第190回(3月1日)米海兵隊移転で調印 施設視察にグアム出張
クリントン米国務長官は就任後初の外遊先に日本を選び、16日から18日までの滞日期間中、麻生首相、中曽根弘文外相、浜田靖一防衛相らと会談した。日本人拉致被害者の家族とも面会し北朝鮮核問題にも踏み込むなど「アジア外交の礎石」(同長官)を打った。一連の会談では日米同盟の重視を再確認し、24日の日米首脳会談開催を発表した。17日に外務省の飯倉公館で開いた日米外相会談では米海兵隊のグアム移転を巡る協定に正式調印、私も防衛副大臣として調印式に陪席した。政府は09年度予算案に、グアム移転関連の日本側の経費負担として346億円を計上している。私は会談に先立つ13―15の3日間、グアムに出張し、カマチョ・グアム準州知事を表敬訪問、「グアムの経済基盤発展には両国政府の協力が一層必要である」との認識で一致。ライス在日米軍司令官、フィリップ・M・ルールマン空軍准将、ウイリアム・D・フレンチ海軍准将らから、今後のグアム米軍基地整備について説明を受け、アンダーセン空軍基地やグアム米軍基地やアプラ港などを視察した。

海兵隊は米4軍の1つで強力
米海兵隊は主に上陸作戦や特殊作戦を担当する部隊で、陸・海・空軍と並び4軍の1つに位置づけられるほどの精鋭で強力な軍隊。太平洋のハワイ、沖縄、インド洋の英領・小島ディェゴガルシアが3大拠点基地で、移転後はグアムが拠点となる。沖縄に駐留する米軍人約2万3千人のうち約1万3千人を占めている。2006年5月の在日米軍再編を巡る日米合意で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の同県名護市移設を条件に、14年までに沖縄に駐留する海兵隊員のうち、8千人とその家族9千人のグアム移転が盛り込まれている。その際、司令部庁舎や隊員の隊舎などの整備費について、日本側は28億ドル(約2500億円)を上限に財政支出することに合意している。これをもとに、日本側の09年度経費負担346億円のうち、28億円はアンダーセン空軍基地のヘリ運用管制部隊の庁舎など海兵隊の施設群の建設予定地一帯を整備する土地造成・上下水道管埋設の基盤整備に充てられる。174億円は海軍基地内のアプラ港に沖縄から移転する海兵隊の港湾運用部隊司令部庁舎を建設するための基盤整備事業費だ。政府は24日、海兵隊グアム移転日米協定の承認案を国会に提出したが、その中では「米軍普天間飛行場の沖縄県内移設と一体で進める」ことも確認された。

グアム経済支える日本観光客
グアム出張の14日、アデラップの知事執務室に表敬訪問した際、カマチョ知事は「米合衆国の最西端の一部、アジア全体への玄関として、グアムは極めて戦略的な役割を果たしており、軍との関係は強固である。在沖海兵隊の移転はグアムの雇用や生活の質を向上させる機会となる」と歓迎の意向を表明した。私からは「海兵隊の移転は日米両国の友好的話し合いで合意された。島民の生活発展に対する思いを私は知事と共有している。島固有の問題は日本の離島もグアムと同じだ」と述べ、島民の生活と経済基盤の発展には「様々な問題を解決するため、政府・行政の協力が必要である」との認識で知事と一致した。グアム経済の7割は観光収入で賄われているが、知事からは「グアムは太平洋の島として長い歴史を持ち、日本人観光客はグアム経済の支えである」として、日本人のグアム観光がさらに活発化し恒久的になるよう期待が表明された。この後、アンダーセン米空軍基地を視察、第36航空団司令官のルールマン空軍准将から米軍におけるグアムの位置づけなどの説明を受けた。また、航空自衛隊第8航空団の益子1佐からも訓練状況の報告を受けた。

新海上戦略の概況説明を聞く
アンダーセン空軍基地について、ルールマン准将は①第36航空団の4機能(部隊受入、部隊運用、部隊展開、処理能力)を持つ②50年に及ぶ影響を見通した決定によるトランスフォーメーション(再編)の最中にある③水と電力の供給は軍も民間も同じ水源・電源を使用しているが、グアムが島であることから廃棄物処理が大きな問題である――などと説明した。昼食後はF22戦闘機を見学、海兵隊移転施設の建設候補地であるフィネガヤン南部と北部、アンダーセン南部、バリガダ地区を視察した。翌15日はマリアナ地域海軍司令官のフレンチ海軍准将から「新海上戦略」の概況説明を受けた。この戦略は海上能力を前方プレゼンス(展開)、抑止、制海権及びパワー・プロジェクション(戦力投射能力)という伝統的な中核的役割を超え、海上の安全、人道支援、災害対処にまで拡大して考えるもの。海軍、海兵隊、沿岸警備隊を統合する初の海上戦略だ。フレンチ准将によると、グアムでの国防省施設が占める割合は約30%を占め、グアムは軍の福利厚生を扱う「スーパーマーケット」(兵たん拠点)みたいなものだという。

労働力、インフラ整備が課題
統合グアム計画室(JGPO)のジャック・ジャクソン事務所長は、グアム基地再編概況について「今後の再編事業実施では、労働力の確保やインフラ整備などが課題。2010会計年度はグアム基地再編にかかる建設開始など鍵となる年だ」と語ったが、私からは「資材や機械を運び込むため港湾の機能強化が必要だが、日本的考えで言うと、その整備を実行する際には、完了後も如何にそれが活用されるのか検討しておくことが大切である」と指摘しておいた。この後、グアム海軍基地司令のスコット・ガルブレイス海軍大佐の案内でアプラ米海軍基地施設を視察、ジャクソン事務所長と共にヘリで上空から移転関連施設を視察して回った。また、南太平洋戦没者慰霊公苑に立ち寄り、マリアナ・サイパンの海戦で散った英霊に献花した。第2次世界大戦で日米が最も激しく戦った南太平洋。その日米が今、固い同盟関係を結び世界平和に貢献している。クリントン国務長官は初外遊の第一歩に来日したが、オバマ大統領も世界首脳の中で真っ先に麻生首相を米国に招く熱の入れようだ。

普天間飛行場移設の早期決着を
米海兵隊のグアム移転は普天間飛行場の名護市移設が条件だが、橋本龍太郎政権時に合意しながら10年間も沖縄の地元調整が難航している。政府与党は日米外相が署名した「在沖縄海兵隊のグアム移転協定」の批准承認案を今国会に提出、3月中に審議入りする見通しだが、民主党は、日本側の経費負担や在日米軍再編計画を問題視し、反対の構え。しかし、協定や条約は憲法の規定で衆院の議決が優先し、衆院が承認すれば30日で自然成立する。海兵隊のグアム移転は沖縄県民の負担軽減の道でもある。グアム移転だけでなく、普天間飛行場の移設も日米合意通りに進めるという両政府の決意を条約に格上げしなければならない。野党や沖縄県は普天間代替施設の建設位置の変更や県外移転を求めているが、私は日米の信頼関係をより一層深めるためにも、地元の協力を得て一刻も早く結論を得るよう努力したいと考えている。