグアム移転関係経費として、真水事業分約346億円を計上している。この真水事業経費には、鉢呂委員はインフラと呼ばれているが、政府として基幹ユーティリティーと呼んでいる電線、上下水道管等を埋設する事業を含んでいる。まず、21年度予算の真水事業として行う基幹ユーティリティーの整備、これは、例えば基地の中にある地区で海兵隊の司令部庁舎などを維持運営させていくため、その地区の近くまで供給された電力や水等をその地区に引き込み、庁舎などに配分していくための電線や上下水道菅を埋設する事業のことを言う。一方、従来から民活事業として整理をするインフラ事業、これは、沖縄から移転する海兵隊により増大する電力、上下水道または廃棄物の需要等を満たすために、電源や水源を開発して、電力や水を米軍基地に供給するための事業を指す。具体的には、再編特措法施行令、鉢呂委員が先ほど述べた施行令に限定的に列挙しているところだ。

鉢呂委員 説明がなっていない。3年前のロードマップ(工程表)の段階で、生活関連だけが真水であり、インフラ整備は融資と明瞭に書いてある。前回の資料で基幹ユーティリティー、基幹整備の6・5ヘクタールに143億円かけるわけだ。上下水道、電線も地中配線だと聞いている。しかし、このように千平方メートル当たり約2億円の事業費というインフラ整備は莫大だ。ここには司令部庁舎が建つと言われているが、いわゆる生活関連の形からいけば膨大だ。アプラ港には原子力空母が着岸できるが、こういったものに電気や上下水道を使うものとして整備されるのではないか。同港には真水事業として施設の形で何割程度使われるのか。

北村副大臣 グアム島で唯一港湾施設を持つアプラ地区において、専ら海兵隊が利用する地区を対象に基盤整備事業を行うこととして、平成21年度の予算に所要の経費を計上している。この地区は海兵隊港湾運用指令部庁舎を建設する予定。加えて、今後沖縄から移転する海兵隊が人員、物資の輸送や揚陸等を行うための港湾運用機能が置かれるという予定だ。従って、この地区の基盤整備事業は専ら沖縄から移転する海兵隊の所用に対応するもの。我が国の負担は移転事業を最も効率的、かつ速やかに実施する観点から、基盤整備事業を工事の最初の行程として大規模、一体的に実施すると考えているから、アプラ地区で我が国が負担する基盤整備事業は、司令部庁舎を前提とし、海兵隊の所用に対応するものでなければならないし、当然、日本側の負担は28億ドルの範囲内である。問題はない。なお、同地区の岸壁は米空母の接岸は出来ず、専ら海兵隊が利用する強襲揚陸艦等の艦船が利用する予定だ。従って、我が国負担で整備する基幹ユーティリティーは、司令部庁舎に加え、強襲揚陸艦への給電や排水等にも活用されることも排除されないと考えている。

鉢呂委員 昨年4月、JGPO(米軍グアム統合計画室)統合軍事マスタープランの草案が発表された。このアプラ港には佐世保港の強襲揚陸艦が寄港するが米海軍は草案に空母桟橋の建設ということが明確に書いてある。そういう形でアプラ港に140数億円をかけるわけだから実際グアム移転の海兵隊のみのものとしてあるのかどうか。米国の軍事的なもの、例えばアプラ港の燃料貯蔵施設、資材の保管施設、資材の運搬施設といったものに当然電気が使われる。揚陸艦寄港の場合に下水処理を行う。こういった電気、上下水道の施設に使われる真水事業は莫大なものだ。どのくらいの割合で日本の税金が使われるのか。

北村副大臣 アプラ地区で我が国が負担する基盤整備事業は、海兵隊が専ら利用する地区において、主として老朽化した既存の電線、上下水道管等の改修、これに関連して敷地造成を行うもの。この地区の他の基幹整備は米側が行う予定だ。なお、アプラ地区で今後、海兵隊の港湾運用部隊司令部庁舎や、海兵隊が活用する強襲揚陸支援機能の整備が行われる予定だが、日本側が負担する基盤整備は、海軍の活用も排除されないけれども、海兵隊の所用に基づき整備されるものである。


