第191回(3月16日)海賊対策法案を決定 武器使用で国会論戦
 政府は13日の閣議で「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法案」を決定するとともに、自衛隊法に基づく海上警備行動を発令して、14日に海上自衛隊の護衛官2隻をソマリア海に派遣した。同法案は海賊行為について、船の乗組員が私的目的で行う①船の強取(乗っ取り)や運航支配②財物強取③人質目的の略取――など7類型を提示。海賊行為をした者は無期または5年以上の懲役、人を死亡させた時は死刑か無期懲役とした。また、武器使用権限では正当防衛や緊急避難に当たらない段階でも、海賊船が停戦命令に応じない場合は停戦させるための船体射撃を可能とした。後半国会の衆院安全保障委では、同法案の審議と在沖縄海兵隊のグアム移転日米協定の承認案が焦点となるが、野党は武器使用の拡大などで同法案に反対し、グアム移転も経費負担を問題視して協定には反対の態度であり、審議は難航しよう。それに小沢一郎民主党代表の「米国の極東でのプレゼンスは第7艦隊で十分」の発言もあって、与野党間で安保論争は高まりそうだ。私も副大臣として答弁に立つ機会が増えることから、十分に対応出来るよう勉強しているところだ。

停戦目的で船体射撃認める
 海賊対策法案は、平和国家路線の公明党が慎重な姿勢であるため、与党海賊対策プロジェクトチーム(座長=中谷元・元防衛庁長官、佐藤茂樹・公明党安全保障部会長)を設置し、政府(防衛省)と入念に調整してまとめ上げた。法案は国連海洋法の「全ての国が最大限に可能な範囲で公海などにおける海賊行為の抑止に協力する」との条約に基づき、国内法で初めて海賊行為の処罰規定を設けた。また、海賊対策は一義的に海上保安庁の任務とし、海保では対応できない「特別の必要」があれば、防衛相が首相の承認を得て自衛隊を派遣することが出来るとした。その際、自衛隊の活動海域や期間、部隊の規模などを定めた「対処要項」首相に提出する。国会の関与は、首相が自衛隊派遣を承認後、「遅滞なく国会に報告しなければならない」としている。武器使用基準は原則的に正当防衛などに限定した警察官職務執行法7条を準用するが、商船などに接近、つきまとい、進行を妨害する船舶が自衛隊の阻止に従わない場合は、停戦させるための射撃を認めた。

野党は日米協定承認にも反対
 これまでは、国連の平和維持活動やイラクでの活動でも、憲法が禁じる武力行使に当たらないよう、武器使用については正当防衛と緊急避難に限って必要最小限に認めるなど、極めて抑制的な基準が設けられてきた。それでは、海賊船が警告射撃や威嚇射撃を無視した時に対応できない恐れがあるため、海保の巡視船が領海で船体に向けて射撃が出来る現行法の規定を援用し、公海上でも船体射撃を認めることにしたわけだ。しかし、野党は自衛隊海外派遣の際の武器使用基準拡大に布石を打つ狙いがあると警戒している。また、文民統制強化の立場から、「国会への事後報告」には強く反対する構えだ。民主党は在沖縄海兵隊グアム移転の日米協定についても、同党が昨年まとめた「沖縄ビジョン2008」で普天間飛行場の県外または国外への移設を目指す方針を明記したことから、在日米軍再編計画や日本側の経費負担を問題視し、反対する態度だ。

小沢氏の第7艦隊発言が波紋
 それに加えて、小沢代表が2月24日、奈良県香芝市で記者団に、在日米軍再編に関し、「軍事戦略的に言うと、米海軍第7艦隊がいるから、それで米国の極東におけるプレゼンス(存在)は十分だ。あとは、日本が極東での役割をしっかりと担うことで話がつく」と述べたことが、大きな波紋を描いた。小沢氏はさらに、「米国の言うとおりに唯々諾々として従うのではなく、私たちも世界戦略を持ち、少なくとも日本に関係する事柄については日本自身が役割を分担すべきだ。そうなれば米国の役割は減る」と強調した。これは日本が一定の役割を担えば米陸空軍や海兵隊の必要性が薄れるとして、米軍基地の削減を目指す考えを示したものと見られる。だが、共産、社民党は「日本の軍備拡充を目指すもの」と猛反発している。自民党も「日本の防衛の根幹を否定するものだ。こんな勝手な人が首相になったら、日米の信頼関係はなくなる」(菅義偉選対副委員長)、「世界やアジアを見た発言でなく、政権担当能力に欠ける」(大島理森国対委員長)と批判した。

民主政権なら日米同盟にひび
 民主党の山岡賢次国対委員長はNHK番組で、「小沢氏とクリントン米国務長官の先の会談で『戦後は大きく変わったので、何をなすべきか検討し、両国納得の上で日本がやるべきことは責任を果たしていく』という話があった。その一例としてそういう(第7艦隊で十分との)姿もあるかもしれないということだ」と釈明したうえ、「民主党の結論のごとく論じられているが、これからの話だ」と深入りを避けた。弁明が何であれ、小沢氏発言だと民主党が政権を取れば、日米同盟にひびが入ることは間違いなく、衆院安保委では久々に与野党の論客が入り乱れて、本格的な安全保障論議を展開することになりそうだ。

新法案の骨子は次の通り。
 【目的】我が国が海賊行為に適切かつ効果的に対処するために必要な事項を定め、海上における公共の安全と秩序の維持を図る。【海賊行為の定義】私的目的で公海などで船舶に乗り組み①船舶を強取または運航を支配②船舶内の財物の強取③船舶内の人の略取④人質を取って財物などを要求――すること。また、①~④の目的のために⑤船舶に侵入・損壊⑥船舶に著しく接近⑦凶器を準備して航行すること。【海賊罪】①~④は無期か5年以上の懲役。負傷させれば無期か6年以上の懲役、死亡させれば死刑か無期懲役。⑤,⑥は5年以下の懲役。⑦は3年以下の懲役。【武器使用権限】警察官職務執行法を準用するほか、制止に従わない場合は、船舶の進行を停止させるために武器を使用できる。【海賊対処行動】防衛相は海賊対処要項を作成し、首相の承認を得て、自衛隊に対処行動を命令できる。首相は承認時と対処行動が終了した場合に国会報告する。