武正公一委員(同党) 総理が外相当時、いわゆる2プラス2合意の前文には、総額102・7億ドル、日本側の負担は40だ、50だと色々あって結局、総額60・9億ドルに落ち着いたと言われている。今回、真水部分の28億ドルが協定に盛り込まれていると言われるが、家族住宅や独身下士官用隊舎(BEQ)の戸数、出資、融資などの関係で積算根拠が何かと聞いても外相当時から答えがない。情報開示がないと国会審議が深まらない。

麻生太郎首相 隊舎の数を聞かれても答えが出来る範疇の話とは思わない。(北村)副大臣に聞いて頂いた方が詳しい。これ以上払わないと言う上限を、確かあの時(2プラス2で)決めた。最初は33ぐらいからスタートしたと記憶するが、最終的に28になったと記憶するので、下から積み上げてきたというより上限をこれ以上払わないとした――のがあの時の交渉内容だったと記憶している。隊舎の数は(北村)副大臣に聞いて下さい。

北村副大臣 在沖海兵隊のグアム移転に伴う施設、インフラの整備費は102・7億ドルとされ、このうち、我が国は28億ドルを上限に真水負担を行うとして、日米間で合意をしたものだ。28億ドルの内訳は、ロードマップ合意の時点で、海兵隊移転に必要な司令部庁舎、教場、隊舎及び学校等生活関連施設の整備所要に着目し、米側が見積もったものだ。これを受けて、本協定ではロードマップ合意の重要性及び我が国負担の上限の担保との観点から、合意の考え方に従って28億ドルを限度とする旨を明記した。防衛省としては個々の事業内容や積算について主体的に精査し、予算に計上の経費は各年度ごとに国会で審議を受けることは当然だ。予算化に際しては、最も効率的に各年度ごとに精査する。

武正委員 全然答えていない。隊舎の数をなぜ隠すのか。オバマ米大統領の施政方針演説に陸軍は6万5千人、海兵は2万7千人増員するとある。折角沖縄の定員が8千人減っても増えた2万7千人から一部を沖縄にということになりかねない。軽減は絵に描いた餅だ。

辻元清美委員(社民党) 隊舎と家族住宅合わせ8千人分をグアムに作るの理解でいいか。

北村副大臣 米国が当時見積もった独身下士官隊舎の棟数といったような情報が含まれているから、公開しにくい部分があるという風に申し上げた。

辻元委員 そうすると何の金を出すのか。普通で考えたら、家族住宅は家族持ち、独身が隊舎に住むとすれば、両方合わせて8千人分、日本から帰って頂くから金を出すという趣旨じゃないのか。そうなら総理、28億ドル、さらに真水以外の部分も合わせて60億ドル以上ですよ。そうすると、実数で沖縄から2千人しか帰らないなら、あと6千軒というか6千部屋を米本土から来た海兵隊員が自由に使えるわけか。どうなるのですか。
武正委員 普天間基地の移設は2014年までのリミットと承知しているが、財務省によると、この住宅事業について、日本政策金融公庫の出資に伴う予算措置はまだ提案されず、09年度予算にも計上されていない。果たして住宅は2014年までに完成できるのか。

北村副大臣 大変厳しく難しいとは思うが、それを目指ししっかりやっていく。

武正委員 後6年で3500戸を建設するのが厳しく難しい、と認識されているのか。

北村副大臣 家族住宅の建設から維持管理、あるいは軍人住宅民営化の事例といったものを取り上げる時、また、家賃収入がベースの事業であることや、一般的にリスクは低いと考えられるがハイリターンであるわけでもない。しかも、事業期間は50年という長期になると考えているから、極めて慎重に適時適切な配慮を加えながら進めようと考えている。

武正委員 防衛省は厳しい事業と認識するが、財務省は家族住宅の説明を受けていない。3年前、自衛隊の隊舎3億ドルが米軍再編の費用に含まれているとの報道があったが、自衛隊がこれから多くグアムで訓練することを考え、海兵隊員以外、自衛隊員もこうした(隊舎に)寝泊まりをすると想定した。だから隊舎の数を明らかに出来ないのではないか。

北村副大臣 その点はない。先ほど、厳しい状況と申し上げたが、厳しいのは我が国の財政事情を考えた時、大変貴重な税金であるから、これの運用、使用については厳しく精査し、米側とのやり取りをしっかりやって行かねばならないということを含めたものである。